Sierra Blanca Peak
(New Mexico 12003Feet, 約3660メートル)登山をめぐってーエッセイと写真紹介
エルパソから約2時間,140マイルの距離にあるRuidoso(ルイドソ)はNew Mexicoにあるにもかかわらず、Texasの避暑地といわれている。それほどテキサスの人はルイドソを訪れるということであり、私もその例外ではない。どちらかというとドライで森林がないエルパソにいると、時々、森が恋しくなり、自然とエルパソ郊外にドライブする事になるが、その時、まず考えるのがRuidosoなのである。
RuidosoはNoisyという意味のスペイン語だそうで、“喧しい”とはヘンな名前をつけたものだと思うが、このNoisyは都会のざわめきではなく、まだ人が余り住んでいなかった頃、Ruidosoの中を流れるRuidoso
Riverがせせらぎの音を立てて流れた事に由来するようだ。New
Mexicoには変わった名前の街が沢山あり、最も有名なのはHot Springsという市名をRadio Show番組で有名だった“Truth
or Consequence”という名前に変えた街や”ヘルプ“の意味を持つ”Socorro”など。
エルパソからルート54を北に走ると、道の両側は荒涼としたドライな原野が続いて、それが約85マイルで、Alamogordo市へ着く。Alamogordo,White
Sands, Tularosaとこのあたり一体に広がる平原をTularosa Basinと呼ぶ。Tularosa Basinは海抜約1300メートルほどの高さを維持している。
このTularosa Basinを北上するルート54をドライブしていると、北東の角度にひときわ高い山が見てとれる。冬はほとんど真っ白で余計に目立つ。Ruidosoへの道をMescalero
Apache Indian Reservationにはいると、くだりの道のほとんど真正面にきれいな山が目に入る。どれも同じ山である。Sierra
Blanca Peakという。冬、周りの山が青黒いときでも、この山だけはかなりふもとまで真っ白になるため、こういう名前をつけたのであろう。海抜12003Feet(約3660メートル)。Tularosa Basinからみても、約2400メートルの高さにそびえている。見事なもので、平地からの伸びとしては、New
Mexicoで最大である。TaosにそびえるWheeler Peakは13161Feet(4012メートル)もあり、New
Mexicoの最高峰であるが、Taos自体、既に約2000メートルの高さのところにあるので、その平地からの伸びとしては約2000メートルで、このSierra
Blanca Peakに劣るのである。
この山は、Tularosa Basinからはひときわ高くそびえているので、どこからでもよく見える。Albuquerqueの前にそびえるSandia
Mountainsの頂上から眺めても、スグに見分けがつくほどである。南ニューメキシコの最高峰として、その雄大な貫禄を示して余りある。
Sierra Blanca Peakのスグ横にそびえるLookout Mountainを頂点としたスキー場がSki
Apacheである。スキー場を持たないテキサスの人間にとって、Ski Apacheは身近で手頃なスキー場であり、雪質もPowderで、スロープも落差最大約520メートルもあったりして、結構楽しめるし、頂上近くからの眺めは抜群なので、スキー・シーズンの土日など、早朝からかけつけないとBasinは混む傾向があるくらいである。
スキー客にスグ目に付くのも、スキー場の傍らに堂々と輝いているSierra Blanca Peakなのである。約3500メートルにあたるスキー場の頂点Lookout
Mountainから見ると、すぐ近くに見えるので、私は何とかしてこのSierra Blanca Peakに登りたいものだと思っていた。私は愛読するようになったFalcon
Press社の本の中に、“The
Hiker’s Guide to New Mexico”という本があり、その中で、Sierra Blanca Peakが一つのコースとして上げられているのを知ったとき、私は”よし、登ろう“と決心した。
1995年7月23日、この日は私にとって元も完璧な日の一つとなった。シーズン中の週末は登山客で混むと書いてあったが、この日、私が出遭ったのは、出発点近くで二人連れのグループ、頂上付近で三人連れのグループという二つのグループだけであった。
朝、5時過ぎにエルパソを出発し、Ruidosoには7時半ごろ到着し、上り口に当たるSki Apache Parking
Areaで準備を整え、登り始めたのは8時半であった。
その日、Alamogordoは100度Fを超えていたが、3000メートルを超える森林のハイキングは快適で、まずTrailの入り口辺りから、しばらくは高山植物が咲き乱れるコースを辿り、そしてPonderosa
Pineの森の中へと入っていく。Pine林が時々とぎれて高山植物の草原が広がっていたり、スキーのスロープが青々としているのを垣間見ながら、徐々に高度をあげてゆき、約2時間でスキーで親しんだ、ゴンドラ・リフトの終着点についた。まず、Lookout
Mountainに登る。(海抜3500メートル)。足の踏み場もないほどAlpine Flowerが咲き乱れている。眺めはすばらしい。White
Sands National
Monumentもよく見える。私はここまでのハイキングを楽しみながら、まず、ここまでなら、片道約3.5マイル程で、高山植物と松林の間の林道をゆっくり登っていくので、ほとんど誰でもやってこれるに違いない、これはいいところを見つけたと思った。
