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10/24/2012

小学6年生―社会科 日本の歴史 のための拙文集(13)宮本武蔵


小学6年生―社会科 日本の歴史 のための拙文集(13)宮本武蔵

宮本武蔵 をめぐって

 

 世界偉人伝39偕成社版「宮本武蔵」浅野晃 をあさひの図書から借り出して読んだ。宮本武蔵という、いろいろな意味で傑出した人間の生涯を上手にまとめあげていて、それなりに楽しめる本であったし、武蔵が単に剣の道において偉大であっただけでなく、絵画や彫刻はもちろんのこと、人間として偉大であったことが読者に伝わるように描かれていて、子供用の伝記とはいえ、さわやかな読後感を生み出してくれるものであった。小1の基本漢字以外は全部フリガナがふってあるので、ほとんど誰でも読める本であるし、ふりがなをとおして、様々な難しい漢字と親しむチャンスであり、生徒全員の一読をすすめたい。

 

 「宮本武蔵」に関しては、小説家吉川英治に名著「宮本武蔵」という大作があり、これも読める人には読んでもらいたいと思う。これは有名な佐々木小次郎との船島での決闘までなので、ふつう、そのあとのことについては、あまり知らない人が多い。それで、小山勝清という人が、「それからの武蔵」という小説を書いた。“それから”とは吉川英治の「宮本武蔵」が佐々木小次郎との決闘で終わっていることを意識して、その後の武蔵を史実を踏まえながら、娯楽小説としてまとめたもので、細川忠利とのやりとりや島原の乱、安部一族の事件、五輪書の執筆など、武蔵に関係ある史実はすべてとり扱われていた。この‘それからの武蔵」は1960年代に日本のテレビ映画で毎週30分放映され、宮本武蔵を月形龍之介が演じて、見ごたえのある、楽しい映画となっていた。この本は私の愛読書のひとつで、文庫本で5-6冊だが、わたしは既に2度読み終わり、今度また読み直そうと思っているほどである。娯楽小説のなかでも、優れたものと思う。

 

 武蔵は1584年に生まれ、1645年に亡くなったと伝えられている。丁度、秀吉による天下統一から、鎖国に入っていく頃まで、つまり豊臣から徳川への政権交代とそのための戦争(関が原の戦い、大阪冬の陣、夏の陣)と島原の乱が起きた激動期に生きたわけで、ほとんど浪人の身で無事生き延びただけでなく、様々な領域に偉大な業績をのこした、その自分の生きかたを“独行道”という19ヶ条の遺書(?)にまとめた。“我事に於いて後悔せず”という有名な言葉も、その一つである。

 

 宮本武蔵は絵画や彫刻ものこし、それらは重要文化財・国宝級の作品といわれている。そして“兵法三十五箇条”や「五輪書」を著し、思想家としても重要な位置を占めている。それほどの力量をタッチしたすべてにあらわした武蔵であるが、自分の絵や彫刻が、剣の道で到達した地点にはるかに及ばないと嘆いた。剣聖とあがめられるに至った武蔵の真の恐ろしさは、一流の人間の持つ気迫(すべてに真剣に立ち向かう)と努力で、あらゆる困難を克服し、しかも最後まで探求者であり続けたところにあるといえる。

 

1994年5月25日 執筆

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