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3/27/2012

“回想のオルガン山脈”New Mexico



“回想のオルガン山脈”New Mexico                                                    村田茂太郎

 エルパソのフランクリン山脈はニューメキシコ州では、低くなり、消えてしまうが、エルパソから40マイルほど北にのぼった同じ山並みに、一段と険しくそびえる山脈が目に入る。最高峰オルガン・ニードル(2740メートル)を主峰とするオルガン山脈(Organ Mountains)である。オルガン山脈は東と西で様相が異なり、Visitor Centerは西側に位置する。はるか遠くからでも、ぎざぎざに尖った山並みが明らかで、この先鋒をパイプオルガンに見立てたらしく、オルガン山脈という名前が生まれた。もともとは孤立した山という意味があてられていた。

 オルガン山脈はニューメキシコの三番目に大きな街ラス・クルーセス(Las Cruces)の東にそびえている。この山は立派な山で、コロラドやカリフォルニアの雄大な山並みを見てきた後でも、クルマでLas Crucesに近づくにつれて、そびえたつオルガン山脈がみえてくると、やっぱり、立派な山だなあと思うことになる。

 オルガン山脈は私がエルパソ滞在中に、特に親しんだ三つの山のひとつである。ほかの山は、テキサスのフランクリン山脈とグアダルーペ山脈。ある時期は一年分の会費を支払って、7-8回訪れたりした。この山も私が何十回となく訪れた山で、それなりに、エルパソから近く、しかもエルパソの山とは違った趣があり、登山の楽しみを充分に味わわせてくれる山であった。ともかく、1時間前後(東か西かの違い)で、すばらしいハイキング気分が味わえる手ごろな山であった。

 私は様々な時期に、この山を訪れ、いつも満足して帰途に着いたのであった。あるときはハイキング ルートは花盛りであったし、あるじきはGamble’s Oakなどが黄葉するのを味わいに出かけた。また、あるとき、急に雪が積もったので、これ幸いと丁度、土日にあたっていたので、ひとりでオルガン山脈に出かけ、西側のDripping Springs Trail を歩いたりした。このルートは丁度往復3マイルほどで、ラクで手ごろなハイクであったので、雪があるのを楽しみに、危険も感じないで近づき、予想通り、かなり雪が積もって、雪の上を歩く形で目的地である、元サナトリウムがあった地点へたどり着いた。それは、すばらしい体験であった。エルパソから50分ほどの距離のところに、サボテンだけでなく各種の樹木と岸壁がそびえる、外界とは隔絶した世界にアクセスできるということは、限りない喜びであった。

 今、オルガン山脈の写真集がWebサイトに出ているのを見て、雪のオルガン山脈の、これは東側の写真であるのを知り、今では遅いことだが、なぜ、東側の雪景色も探訪しようとしなかったのだろうと悔やまれる。それは見事な、魅力的な、プロらしい写真であった。

 この山も単体として、わりと簡単に探訪できる山であり、しかも、多様さをそなえていて、非常にPhotogenicな、写真写りのよい山岳風景なので、私も工夫すれば、いい写真が撮れたかもと、今になって残念な気がする。

 わたしが主に歩いたのは西側のDripping Springs とその周辺、La Cueva Trail、そして東側の Pine Tree TrailBaylor Pass Trailであって、ほかにも行きかけたが、最後までは行かなかった。この山でテント・キャンプも二度ほどおこなった、当時はエルパソのフランクリン山脈はOvernightのキャンプはできなかったので、ここオルガン山脈が野外テントキャンプのできる最寄の場所であった。静かな山の中で、自然に親しめるよい場所であった。朝にはMule Deerを何頭か見かけたりして、まだ自然さが残っている事を語っていた。あるときはBlack Bear がでたという話も聞いたほどで、エルパソの山と違って、やはりある程度の高山になり、樹木が多くなると、野生動物も豊富になるのだと、うれしく思った。

