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1/28/2014

「心霊現象の科学」をめぐってーその72 「Ghost Hunters」Deborah Blumを読む


「心霊現象の科学」をめぐってーその72 「Ghost HuntersDeborah Blumを読む

 「Ghost Hunters」などと紛らわしい題名である。Horror Storiesか Haunted Mansionの探検者について書いてあるように思えるわけだが、事実はPulitzer賞をJournalismで受賞したことがあるUniversity of WisconsinScience JournalProfessorが書いた19世紀末から20世紀はじめにかけて、サイキック・サイエンスに関する研究をまじめに考えたひとたち、その中でも特にアメリカのWilliam Jamesをめぐる周辺の波乱に飛んだ活躍ぶりを記述した、小説よりも面白く、興奮して読み終わるような内容のものであった。したがって、副題は“William James and the Search for Scientific Proof of Life After Death”となっている。このPsychical Researchの研究グループが最初に発足したのはイギリスであったので、当然のことながら、その創立にかかわる中心人物の行動が興味深く、鮮やかに描き出されている。

 私のこの本の評価はGreat!といえるほどで、本当にあのPsychical Researchのグループができて、どうなっていくかが、要領よく、小説的な興味を誘いながら、見事に総括したような本であって、私ははじめてWilliam Jamesの偉大さがよく理解できたし、彼が“Principles of Psychology”を書くのに本当に苦労をしたのがよくわかった。当時の科学主義台頭の時代のなかで、Jamesたち、あるいはイギリスのSidgwick, Myers, Gourney, Hodgsonたちがいかに苦労して、サイキック・サイエンスを科学的に確立しようと努力したかがよくわかる本であった。

 これを読むと人間は、如何に、いわゆる偏見、固定観念から脱出するのがむつかしいかがよくわかる。えらいはずの科学者や哲学者・心理学者などが、直接調べもしないで頭から否定してかかるというありさまであったらしい。その中で、一人でも本物のサイキック(Lenora Piper)がおれば、まじめに研究しなければならないという態度を貫徹したWilliam Jamesの偉大さがきわだって立派だとわかる。

 元来、まじめな科学者というものは、いろいろな現象に興味を抱き、なぞを解明しようと試みるのが本当のあり方であるのに対し、たとえある領域で科学の博士号を獲得しても、あるいはノーベル科学賞を受賞しても、それ以外の領域で、すなおに現象を認めて、探求しようとしなければ、それは、その新しい領域に関しては科学者でもなんでもなく、ただの迷信深い素人に過ぎないといえる。それを、肩書きを武器にして、まじめな研究者を嘲笑するのは自分の無能さを暴露する以外の何者でもない。しかし、魂の不滅どころか、テレパシーの存在さえ嘲笑してしまう、いわゆる科学者がほとんどすべてであったので、そういう中で、不思議な現象をまじめにとりあげ、解明しようとするのは大変に勇気のいることであった。

 そういう意味では1930年代のJ.B.Rhineの統計的なテレパシー実験と、それによるテレパシー等、人間の持つ超能力の存在の確証は歴史的にも意味のあることであった。

 もちろん、1970年代になってもテレパシーなどはないと証明することに必死だった科学者もいるわけであるが、今では霊界との交信の証明のかわりに、Super ESPという超能力がなさしめたもので、あの世との交信、故人のSpiritとの交信の結果ではないという説明をして、納得したつもりでいる科学者もいるようだ。19世紀末の、テレパシーの存在を否定したころに比べれば、格段の進歩であるのは事実だが、いつも科学者は先端を行くのではなくて、あとを恐る恐るついてまわっているような印象を受ける。まさに天動説から地動説への転換は命がけの飛躍が必要であったということの証明といえるかもしれない。

 ともかく、これは(「Ghost Hunters」)非常に面白い本であった。わたしは Edmund Gourneyの「Phantasms of Living」やFrederick Myersの「Human Personality and Survival of the Bodily death」という本を自分の蔵書に保持しているが、これらの本が生まれてくるまでにどれほどの苦労があったか、出版されてからもどれだけ心細い状態であったのかをはじめて知った。

 これら創成期の巨人たちの裏話にあたる挿話も興味深く、あの誠実で用心深い19世紀末の知の巨人 William Jamesが血と肉を持った繊細な人間としてあらわれてくるのも、私にとってはじめての情報で、もっと彼やHenry Jamesその他のBiographyの勉強もしなければならないと強く感じた。わたしはいい本はすでにたくさん買い集めてあるのだが、なにしろ、興味を引く分野が膨大で、今まで読んでいる暇は無かったわけだ。これからは、もっと真剣に取り組まねばと思った。

 ともかく、Willaim Jamesが1910年に亡くなって、もう100年が過ぎた。 彼らは必死に死後の生存の証明をしようと努力したわけだが、あの時点では不可能であった。現在までのところ、Life After Deathの証明はすすんだはずだが、まだ科学的に証明されたというところまでは行かない。わたしは自分が納得できればいいという次元で充分だというのが今の私のStanceであり、それは霊魂不滅を認めるところまでは来ている。Reincarnationらしきものもあるということは事実だが、まだ勉強中である。Carol Bowmanなどを読むと、どう見てもReincarnationの実例のように思え、Jenny Cockellなどもそうかもしれないということになるが、まだ探求中というところである。

 

村田茂太郎 2014年1月28日

 

 

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