さて、念願のSierra Blanca Peakは、スキーの時と違って、随分遠くにそびえているように見える。本によると、一見近そうに見えるが、なにしろ海抜3660メートルの山であり、3500メートルの地点から一度かなり下って、また上がり、そしてまた下がって上がるという具合になっているので、2-3時間はかかると見たほうがよいと書いてあったが、事実、その通りであった。
Ponderosa PineのForestがつき、草原のようなものが現れた。遠くからSierra
Blanca Peakを眺めていた時は、雪が消えたあとは、灰色の地肌が露出しているように思われ、頂上付近は禿山かと思っていたが、ソウではなかった。スキー場のスロープから頂上付近、Sierra
Blancaへの道と、全体にわたって高山植物が今を盛りと咲き乱れて、足を入れるのも遠慮したくなる程であった。これが有名なAlpine
Tundra現象なのであった。丈の低い高山性草花が強風と寒さに耐えて美しく咲き乱れている部分につけられた名前がAlpine Tundraなのだ。ツンドラには、もうひとつArctic
Tundraがあり、これはアラスカ以外では、コロラドのMount Evansに見られるという話であるが、それ以外のColorado, New
Mexico, Arizonaの3500メートルを超える高山帯ではAlpine Tundraが出現しているわけである。
Lookout Mountainから、いったんかなり下り、そして今度は本格的にSierra Blanca Peakを目指して登りはじめた。快晴の空は青々として広がり、徐々に高度を増していくにつれ、眺めは素晴らしいものとなる。足元の高山植物、そしてツンドラ帯の下に広がる緑濃い大森林、かなたのCapitan
MountainsやWhite Sands, Sandia Crestとアチコチの連峰がすばらしい眺めを披露してくれている。すぐ近くにと思ったSierra
Blancaの登りは急で、道らしい道はなくなり、だんだん岩が多くなってくる。道なき道を辿る方法―オリエンテーション・テクニックは、私がエルパソのフランクリン山脈登山の中で学んだものであり、眺望もよいので、ひとり、自信をもって頂上に向かって歩き続けた。
そのうち、一つのグループが下山してくるのとであい、挨拶を交わしたが、その時、ひとりが、頂上部はRockyだから気をつけるようにと言ってくれた。このアドバイスはありがたかった。Sierra
Blanca Peakへの道は、フランクリン山脈の頂上部のようにRockyで注意が必要であった。私はフランクリン山脈への20回にわたる登山で、一通りのコツは身に付けていたので、経験が役に立つと大いに感謝しながら頂上へ向かった。
頂上は風がきつく、360度の眺望はすばらしかった。Rockyな岩の間にも高山植物が咲き乱れていた。私は頂上から少し下がった岩の間で風を避けて、用意したランチを食べた。赤・青・黄・白と咲き乱れる花々を見つめ、松林や青空を眺めていると、自然に囲まれたすばらしい瞬間が私のために作られているような気持ちになり、この大自然の豪華な饗宴を楽しめるときを持てたことが、苦労して登った疲労をいっぺんに解消してしまうように思われた。本当に楽しみ、充分満足して、下山にかかった。同じルートを戻ることをやめ、スキーのスロープを歩く事にした。スキー・シーズンには真っ白であった斜面のすべてが、草原のようになっていて、高山植物が生い茂っていた。
無事下山し、“Inn of the Mountain God”に立ち寄ると、今、登ってきたばかりのSierra Blanca Peakが美しい曲線を見せて、湖のうしろにそびえていた。今までは、ただ遠くから眺めるだけであったが、3660メートルの頂上に立ったあとで見るSierra
Blancaはなんとなく親しみが湧く山となっていた。トータル,頂上まで往復約9.5マイル。頂上までの高度差約700メートル。夏は雷雨の危険が伴うため、早朝にスタートして、12時ごろには下山にかからなければならないが、パーキング場 Trailの入り口から頂上まで、注意深く行動すれば誰でも登れそうだし、お花畑・松林・見事な眺望、そして何かをやり遂げたという自信を生むすばらしいハイキングであった。
そうして、このあと、かなり山に自信を持てた私は、同じくNew MexicoはTaosのWheeler Peak (4012メートル)、GrantsのMount Taylor(約3450メートル)、Gila Wildernessの最高峰 White Water
Baldy(約3300メートル)、Sandia
Peak10K Trail (3000メートル)、Big Bend National
Parkの最高峰Emory
Peak(約2350メートル)と4ヶ月ほどの間に登頂していった。そして、いつもすばらしい体験をすると同時に、フランクリン山脈登山で学んだことがすべての登頂において生かされているのを切実に感じたのであった。
村田茂太郎 オリジナル 執筆1996年3月15日、Word Input 2012年7月13日
Sierra Blanca Peak from road to Ruidoso |
Sierra Blanca Peak |
At Lookout Mountain OnTop |
View of Sierra Blanca Peak from Inn of the Mountain God |
Road to Sku Apache, viewing Sierra Blanca Peak |
3000メーターVista Point |
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