New Mexico 最高峰Wheeler
Peak〔4012メートル)登山をめぐって 紀行文と写真
New Mexicoの北部TaosにそびえるWheeler Peakは海抜13161Feet〔約4012メートル〕の高さで、New
Mexico州の最高峰となっている。しかし、Taos自体が既に2000メートル近い高さなので、平地からの伸び率としては2000メートルそこそこで、RuidosoにそびえるSierra
Blanca Peak12006Feet〔約3660メートル〕(Tularosa Basinからの伸び率は約2300メートル)に劣るのである。
1995年5月末のメモリアル・デイの頃、他の仲間とTaos経由Durango, Gallup, Albuquerqueの旅をしたとき、Taosで一泊した。あまり時間的余裕のない旅であったため、有名なScenic
DriveであるEnchanted
Circleも三分の一ドライブしただけであったし、Taos PuebloもCloseで見れなかった。結局、沢山の仲間と一緒に行動するときは、オリエンテーションとして行動し、アト、自分がその時、すばらしいと思い、ゆっくり時間をかけて見たいと思った処は、単独で別なときに行動すればよいわけである。
Enchanted Circleを完走したい、Taos Puebloもゆっくり見たい、そして出来ればTaosの中央にそびえるWheeler
Peakに登りたいという考えが、RuidosoのSierra
Blanca Peak登山に成功したアト、急速に成長し、機会を逸すべきでないと思って、あるとき、オフイスを5時過ぎに引き上げると、急遽アパートによって用具を積み上げ、そのまま休まず、北に向けてドライブし始めた。1995年8月4日金曜日、夕方のことである。
New Mexico、Las Crucesを過ぎる辺りは雷雨の中にあったが、私はともかくSanta Feまでは着きたいと考え、走り続けた。El
Paso-Albuquerqueは約270マイル。〔当時のスピードでは4時間少しの距離〕、Albuquerque-Santa Feは約60マイル、1時間。従って、オフイスをひきあげ、アパートで用意して、6時過ぎに出発して、Santa
Fe着は11時過ぎの予定であった。
モーテル予約もしないでSanta Feに12時前に入ったが、ほとんどすべてのモーテルはNo Vacancyであった。当然である。8月初旬といえば、Santa
Fe やTaosはシーズンで、早く予約を入れていないと、とび込みで泊まれるところなどどこにもない。Santa
FeとAlbuquerqueをうろちょろしたすえ、仕方なくI-25を出た路傍にクルマをとめて野宿することにした。I-10では、Rest
Areaが手ごろな距離に完備していて、安心してクルマの中で眠ることが出来るが、I-25では、その日、必死で捜し求めた私の目に入らなかった。Rest
Areaならともかく、路傍駐車は、Serial
Killerが多発しているこの国では気持ち悪いものである。やかましいほど耳に届く虫の声をききながら、こんなことをしていては睡眠不足で、とても山に登れたものではないと考え、クルマを動かして、Santa
FeからTaosへ向かう途中のIndianのCasinoのParking場で休む事にした。
夜が開けはじめる頃、Casinoを出て、Taosへ向かった。Santa
FeからTaosへの道は2本ある。ひとつは“High
Road to Taos”といわれているScenic
Driveで、すばらしいといわれており、私もそのうちドライブしたいと思っているが(のちに、一度だけ実行)、何しろ、たったの54マイルを走るのに、4時間ほどかかるということになっている。従って、いつも私は
Espanolaを通るHighway68のコースを辿ってしまう。このコースも、私はScenic
Driveに数えたい。Highroad
to Taos はどちらかというと、あちこちの古い教会跡を辿る形となるのに対し、このMain Routeはその四分の三近くは、Rio
Grande沿いを走るのである。Rio Grande沿いに、Taosの山の中に向かってドライブするのは悪くない。5月にはRaftingをしている人たちが、ドライブしながらよく見える。はじめてこのRio
Grandeを見たとき、赤茶けた濁流なので、川の中にいるはずの魚をかわいそうに思ったが、8月ともなると、水量も余り多くなく、ほとんどRafterらしき人影も見かけなかった。Santa
Fe から Taosまでは約1時間半かかる。
Taosにつくと、5月に泊まったIndian Hillsのモーテルにまず入って、その日の宿を確保した。そうしておいて、Enchanted
Circleのドライブに向かった。“Enchanted Circle”はTaosにそびえるNew Mexicoの最高峰Wheeler
PeakとWheeler
