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12/01/2014

K.C. McKinnon 「Dancing at the Harvest Moon」を読む


K.C. McKinnon 「Dancing at the Harvest Moon」を読む

 1997年出版で、わたしは昨日(2014年11月29日)第三回目を読了した。230ページほどの本で、絵も挿入されているから、読みやすく、すぐに読了する。

 題名が象徴しているように、ロマンチックな内容の本である。似たような本でKristin Hannahに「On Mystic Lake」というものがあり、これも私は大好きで、すでに三度は読了している。

 どちらも自分の子供たちが、もう大学生になっている45歳前後の女性が主人公である。アメリカでよくある話なのか、ある日突然、夫が、自分は別の女性が好きになったから、別れると一方的に言い出し、それを実行する。どちらも裕福な、成功した弁護士などを職業とする男である。

 「On Mystic Lake」については、また別に紹介したい。

 この「Harvest Moon」は、はじまりは、そのように夫からの一方的離婚宣言ではじまるわけであるが、この小説の展開はすこし普通と異なる。

 女主人公Maggieは1960年代の学生時代に、アルバイトということで、カナダのこじんまりした、きれいな湖沿いの町に位置するHarvest Moonというレストラン兼Dancing BarWaitressをして、三度夏のシーズンを過ごした経験がある。そのときRobert Flaubertという若者が好きになり、ふたりはつかの間の性愛を楽しんだ。若者Robertにとっては、彼女Maggieとの愛が忘れられない。しかし、男は地元の人間であるのに対し、女はボストンから出稼ぎにきていたので、大学もアメリカ・サイドであり、結局、男からの情熱のこもった手紙の連絡にもかかわらず、女は男をあきらめ、別な男Joeと結婚し、自分も英米文学でPh.D.を取得して、夫の居るKansasの大学に職を得ていた。今は下の娘も大学生で、自分は大学教授、夫は弁護士ということで、外見はまともな、ゆたかな家族のようであったが、夫が突然、同じ弁護士事務所の若いParalegalの女性と結婚するといいだしたので、途方にくれてしまった。

 離婚後、ある日、屋根裏部屋で自分の指導する女学生のために、自分の書いたふるい書類をさがしていて、その昔のカナダの初恋の相手Robertからの手紙の束を見つけた。それは、まさに自分の過去の再発見であった。夫と離婚してしまった今、彼女は初恋の相手が今どうしているだろう考え始め、その思い出の町を訪問する決意をする。

 Little Bear Lakeという名前の湖を前に、Harvest MoonというRestaurant/Dancing Hall/Barが建っていた。今はどうなのか。飛行機で町に着いた彼女はこのHarvest Moonが営業をやめて売りに出されているのを知る。そして、同じころ、25年前に一緒にWaitressをした女友達Clairも、たまたまこの町に帰ってきているのを知る。

 彼女は1969年以来、自分のほうから男Robertを見捨てたかたちになって既に25年経つ。彼女がレストランで働いていたとき、この女友達クレアーClaireもいれて、いつも三人で楽しく付き合っていたため、男がどうしたのか気になっていたが、彼女は女友達とも連絡を絶って久しい。25年、完全に連絡を絶っていたので、はじめて女友達と再会しても、Claireには、すぐには彼女の名前Maggieが浮かばなかったほどであった。

 ともかく、初恋の男性がどうしているのかも知らなかったが、会いたいという事でカナダまで飛んできた。そして、彼女Maggieが本当に何も知らないのがわかって、Claireは、男Robertが、最近、Heart Attackで、まだ40代の若さで亡くなったことを告げる。男は、愛する女Maggieがアメリカで結婚したと知って、自分も別な女性と結婚し、男児をもうけたようだと知る。今、その子供がどうしているのか知らないが、彼女は青春の最高の思い出が残るHarvest Moonを元のOwnerから買い取って、自分がこの思い出深いDancing Barを再建しようと決意する。

 そして登場するのが昔の恋人Robertの一人息子Eliotである。彼女はDancing HallHarvest Moon”をRemodelするためにHandymanを募集したが、広告がでるまえにClaireからその話をきいた“何でも屋”のEliotが彼女を訪れてきたのであった。

 はじめて若者Eliotが登場したとき、まさに昔の恋人の亡霊が出現したようで、すべてが同じようなRobertのイメージと重なったため、びっくりして、彼女はもっていたコーヒーカップを落として割ってしまった。

 そして二人はお互いを知るようになる。驚いたことに、若者は彼女の秘密までよく知っていた。それは、別に不思議でもなく、彼が、父親がKeepしていた彼女の手紙を全部読んだということであった。

 若者は25歳、大学教授Maggieは45歳。そして、二人の間に、あるいは若者のほうから一方的に、彼女への愛の告白が始まる。彼女のほうは自分の娘が若者Eliotよりも何ヶ月か若いだけなので、父親が若い、娘よりすこし年上なだけの女と結婚し、自分がこんなことになると、世間体もおかしいし、娘たちもおこりだすだろうと思って、一度は体を許したが、こんなことは続けられないと考え、せっかく、Dancing Barを自分で経営するつもりで開店Partyまでうまく成功させたが、もうKansasに戻るからと言い出す。店の経営は女友達Claireにまかせるというわけである。

