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4/03/2012

“スタンダールとフランス文学”(文学案内)


This is introduction to students to show how French author Stendhal was great.
Later I learned that to Niezsche "Red & Black" was one of the 3 most influential, impressive books in his life.

S. Murata 04/03/2012

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“スタンダールとフランス文学”(文学案内)

どこの国にも、その国の文化を代表させうる文学者というものが存在する。たとえば、ドイツでは言うまでもなくゲーテであり、イギリスではシェークスピア、イタリアはダンテ、スペインはセルバンテス、そしてロシアはトルストイとドストィエフスキーといった具合である。では、フランスはどうか。


私は、フランスほど、一人でフランス文学を代表させうる人物を見つけることが難しい国はないと思っていた。すぐれた文学が数多くあるにもかかわらず、ゲーテやシェイクスピアと肩を並べる人物ということになると、なんとなく見つけられないのだ。一時はバルザックかしらと思ったりしたが、今になって、私は、それが誰かということがわかった。社会思想的にはルソーに違いないが、文学ではスタンダールこそ、最良のフランス文学を代表させうる人物であると思う。


二十五年前、はじめて“赤と黒”を読んだときの、驚きを忘れることが出来ない。約百五十年も前に書かれたにも拘らず、最近書かれた心理小説のような新鮮さと鋭さと見事な文体は、全く、スタンダールという天才のすごさを、まざまざと感じさせたものであった。


スタンダール自身、自分の本が理解されるようになるのに、五十年はかかるであろうと言っており、生前はほとんど大衆的に読まれることがなかったという。こんなに面白い本にはめったにお目にかかれないと思えるような“赤と黒”だが、百五十年後に読んでも、何の違和感も陳腐さも感じさせないところに、この名作が五十年ないし、百年、時代を先取りしていたという天才性があらわれている。


スタンダールはナポレオンを崇拝し、ワーテルローの戦いにも参加した。その体験は、名作“パルムの僧院”に生かされ、その戦場描写は、バルザックをしてうらやましがらせ、誰からも誉められたことのなかったスタンダールを感激させる賞賛の辞を書かせる事になった。


ナポレオンの文学的天才を認め、パスカルとくらべた話は有名である。スタンダールはモーツアルトの“孤独”の発見者でもあった。


フランス人特有の、人間に対する深い洞察力が、単なる小説においてだけでなく、様々な領域においても発揮されたわけである。


バルザックが十九世紀の世相を写実的に生き生きと描き出して偉大であるにもかかわらず、私が本当に好きになった本は“谷間の百合”だけであったのとくらべると、スタンダールの持つ特別な資質が、私には明らかになる。スタンダールの代表するフランスは、文学というものが持つ魅力と良さをすべて持っており、他の作家ではフランスを代表させられない。


今にして、私はスタンダールを発見し、彼のすべてを読みたいと思う。


(記                     1986年3月20日)

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