Peak Wildernessを取り巻く形で一周しているドライブ・ルートで85マイルの距離であり、ドライブを終えるのに5時間ほどかかるいわれている。
5月の三分の一のドライブで、その魅力の一部については既に知っているので、早速、ルート64に入った。TaosからCarson
National Forestの中に入り、谷沿いから森林の中に入り、山越えをすると、美しい大高原がひろがっていて、Angel Fireのスキー場が見えてくる。Eagle
Nest Lakeが見えるところで5月に引き返したのに対し、私はやっと未踏のドライブに入っていく事になり、心がウキウキしてきた。有名なCimarron
Riverに出会い、それほど広くはないが、雪解け水が豊かに流れていて、いかにもサカナが気持ちよく住めそうな環境である。“釣ってもいいけれど、釣りを楽しんだら、ちゃんと逃がしてやりなさい”というWarningのサインが出ている。そのせいか、ホンモノのフライをジャンプしてキャッチしているRainbow
Troutの姿を時たま見かけると、Ruidosoで見慣れていたのにくらべて、はるかに雄大で釣り応えがありそうである。蛇行する川を横切っていくドライブは、従って、いくつも小さな橋を渡る形になり、それぞれ手ごろだと思えそうな場所に、Fishing
Pantを身に付けたFly
Fisherman達が楽しんでいる姿があった。
私は美しい森の中の清らかな流れ(ここはリオ・グランデと違って、透明で冷たい清流が流れていた)を見た事に満足して、Eagle
Nest Lakeのほうに戻り、ルート64を今度は38に乗り換えて、Enchanted Circleを走り続けた。Wheeler
Peakの上に雲がいっぱい湧いてきているのをみとめ、やはり、昼を過ぎると夕立になりそうで危険だ、昼までに登頂するようにしないといけないと考えながら、美しい高原のドライブを楽しんだ。Enchanted
Circleには有名なRed RiverやD.H. Lawrence Memorialなどいろいろ見所はあるが、私はTaos周辺の自然環境を見るということに目標を定め、それに徹した。従って、5時間かかるドライブを3時間ほどできりあげてTaosに戻った。あかるかった天気がいつのまにか曇ってきて、夕立になりそうである。
私は一応、Enchanted Circleを一周した事に満足して、今度はTaos Puebloに向かった。Taos
PuebloはTaosの中心街から10分足らずのところ、うしろにWheeler Peak Wildernessをひかえたすばらしい環境のところにあり、Pueblo
de Taos Indian Reservationの中心である。昔、誰か日本人でIndian Reservationはドライで作物も育たない、環境の悪いところばかりにあると書いていたのを読んだことがあるが、それは、たまたまそういうところもあったということで、RuidosoのMescarelo ApacheやTaos
Puebloについてはあてはまらない。ただし、Indian達が強制的に移住させられたというのは本当で、これは別問題である。
Taos PuebloはSky CityといわれるGrants市近くのAcoma
Puebloと並んで、アメリカの二大インディアン在住居住跡であり、700年間、その風変わりなBuildingに棲み続けているということで、特にこのTaos
Puebloは国連ユネスコから、最近、法隆寺やタージ・マハ-ル並みの世界文化遺産の扱いを受ける事になった。
Taosの見物のNo.1はこのTaos Puebloである。ところが、ここのインディアン達も観光で俗化してしまったため、この区域で写真を撮るというだけで5ドル、ビデオの場合は何十ドルといった調子で、インディアン・Taxを徴収する。まあ、写真にとる価値はあるところだし、インディアン達は苦労してきたはずだし、特に目立った産業などないことはわかっているので協力する気にはなるが、ゾロゾロと観光客ばかり目立つというのは嫌なものである。周りの自然のすばらしさ、そしてTaos
P Puebloの建物の目の前に浅い清流が流れているのが気持ちよく、インディアンの解説が終わってから、ぶらぶら散歩するのに適している。
アイヌ同様、文字を持たない民族であったらしく、語り部が彼らの民族史を記憶して、代々伝えあった様で、それを土器にあらわしたりしていた。インディアンのガイドが自分で作ったという縦笛を吹いてくれたりした。既にAcoma
Puebloも見ていたので、いろいろと気になるもの(キリスト教化とそうでないインディアン、Santa Fe風Adobe建築とキリスト教文化の影響など)があって、訊いてみたいと思ったが、大勢の観客の中で、そのような問題に触れるのは失礼に当たるかもしれないと思い、おとなしくしていた。
Taos Puebloが終わってから、翌日、日曜日のWheeler Peak登山のスタートの地点をあらかじめ見ておきたいと思い、Taos