 熟年の男が自分の子供と同じような世代の若い女と関係を持つという話はよくあることである。逆の場合はどうか。熟年の女性に若い男が興味を持ち、真剣に愛するということが可能か。

 最近、わたしが読んだJ A JanceMysteryで、Sedona在住の元TVアンカーウーマンAlli Reynodlsを主人公とする物語では、結婚した息子がいる主人公AlliCyberサイバー関係のベテランとして、何かあるたびにコンピューター操作でAlliを助けていた男が、ただ情事をもつだけでは満足できず、最後に、Alliが誘拐され、もう少しで殺されるところまでいったことから、いつまでも結婚を伸ばしていないで、すぐに結婚しようと決意し実行する話がでていた。この中ではAlliはもう50歳前後である。男は30歳過ぎ位か。

 まあ、成熟した女の魅力ということであれば、若い男が真剣に愛することも可能であるように思われる。性愛だけを考慮すれば、ありえない話だと思われるかもしれないが、人間の魅力とは性愛だけで決まるものでない。熟女の魅力は年齢をこえて若者を魅惑するであろう。もちろん男の場合も同様で、最近私が続けて読んだ小説の女主人公はみな45歳前後で夫から離婚を宣告される話であった。そういう年齢が更年期Menopause, 性愛などとからんで、人間関係として、女性には危機的な年齢なのかもしれない、そのころの離婚騒動を扱った小説、Love Storyが多いのは事実である。しかし、最近はギネスの記録でもあらわれているように、60歳になった女性が子供を産んだりすることもあるという話だから、性関係は年齢とは関係なく持続するものかもしれない。

 この本は、ひとりの女を愛した男の息子が、同じように、父親が愛した女を愛するという話で、それに至るまでに、女は世間体その他を気にして、今まで準備してきたすべてをなげうって、もとの大学教授の場にもどろうとするが、自分が25年まえに恋人Robertに書いた手紙をその息子のEliotから手渡されて読み、いつも自分がある場面から逃げてきているということを知り、いったん、カナダからアメリカにうつりかけたが、Little Bear Lake, Harvest Moonに戻ることになる。

 自分が25年前に手紙に書いた文言・決意をわすれてしまっていたわけで、今、新たに読み直して、そうだ、逃げていてはいけないと覚悟を決める。We need to live life fully. If the day ever comes that I find love, I‘ll grab hold of it. 私たちは人生を十二分に生きねばならない、わたしがLoveを見つける日がくれば、わたしはそれをしっかりとつかむ、とかと彼女が自分でいっていたのを忘れて、年下の恋人Eliotから思い出されねばならなかったのだ。You are what other people think. ・・・But what about what you think? What about what I think? 今のあなたは他人がどう考えるかで存在している。・・・しかし、あなたはどう考えるのか。わたしがどう考えるか・・・。若いEliotのほうが、単純ではっきりしているわけだが、当然である。Richard Feynmanの“What do you care what other people think?”がここでも通用するといえるだろう。他人が思うことを気にしてどうなるの?そのとおり。人生は短い、自分の意思に忠実に生ききるしかない。

 無事にLakeについたMaggieEliotの棲んで居る湖畔のLodgeに向かい、お互いを見つけてHappy Endingとなる。

 この本には1960年代から1970年代にかけて流行したらしい歌のタイトルが沢山出てくる。ジュークボックスがそういう歌を流していて、誰も親しんだが、特にこの三人組はきまった歌を好んでいた。それで自分でDancing Barを経営するつもりになったとき、最新の歌謡曲でなく、彼女が取り揃えようとしたのは1960年代のPopular Musicのレコード版であった。残念ながら私はアメリカの1960,70年代の流行歌手など誰も知らないし、歌の題名も知らないので、ムードはよく理解できなかったように思う。たしかに日本でなら、流行歌がヒットした時代というのがそれぞれあり、(それが流行歌といわれる理由であるはずだが)、流れている流行歌を耳にすると、それがはやった時代の自分の思い出がわきあがってくる。もちろん、個人的にマーラーの交響曲(特に5番)に没頭していたころとか、モーツアルトのピアノ協奏曲ばかり聴いていたころとかという回想もありうるが、巷で流れてくる音楽といえば、どうしても通俗的な流行歌ということになり、それでも、それが一番流行した時代を思い出すきっかけになるわけで、ある意味で、流行歌のよさといえる。プチット・マドレーヌの菓子だけが、失われたときを思い出させる素材というわけでないのは明らかである。匂い、音、タッチ、すべてが過去につながっていく。

 主人公Maggieが英米文学の大学教授ということで、本は大好きであり、Eliotという名前も、彼女が好きであったT.S. Eliotの話から、恋人が親しむようになった名前であり、ほかにEliotよりもYeatsが状況にふさわしいと感じる場面もある。そしてFrancis Scott Fitzgeraldの「Great Gatsby」も適度に挿入されて、効果を挙げている。

 大体、Love Storyが展開する場所は湖沿いの魅力的な環境であることが多い。わたしもロマンチストで、そういう静かな湖畔を舞台に展開する物語が好きである。Nicholas SparksLove Storyも大概、彼の出身地らしいNorth Carolinaの海岸沿いの小さな町であることが多い。通俗的だが、やはり好きなものは好きなので、仕方がない。

 この物語もSecond Chance 第二の人生をめぐるLove Storyであった。

村田茂太郎 2014年11月30日、12月1日

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