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10/14/2012

小学6年生―社会科 日本の歴史 のための拙文集(3)歴史と人物

小学6年生―社会科 日本の歴史 のための拙文集(3)歴史と人物


歴史と人物 -伝記・自伝・研究書を読もう

 

「歴史はそれぞれの時代の一人の天才や英雄の力でつくられたものではない、彼らはそういう風な時代の流れを代表しただけである」という風に考える人が居る。しかし、はたしてそうであろうか。アレキサンダー大王なくして、マケドニアの発展は考えられないし、ナポレオンの代わりを誰か他の人がやったとは考えられない。いい意味でも悪い意味でも、たとえばナポレオンという人間が世に言う“ナポレオン時代”をつくったのは明らかである。

 

アメリカの基本の政治形態としては、世界でも最も民主的な三権分立制をとっているが、このアメリカの基本性格を作ったのは、明らかに建国期独立戦争から大統領制へと移っていく中で登場した何人かの人物達であり、彼らがそれを支える人たちとの協力でなしとげたものであった。

 

どの国においても、動乱の時代には、それにふさわしい英雄・天才がたくさん登場する。アメリカ独立戦争から憲法制定へと動く中でも、たとえば、フランクリン、ワシントン、アダムズ、ジェファソン、マヂソン、ハミルトンといった超一流の人物が登場し、大活躍をした。独立戦争の英雄となったワシントンが、他の国ではナポレオンのように皇帝になるとか国王になるとか、第一の権力者になるとか、ともかく権力を握ることを第一とするのに、そうはしないで、おとなしく引退したというニュースをきいたイギリスの国王ジョージ三世は、当然権力を握れる立場に居て、そうしないで、あっさり投げ出してしまえるというようなエライ人物を歴史上、まだ見たことはない。ワシントンという男が、あっさりそういうことが出来るのなら、彼は今まで存在したどの英雄よりも偉大な人物だといった、といわれている。

 

ナポレオンと違って、ワシントンであったから、アメリカはデモクラシーの方向にまっすぐ進む事ができた。ジェファソンもマヂソンも、みな、立派なデモクラシー(民主制)の国を作ることを願い、努力したからである。

 

動乱の時代は、どこの国においても、英雄・天才がたくさん登場し、大活躍をする。したがって、他の時代に比べて、動乱の時代は読み物として特別に面白い。日本も、平和な時代と体制が大きく変わりかける動乱の時代をいくつかもった。

 

源平の時代、南北朝の時代、戦国時代そして幕末である。源平の時代は「平家物語」や「源平盛衰記」に、南北朝時代は「太平記」に描かれた。戦国時代は、それぞれのヒーローに対して、「信長公記」 とか「太閤記」とかといったものがあらわれた。(幕末に関しては、特に司馬遼太郎という作家が、すぐれた人物小説・歴史小説をあらわしている。)

 

歴史の勉強は、ただ事件が起きた年代や登場人物の名前を知るだけでは終わらない。いろいろな出来事が起きたとき、それはナゼ、どのようにして起きたのか、そして登場人物たちはどのように反応し、社会全体の動きはどのようになっていったのか、そうしたことが全体像として生き生きと感じられるようにならないと歴史が面白くなる筈がない。そのためには、歴史を代表する人物達の伝記を読み、ひとつの事件、ひとつの決断の背後に、どれだけの苦労や悲しみ、喜びがあり、それぞれが、いかに全力を尽くして向かっていったかということを知ることが大切である。

 

さいわい、“あさひ”の図書には、歴史関係の本がたくさんある。この1年の目標は、まず“興味”をもつ、“探求心”を伸ばすということである。それは、本当に面白い日本歴史の登場人物の伝記を読みすすめば、自然と芽生え出るはずである。しっかり頑張って、片っ端から読みすすめよう。

 

1994422日 執筆

 

村田茂太郎

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