Ski場に向かった。Taos
Ski場は、Taosから18マイル、9460Feetのところにある。Taos Ski場は、スイス人Ernie
Blakeが単独で構想をめぐらし実現したスキー場で、One
of the Best Ski Resort on the Planet といわれているところであり、“Skiing USA”を書いたClive
Hobsonによると、すべてを考慮して、アト一箇所だけ自分の人生でスキーを楽しめるとしたら、Taos Ski場へ行くといっているほどのところである。スキー初心者の私もTaosで楽しめるようになりたいと思ったりするが、51%以上がExpert用につくられているスキー場では、グリーン・ベルトの初心者には無理なようで、残念である。
このスキー場へのドライブはCarson National Forestの中を終始Rio Hondoの清流に沿って15マイル走る事になる。ルート150の終点がTaos
Ski Valleyである。冬はスキー場、夏は避暑地、登山、ハイキング、フィッシングのメッカとして栄えているところで、このスキー場からWheeler
Peakらしきはげ山が見える。4000メートル前後の山で禿山に見えるところは、すべてAlpineツンドラ帯で、実際は高山植物のお花畑のようになっている部分であるが、遠くから見ると森林帯からはみだして裸に見えるため、いかにもはげ山のような感じがする。Wheeler
Peak Trailのサインとパーキング場をみとめ、Taosから約30分のドライブでこれるのを確かめて、安心して、モーテルに向かった。
まともな食事をしていなかったので、ベストのレストランで食べようと決め、どの本でもOne of the BestとあげられているTaos
Innの中のDoc
Martin’sに入った。そして、ニューメキシコなのだからと、ニューメキシコ・スタイルのDinnerに決め、マルガリータを飲んだ。そして、グリーン・チリ・スープを食べてのんびりとその日の行動を振り返り、次の日の行動を考えているうちに、気分が悪くなってきた。金曜日の夜、仕事のアト、Santa
Feに向けて直行し、モーテルがなかったため、不充分な形の野宿となって睡眠不足気味のところに、高度2000メートルのTaosでのActiveな一日であったため、アルコールとグリーン・チリが効いて、体調がおかしくなったのであろう。別に吐いたりはしなかったが、冷や汗が出て、じっとしていたため、Waiterも心配してくれた。私はOKだといって、ほとんど食べなかった食事をTake
outにしてもらい、レストランを出た。こんなことで、明日、最高峰に登れるのかと不安になったが、ともかく、早く寝て、翌日に備える事にした。
Taos Ski ValleyからWheeler Peakへのコースは2つある。1つはメイン・コースで、他の一つは、付け足しのようなルートである。どの本にもTaos
Ski ValleyからWheeler Peakへの往復は14-15マイルであり、日帰りは可能であるが、少なくとも10時間から16時間は覚悟しておいた方がよいと書いてあり、Very
Strenuous(大変、骨の折れる)Day hike 〔日帰りハイキング〕 ということになっている。9400Feetから13161Feetまでの登りだから、2865メートルから4012メートルまで1200メートル足らずののぼりである。私のそれまでの最高峰はRuidosoのSierra
Blanca Peakであり、3660メートル(12006Feet)で、スタートのSki Apacheのスキー場が2900メートルほどなので、実質ののぼりは800メートル足らずである。Texas最高峰のGuadalupe
Peakは約2660メートルで、登山口は1760メートルほどなので、約900メートルののぼりである。そして、いずれも往復9マイルほどのハイキングであった。Wheeler
Peak登山は、私にとって最もStrenuousな登山となるはずである。
結果として、少し道に迷って、余分に歩く事になったため、15-16マイルの登山となった。限界であった。そのアト、私は10マイル前後、高度差1000メートル前後なら日帰りの登山は可能だが、往復13マイルとか、それ以上と書いてある場合は、その登山ははじめから避けるようになった。しかし、10時間から16時間と書いてあるWheeler
Peak登山を、私は単独で9時間半でやりとげたので、体力の限界はともかく、悪い成績ではないと、それなりに自信を持つようになった。
1995年8月6日(日曜日)、朝7時に登り始めれば、お昼までには頂上に着けるだろうと計算し、6時に起きるつもりが、目が覚めたら6時半であった。私は急いでとび起きて、前日ちゃんとSki
Valleyへのルートを確認しておいたのは正解であったと思いながら、Ski Valleyへ急いだ。そして、スピードを出して、丁度7時にパーキング場に到着した。
