“回想のホワイト・サンド国定公園”New Mexico
エルパソからホワイト・サンド(White Sands National Monument)へは、80マイルほどで、丁度、1時間半のドライブ、従って、エルパソに日本からの訪問者がくるときには、誰もが案内する地点となっていた。それゆえか、私は、あまりにも通俗的な気がしたせいか、Southwest案内の文章を沢山書いてきたが、一度も、ホワイト・サンドについて書いたことは無かった。とはいえ、こうしてエルパソを離れてみると、やはりホワイト・サンドは魅力ある場所であり、ユニークな、懐かしいところである。世界最大といわれるGypsum Sand Dunes であり、何度も訪れた私にも、やはり、もう一度、訪れたいと思わせる懐かしい公園である。
今になると、やはり泊まりのキャンプをしなかったことや、Lake Luceroという石膏Gypsum発生の源を見ておかなかったことが悔やまれる。そして、“月の砂漠”のイメージぴったりの“月夜のホワイト・サンド”も見ておかなかったことも。
私は雨上がりのホワイト・サンドを訪れて、ここにしかいないという“耳なしトカゲ”を見ることも出来たし、雨水がたまって、ちいさな池のようになったところで、その水にホワイト・サンドと雪山をうつした景色を嘆賞したこともあった。晩秋に訪れ、ホワイト・サンドに点在するCottonwoodが黄色く秋色を見せるのもながめ、また、付近にサボテンやYuccaが花をつけるのも味わった。いつ見ても、ユニークで別世界を感じさせるところであった。
コロラドのGreat Sand Dunes National Park を何度か訪問し、おかげで、ニューメキシコのWhite Sands National Monument のユニークさも了解した。コロラドのほうは最高200メートルを超えるという大きな砂丘を構成しているのに対し、ホワイト・サンドは、せいぜい7-8メートル以内の高さであることが分かり、ただ、本当に真っ白といえる白さで目立ち、中心部では全く、白一色の世界に居ることができ、比類ないムードを楽しむことができるとわかった。また、この白一色といえる世界であるにもかかわらず、植物や動物が白砂の進出と戦って、生き延びようと努力し、成功していることなどを知った。もちろん、それは外延部というか、根が底の土に達しうる部分または、砂にうずもれない限りということであるが。
Gypsum石膏は、水に溶ける物質であるので、ふだんは水中では固形では存在しにくいものであり、それが、このような広大で膨大なホワイト・サンドという形で残されてきたこと自体、めずらしく、National Parkのアイデアは19世紀末に芽生えたし、World Heritageのアイデアまで生まれているが、近くの ミサイル レンジとの関係もあり、軍事的に、制限される可能性をおそれて反対する人も多いとのことである。
付近の二つの湖、Lake Otero と Lake Lucero がこのWhite Sands の蓄積に貢献したという。San Andres MountainsにふくまれたGypsumが雨に溶けて流れ、湖にたまり、Tularosa Basinは盆地で水のはけ口がなく、蒸発で、湖にたまったGypsum Sand が、今度は風で運ばれて、現在の White Sands National Monument に蓄積・形成されてきたというのが、その成因といわれている。Sand Dunesの形成には、風の働きが不可欠で、ただ持ち運ぶだけでなく、分解作用におおきなはたら気を示している。
ホワイト・サンドは、まわりを ミサイル レンジで囲まれ、Las CrucesとAlamogordoの両都市をむすぶ幹線ハイウエー(ルート70)が定期的に封鎖される(2時間ほど)という面倒があり、これが週二回も発生するので、残念ながら、いつでも、落ち着いて訪問できるところではない。ここ、White Sandsが横たわるTularosa Basinは広大なFlat平坦な地形で、ミサイルの訓練によいということで、選ばれたらしい。
衛星からの写真でも20マイルにわたるホワイト・サンドはよくわかり、その上部に広がる、黒い地域と好対照をなしている。膨大な白砂は近くのOrgan Mountainsからも、Cloudcroftの森林Trailからも望見される。
黒い地帯は Valley Of Fire といわれ、Preserve保護地域となっていて、これが、また20マイル以上にわたって続いており、ドライブしていてもわかるほど壮観である。同じ名前でNevadaのLas VegasのLake Mead近郊にネバダ州最初のState Park、今は昇格して Valley Of Fire National Park (2006年5月) があるが、こちらは岩が赤く、Sand Stoneの堆積岩で、鉄分の色が岩肌を赤く彩っているのでValley Of Fire と名づけられたが、起源は水成というか堆積作用の結果であるのに対し、このニューメキシコのValley Of Fire はある地点から流れ出した溶岩流が黒い溶岩をあちこちに固め上げ、何十マイルとつづいているもので、起源は火山活動による。(約1500-2000年前、比較的最近)。目だった火山がなく、ある地点からあまった溶岩を延々と吐き出したという印象が生まれるほどである。
ホワイト・サンドのGypsumはQuartzではないが、用途は多様である。しかし、ここは国定公園に1933年President Hooverによって指定されたので、持ち帰ることも許されない。工業でつかわれるGypsumはほかの場所から産出されたものである。
入園ゲートから中心まで約8マイル、約12キロの距離であることから、この公園のサイズはわかるはずである。(710平方キロメートル)。
GypsumはQuartzとちがって、太陽熱の吸収はおだやかなので、真夏でも、はだしで歩けるほどであり、白砂のスロープをすべって遊ぶ子供もおり、ところどころにしつらえた休憩所は帆掛け舟が白い海に浮かんでいるような印象をあたえ、なかなか、乙なものである。
また、White Sands National Monumentの東10マイルのところにある都市AlamogordoはTrinity Site最初の原爆の試験場 と関連して有名であり、その原爆実験の行われた場所は、このホワイト・サンドの東北部に位置するが、今は個人の所有地である。
シンプルな美しさを見せるホワイト・サンドは、背景のSan Andres Mountainsがあるから、引き立ってみる。反対側には、3660メートルのSierra Blanca Peak がそびえており、冬から春にかけては名の通り、白い雪山の姿を鮮やかに示し、白い砂をまえにしてきれいである。この山はMescarero Apache Indian の聖域Reservationに属し、付近にはInn Of The Mountains Gods となづけるホテル・カジノ・レーク・ゴルフ・テニス・乗馬の娯楽施設が整ったリゾートがあり、冬にはインディアン経営のSki Apacheがアルペンスキーのメッカとしてにぎわう。3500メートルの地点から2900メートルのスキー場まで、すべることができ、すばらしい。エルパソから2時間半のドライブである。中心の街はRuidosoでルイドソといい、スペイン語でNoise騒がしいの意味であるが、人ごみのことではなく、ちいさな川のささやきを言ったものらしいが、今では人ごみのNoiseととれるほど、街は観光リゾートとして発展した。海抜1800メートル程。
エルパソから、Ruidosoまでは約2時間のドライブ。ドライなエルパソから緑濃いカナダの森のような森林地帯に入りたいと思ったら、まず、頭に浮かぶのが、この Ruidosoで、私はしょっちゅう訪問したが、そのとき、ほとんど必ず、White Sands National Monumentに立ち寄る事にしていた。
広大な空間に、膨大な白砂がよこたわり、わずかのひとが散らばってみえるのが
White Sands National Monument であり、場所によっては、あたり一面真っ白な中に、自分ひとりで立っているのをみつけたりする。ファンタジーに富んだ世界である。エルパソに行って、はじめてそういう自然があるという事を知った。
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