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2/24/2012

ロス・マクドナルド Lew Archer 以外の前期小説について

拙著「寺子屋的教育志向の中から」のなかで、”探偵小説の読み方” として、ロス・マクドナルドとエドガー・アラン・ポーを紹介しました。

マクドナルドに関しては、わたしは私立探偵リュー・アーチャを主人公とした小説だけをとりあげていました。実は、ほかの前期の小説を読むのがこわかったのです。こわいという意味は、Lew Archer小説にあまりに親しんだので、他のものを読むとガッカリするのではないかという不安があったわけです。

そこで、本として出す以上、他の作品も読んでおかないと片手落ちになると考え、去年、残りの前期4冊を順不同で読み始めました。

The Dark Tunnel. 1944
Trouble Follows Me. 1946
Blue City. 1947
The Three Roads. 1948

以上はすべて本名のKenneth Miller で発表されました。

ほかにもLew Archerが主人公でなく、弁護士やProbation Officer を主人公とした小説、Ferguson Affair (1960) やMeet Me at the Morgue (1953) もありましたが、それはLew Archer がでてからなので、みな読みましたが、上記4冊だけはなかなか読む気になりませんでした。私の本の出版が刺激になって、とうとう手をつけた次第です。

そして、わかったことは、すべて傑作であったということで、感心しました。大概の小説家は駄作もつくるものですが、ロス・マクドナルドの場合、全作品が傑作または大傑作であるという、まさに奇跡的な展開をしたといえます。

上記4冊の中で、わたしが特に気に入ったのは、Blue City ですが、ほかのもGood以上の出来栄えでした。

Ross MacDonald または本名 Kenneth Miller は大学でPh.D.をもつ文学博士にあたり、その研究論文はColeridgeであったといいます。これもわたしが疎遠な領域で、あまり興味はなかったのですが、最近、大江健三郎氏のさまざまな著作を読んでいて、イギリスのBlakeを特に好んで読まれ、このBlakeと関係が深かったのがColeridgeであったということなので、わたしもBlake, Coleridge を読まないといけないかなと思っているこのごろです。

Kenneth Miller はカナダ人Margaretと結婚し、Santa Barbaraに住まいました。
Margaret Miller も小説を書き、その作品はみな Mysteryの領域で傑作といえます。どれを読んでも終わりぐらいまでくると、唖然としてしまう展開なので、すごい才能だなあと感心しながら読んだものでした。英国人Julian Symons などは正当にMargaretの作品を評価していますが(Mortal Consequences)、おどろいたことに無視されたりしているケースの方が多いので、世の評判など信じられないほどです。

世にあるいわゆる探偵小説で二回以上読む気になった探偵小説はわたしにとってはロス・マクドナルドだけです。どれも最低二回読み、三回も四回も読んだ本がたくさんあります。小林秀雄を読むことが私にとって特別に楽しい出来事であったように、Ross MacDonaldを読むことも、私にとっては特別な楽しいひと時でした。何度読んでも飽きないといったところです。

以上。拙著のロス・マクドナルドの補説とします。

村田茂太郎
2012年2月24日

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