Taos Ski ValleyからWheeler
Peakへの道は本来一本であるはずなのだが、どうしたことかいろいろな道が見つかり、サインがハッキリしないため、本当に正しい道を歩いているのかわからなくなってくる。“For
the first 3 miles, the route is part road and part trail, and it passes many
confusing side trails and roads. The route is poorly marked; when in doubt,
hikers should follow the most heavily used trail.”と、あるハイキングの本に書かれているが、その通りである。私は最初で間違い、帰りもやはりまちがって余計に歩く事になった。もう少し、しっかりしたサインをハッキリとわかるように出しておいてもらいたいと何度も思った。
私はメインのルートを歩き出したつもりなのに、どうもおかしいと思って調べなおしてみると、Wheeler Peakへのメイン・ルートではなく、Wheeler
Peakの真下にあるLake
Williamsに至る道を歩いている事に気がついた。どちらも最初は渓流沿いに歩くため、気がつかなかったのである。
Williams Lakeは海抜11120Feet(約3400メートル)のところにある小さな湖で、高いところにあって、深度が浅いため、冬には完全に結氷するため、サカナはいない。ハイキングブックの“Williams
Lake”のところを見ると、往復8マイル、約500メートルののぼりと書いてある。
私はまず、ともかく、Williams Lakeまで行って様子を見ようと考えて、Williams LakeへのTrailを歩き続けた。美しい森林の中に入って行き、私は早朝のすがすがしい森の中をとぶように、気持ちよく歩き続けた。高度を上げるにつれて、アルパインの美しい自然が眼に入ってくる。雲をいただいた切り立った山々とそのふもとに横たわる森林、青空、そしてGlacierで自然に出来たWilliams
Lakeがその中に、静かに、緑の森を映して輝いていた。そのまわりにいくつかのテントが見える。ここまでは気持ちのよい、手ごろな、ラクなハイキングであった。このまま帰っても、それなりの価値はあった。しかし、ここで私は、真上にそびえるWheeler
Peakに登る道はあるに違いないと考えた。ガイド・ブックは来た道を戻れと書いてあったが、私はWheeler
Peakに登る意欲をたかめて、Lakeの周りを見ると、Wheeler
Peak Trailと書いたサインが見つかった。私はホッとしてやはりここからでも登れるということは、これはかえってループできる事になるから、この道から来たことは正解であったと思った。
Williams Lakeは海抜3400メートル、Wheeler Peakは海抜約4012メートル。Williams
LakeはWheeler
Peakのほとんど真下にあるから、この600メートル程の登りは階段を登るような急なのぼりである。その証拠に、Lakeから森林の中をTrailにそって少しずつ登るたびに、見事なパノラマ的な景観がひろがってくる。美しい森林、切り立った岩峰、アチコチに散在する白い雲、青い空、輝く太陽、見事なAlpineの光景であった。私は何度も、昔、スイス的なAlpineの光景の中を歩きたいと思っていたが、今、その夢の一つが果たされていくのを実感し、少し登るたびに、振り返って、すばらしい風景を楽しんだ。
私のWilliams Lake到着のアト、スグ何人かの子供連れの団体(家族)7人ほどがLakeに到着した。私はWheeler
Peakへの道を登り始めながら、彼らはLakeどまりであろう、何の用意もしていないみたいだからと思っていたら、やはりWheeler
Peakをめざして登り始めた。そして若い人たちは体力があって元気なのか、みるみるうちに私に追いつき、そして追い越して行った。
私はいつも登りは苦手である。重力に抗してのぼるのは大変だといつも思っていたし、のぼりは他の人に比べてSlowな方であった。それが、Guadalupe
PeakやSierra
Blanca Peak登山では、ほとんどの人よりも早く登れていたので、少しは体力がついたのかしらと思ったりしたが、Wheeler Peak登山で、全くダメだということを思いきり知らされた。階段のような急なのぼりがつづくWheeler
Peakへの道を、小さな子供達やその親が、まるで平地を歩いているみたいにスイスイと登っていくのに対し、私はあえぎながら、そして少し登るごとに立ち止まって休憩しながら、ボツボツ登っていくほかなかった。こんな調子ではとても高度600メートルも登れないとあきらめたいような気持ちであった。