 この山は鋭い先鋒が魅力となったのか、沢山の登山家が挑戦して落命したらしく、登山道の入り口に必ず、どこにでも警告が表示されていた。すなわち、“この山で沢山の犠牲者が出た。決して、能力以上のことをしてはいけない、また、眠っているガラガラ蛇の邪魔をしないで”というもので、さらに、“ひとりでは登山をするな”という警告ツキであった。Visitor Center で話したときも、ひとりでは山に登らないように、登るなら犬でもつれてゆけ、といわれた。岩から落ちて怪我または落命する危険性のほかに、いわゆる三毒(さそり、ガラガラヘビ、タランチュラ)への警告であった。ここは、エルパソ同様、さそりやガラガラヘビ、そしてタランチュラに出会える可能性が高いのである。

 そして、その通り、私はタランチュラとであって、うれしかった。せまいTrailでであったので、仕方なくジャンプしてタランチュラを飛び越えた。そうすると、なんとタランチュラもびっくりしたのか、ジャンプしたのである。もちろん、私に飛びつくようなジャンプでなく、私はかわいいと思ったのであったが。私は、こんな道路を歩いていると危ないよと語りかけ、タランチュラと別れた。

 Las Crucesから西側にアクセスするときも、あるいは、San Augustine Pass を超えて、Aguirre Springs のCamp Ground方面へ行くときも、時期によっては、Poppyなどの花盛りにでくわし、私はとてもうれしく思った。LA周辺のLancasterPoppy草原とは比べ物にならない、小規模なものであるが、野草の花盛りは、いつどこで見ても美しく、Poppyが山のふもと一面を覆ったりしている光景は、何度見ても感動的であった。それは、エルパソのフランクリン山脈でもそうであったし、ここオルガン山脈でも同様であった。

 San Agustine Pass は海抜約1800メートルの峠で、昔、西部劇で有名なBilly The Kid を撃ち殺した保安官 Pat Garret が元の部下にこの峠を駅馬車でこえるときに撃たれて結局それが原因で死んだといういわくツキの場所、それがこの峠であり、西部劇との因縁もあるところなのである。大体、ニューメキシコはBilly The Kid や アパッチの Geronimoが活躍した場所として有名で、Silver City やRuidoso, Capitanなどは、そうした歴史的な逸話が豊富なところである。Las CrucesからWhite Sands National Monument あるいは Organ Mountainsの東側にゆくために通過するSan Agustine Passもそうしたひとつであった。

 東側からオルガン山脈にアクセスするのもすばらしいドライブで、一本道をオルガンを目の前に見ながらドライブするのは、本当に気持ちのよい、楽しい体験で、私は必ず、何度も車を止めて、Rabbit EarPeakや Sugarloafの岩肌、あるいは、Yuccaの咲き乱れる原野を写真に撮ったものであった。

 オルガン山脈は火山が堆積岩を押し上げる形で出来たと思っていたが、それはフランクリン山脈のほうで、オルガンは主に火山活動で出来ている山ということである。南軍の大佐の名前をつけたMount Baylor などは、あきらかに火山の三角錐の形をしており、山肌が火山の跡を見せているので、はじめから明らかであるが、傾斜した山容を見せるオルガン・ニードルなどは堆積岩が火山活動で押し上げられたと私は思っていたが、まちがいであった。主に火成岩Igneous Rockでできており、Granite(花崗岩・御影石)とRhyoliteMainであるとのこと。Rhyolite(流紋岩)は珪素を沢山含んだ火成岩である。

 Las Crucesの街の背後にOrgan Mountainsが控えており、Interstate Highway の10番を西から、あるいは同じく Interstate Highwayの25番を北からLas Crucesに近づいてくるとOrgan Mountainsの鋭鋒に富んだ偉容が目に入る。いつ見ても、何度見ても、絵になる光景であり、立派なものである。すばらしいと思う。Las Crucesという街は、Organ Mountainsのおかげで、安定した様相を示していると思う。街は大学町であり、ホワイト・サンド・ミサイル・レンジのMilitary関係、そして農業がMainであり、付近にはRio Grandeの水を利用したPecan Tree栽培やCorn, Chili, Cotton、その他の農業や酪農でなりたっている。

 Organ Mountains も、また、Southwestに広がる空間の広大さを味わわせてくれる魅力的な場所であった。

() 2009年1月2日 執筆 村田茂太郎





























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