今、2010年ごろはどうなっているのか、興味はありますが、知るのも恐い気がします。
わたしはもうTVも映画も見なくなって、Internetでニュース、新聞を覗くだけです。
村田茂太郎 2012年3月17日
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“Frontline:夜の子供たち”TV 感想
KCET(PBS)28チャンネルの“Frontline”は、その題名にふさわしく、全世界の重要な問題を取り上げて、いつも見ごたえのある内容を展開している。このシリーズのホステスである Judy Woodruffも嫌味がなくて、この現実的なシリーズを引き締めるのに、大いに貢献している。
1990年4月10日の“Frontline”は“Children Of The Night”というものであった。私はKCET Subscriptionでタイトルを見たときから、これはぜひとも見なければならないと思っていた。そして、その通りであった。
ジュデイ・ウッドラフの説明によると、今、アメリカで家出する子供の数は年間百万人にのぼるという。私は数年前、何かの文章に、アメリカの子供の家出数は年間50万人と書いたことを覚えている。もちろん、いくつかの本から吸収した数字であるが、彼女の数字を聞いて、あのデーターの頃より、情況はもっと悪く、もっと深刻になっていることを知った。2倍になっているのである。
百万人の子供の家出とは、日本的感覚では信じられないほどである。もちろん、90%は無事に帰るらしいが、無事に帰らない10%だけでも、ざっと数えて年間10万人もいるということになる。
家を飛び出し、大都会に流れ着いた子供は、もちろん、生活の糧も方法も何もなく、悪徳に汚れた大人の社会の暗黒面の犠牲になるだけである。保護してくれる家族のいないところに、生活技術も生存手段も何も持たずに、裸でとびだした彼らを待ち受けているのは、恐怖と苦労、生存のための苦悩と病気と死だけである。
本来、青春に輝いているはずの14歳、15歳の子供が、路頭に立って身体を売り、絶望を体験し、うちひしがれてアル中になり、病気をもらって、20歳にならないで、死んでいくという全く恐ろしい事実が、このLAのハリウッドやSan Franciscoその他の大都会で平然と起きている。暗いセックスのからむ、この暗黒の世界は、いつも病気と生命の危険と魂の破滅を孕んでおり、いったん、その中に入ってしまったものには、一見、もう脱出は不可能に見える。
この“フロントライン”にとりあげられた子供達も、14歳や15歳で汚い世界を見知ってしまい、その結果、未来への夢も希望も喪失してしまった子供たちである。一人はまだ20歳にもならないうちに、自殺をしてしまった。彼らがハリウッドやサン・フランシスコの街頭で知った世界とは、すべてをカネが支配する世界であった。そして、まだ子供で何の生活手段も持たない彼らに出来ることは、最も忌まわしい生き方、自分の身体を売るということであり、それしかなかった。
この現実世界は、家族構成が安定した中でこそ、平和で明るい世界であるが、いったん,家族が破壊され、そこから、はみ出し、とびだした子供は、全く無防備で、恐ろしい悪徳の世界に立っていることになる。そして、大都会では、いつも犯罪者が待ち構えていた。それは、いつの時代でもそうであった。ただ、安定した、幸せな家庭にいる限り、そうした、恐ろしい犯罪者の世界とは無縁でありえたのである。
問題は、アメリカでの家庭の在り方である。本来、憩いの場であり、避難所であり、最も安心の出来る場所であるはずの家庭が、ある種の子供達にとっては、逃げ出したいようなところとなっているところに問題がある。
平均離婚率一人3回といわれるアメリカであり、Battered Wives (夫に虐げられた妻たち)が公然と問題になり、その避難所までつくられてきているアメリカである。ただ、むやみに暴力をふるい、欲求の自己充足だけ追う男性が支配する家庭が、子供達の平和と安楽の願いをかきみだし、子供たちを絶望に追いやっているに違いない。
その時、問題になるのは、母親であるはずの女性の対応であり、実は、それが正しくなされていないケースが、問題をより深刻化させている。
今、アメリカは深刻な問題を抱えている。それは、ドラッグだけではない。ドラッグなどに頼らなくて良いような、すばらしく充実した家庭生活、学校生活を築いていける社会の建設が心から望まれる。
(完)1990年4月12日 執筆 村田茂太郎
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