子供達の姿が見えなくなったと思ったら、別な若者が、また私に追いつき、そして追い越していった。わたしは自分の体力のなさを情けなく思いながら、ともかく、少し登っては休憩という作業を繰り返して、徐々に高度を上げていくほかなかった。いつのまにか、森林帯から抜け出して、ツンドラ帯に入っている。青々とした草が岩の間にひろがり、赤や黄色の美しい花をつけている。高山植物のお花畑であった。ふと私の目の前に動物らしきものが出てきたと思ったら、Marmotであった。うさぎのような、ワリと大きくて太った、かわいい動物で、野生なのに全然わたしをこわがらず、平気で目の前を、あちこち食べ物を探しながら通り過ぎていった。私はうれしくなってきた。そして元気を出して登り続けた。
若者がのぼっていく先を見ると雪渓らしきものがある。私もようやくそこまでくると、やはり雪渓であった。小型ではあるが、そこを越えていくしかない。私はすべらないように気をつけながら雪渓を越えた。まだまだ先である。そのうち、先に登って行った子供連れの団体が下山してきた。若者も降りてきた。私は自分がこんなにも苦労しているのに、もう登頂して下山してこれる彼らを羨ましく思い、これ以上、体力は続きそうにないから、あきらめようと何度も思った。しかし、若者が、アソコに見えるのが峰へのルートで、ソコからはホンの少しで、ラクなルートだから、もう少しの我慢だと励ましてくれたのに元気を出して、ともかく何度も休みながら歩き続けた。やはり高度4000メートル近くなると酸素も薄くなるのか大変である。Guadalupe
Peakなど約2時間少しののぼりをほとんどノン・ストップで登ったのにくらべると、雲泥の差で、本当に身体にこたえた。
やっと尾根に出ると、Wheeler Peakのほとんど真下のLakeから登ってきたので、Peakは目の前であった。Wheeler
Peak 13161Feet、New Mexicoの最高峰、4012メートル。頂上には何人かの人が休んでいた。ヤッタ!とうとう頂上に登りつめたという感激が、それまで苦労しただけに大きかった。眺めは最高である。アチコチに雪がべっとりと残っているAlpineの光景。目の下に横たわるWilliams
Lake, Wheeler
Peakを囲む、まわりの4000メートル級の峰々、360度の眺望を楽しみながら、いっぱい写真を撮り、頼んで自分の写真を撮ってもらった。犬が二匹、休んでいた。みなWorking
Dogsである。荷物を背中に背負って、長い距離を歩いてきたわけで、疲れたらしく、Ownerの足元でのびていた。立派なもので、うちの犬などとてもついてこれないと私は考えた。時間は丁度お昼の12時ごろであった。ゆっくりとしていたいが、アトが大変である。既に5時間歩いたわけだが、このあと、Taos
Ski Valleyまで7-8マイル歩かねばならない。”Be sure to get a very early start on this
hike. To minimize problems with storms, you ideally want to be on the summit
before noon.”とある。
私は頂上にいるみんなよりアトに来たのに、誰よりも先に下山し始めた。Williams Lakeから来たスポットにきて、自分が登ってきた道を見てみると、ものすごく急な斜面が続いていて、疲れたガクガクの足ではとても無理な様である。今度は、しっかりとしたTrailがつづいているので、朝、失敗したメイン・トレールを辿って、Valleyにつくチャンスであると考え、4000メートルの尾根伝いに、Mount
Walterに登り、そしてまた別の雪渓を用心して渡った。美しく雄大な見事な風景がつづいている。まさに最高のハイキングであった。そして、どこまでもつづいていくTrailのまわりにはツンドラのお花畑が広がって、美しい花をいっぱいつけていた。
そして、いつのまにか晴れていた山には、雲がいっぱい湧き出していた。夕立になればツンドラ帯では危険である。私は急いで森林帯に入るよう努力した。最後の雪渓をわたると森林に入り、キャンプ場があらわれた。このWheeler
Peak登山は2-3日のBackpackでヤレば最高だと書いてある。多分ソウであろう。一日で4000メートルの山に登って、15マイルも歩くというのは大変である。私はこのメイン・ルートは下り一方だろうと思っていたのに、キャンプ場を出ると、目の前に山があり、それをのぼって超えていかねばならないとわかって、全くガックリときた。空模様はあやしくなってくるし、体力は限界まで来ているし、本当にどうなることかと思ったが、ともかく、コツコツとやっていくほかないので、ただ努力して歩き続けた。ところが、この森林に入ってSki
Valleyが近づくにしたがって、道があやしくなり、どれがTrail Headにたどり着く道かわからなくなってきた。わりと広い道になったので、本道だろうと思っていると、Private Propertyのところにでてきた。そして、Trail
Headとはかなりはずれたところにあるとわかり、またまた重い足をひきずるようにして、クルマのある筈の出発点に向かった。全く、もう少し親切にTrailのサインを示してくれなければ、みんなが迷惑する。アト、何マイルとか、正しいルートの指示が出ていれば、どれだけ安心して歩けたことであろう。せっかくのすばらしい登山が、管理不充分のせいで、もう少しでおかしくなるところであった。やっとクルマに戻ると午後4時半であった。朝7時から9時間半、15マイルの登山であった。
無事下山したが、身体はクタクタであったし、クルマのハンドルを握ると、どうしたことか指までがMuscle Crampをおこしたようで、ヘンな具合である。翌日は月曜日で仕事はあるので、ともかく、エルパソまでなんとしても帰らねばならない。直ちにSki
Valleyを出発し、Rio Hondoの美しい清流を左に見ながらTaosに戻り、Taosから今度はRio Grande沿いにSanta Feに向かう事になった。このRio
Grande沿いのドライブの途中、山火事が三箇所発生していて、消防車も出動していた。一つは川沿いのドライブのスグまぎわまで燃えていて、Laneが一本になりかけていた。わたしは危うくストップになるところをうまくすり抜けて、後続のクルマがないRio
Grande沿いの道を、Santa Feに向けて走る事になった。
Santa FeにはFreewayがなく、道路は制限速度25とか35マイルで、信号が多い。従って、I-25に入るまでは、Slow
Downしてしまう。結局、Taos
Ski Valleyから約2時間かかる事になる。Santa Fe-Albuquerqueは1時間。Albuquerque-El Pasoは約4時間。私はSocorroでガソリンをいれ、夜11時半、無事エルパソに到着した。途中、Thunder
Stormの中をつっきること2回。ガソリンのためのストップ以外はNon
Stopで、Taos-El
Paso直行7時間のドライブであった。11時半、アパートの近くのApplebeeで成功祝いの食事をしようと思ったら、いつのまにかWest SideのApplebeeは24時間営業ではなくなっていて、食堂はCloseであった。仕方なく、アパートに帰って、軽く食べ、すぐ床に就いた。
アトで考えると、自分でも驚き感心するほどの強行軍であった。HolidayでもVacationでもなく、ふつうの週末をつかって、日曜日、朝7時から9時間半、15マイルのハイキングをやり終え、直ちにドライブで7時間休みなく運転して、眠くもならず、事故も起こさないで無事帰り着くことが出来た。多分、はじめて4000メートルを越える山にひとりで登頂できたという喜びが大きな感激となって全身体を包んでいたため、疲労していたにもかかわらず、眠くもならず、無事帰りつけたのであろう。このWheeler
Peak登山のおかげで、私はアメリカにはすばらしい自然がいっぱいあり、自分の体力さえ鍛えておけば、何でも可能だということを知った。
そして、このあと、Mount Taylor登山〔3450メートル〕、White Water Baldy登山〔3300メートル〕、Emory
Peak登山(Big
Bend National Park,最高峰2340メートル)と、その年のうちに、アチコチと登山をやり遂げる事になった。私の人生の中でも、忘れがたい体験となった。こうして、TexasとNew Mexicoの最高峰に登頂した私は、次の目標を、アリゾナのSan
Francisco Peaks(Humphrey Peak 12633Feet,約3850メートル)と定めた。これが、Wheeler
Peakより少し低いが、4000Feet近くを片道4.5マイルで登るので、けわしく、Strenuousである。おまけに、富士山のように、周りの山からずば抜けてそびえているため、風当たりが強い。いつやりとげられるか、不安と期待でいっぱいのところである。これはFlagstaffの近くなので、エルパソからのドライブだけで、8時間以上かかり、Taosへ行くよりは遠いので、週末だけでやりとげるのは無理なようである。
先日、Guadalupe Peakに登ったとき、頂上でGeologistsの4人連れと出遭った。リーダーのProfessorは各Stateの最高峰25登頂したということであった。その時、アリゾナのSan
Francisco Peaksの話がでた。テキサス、ニューメキシコと登れば、次にアリゾナがくるのは当然のことらしい。Wheeler Peakの経験を生かして、目標を持ち、体力を鍛えるようにするつもりである。
村田茂太郎 オリジナル執筆 1997年4月26日、Word Input 2012年7月12日
(その後、1997年7月4日、アリゾナ最高峰San Francisco
Peaks(Humphrey Peak 3850メートル登頂に成功)。)
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