「心霊現象の科学」をめぐって-その55 S. Ralph Harlow 「A Life after Death」(1961年)を読むーその3 Margery Crandon その1
Maurice Barbanell の「This is Spiritualism」を読んでいた時、このMargery Crandon マージャリー・クランドン のケースに出遭い、とても興味深い話なので、紹介したいと思ったが、もう少し勉強してからと思い直した。いま、このDr. Harlowの本の中で、わざわざ1章を設けてMargery Crandonについて書いてるのに接し、丁度、よい時だ、一緒に紹介しようと決めた。
Barbanell の本では、興味深い実験が述べられているが(あとで紹介予定)、この Dr. Harlowの本では、Margeryがハーバード大学医学部教授のWifeから、世界的に有名なMediumに成長するところがとらえられており、特に亡くなった兄Walterがコントロールとして大活躍するさまが面白い。
いわばSandra Gibsonのケースと同様、どのようにしてMediumは誕生するかというところがわかる形で書かれている。しかし、もちろん、面白いのは、死んだ兄がいわばコントロールとして活躍する様である。
しかし、その前に、ハーバード大学の外科の教授であったDr. L.R.G. Crandon、MargeryのHusbandがどのように変わっていったかも面白い。
Dr. CrandonはAtheist無神論者であった。Dr. HarlowがMargeryのMediumshipを介してDr. Crandonと親しくなってから、あるとき Dr. Crandonと話していた。Dr. Crandonはこういった、“I couldn’t believe. I had cut up so many dead bodies and had never found
a place where a soul might have been.” I replied, ”We don’t have souls; we are
souls, living for a time in a physical body.” And he then agreed with me. 信じられなかった、私はたくさんの遺体を解剖してきた、そして、一度もSoul魂らしきものがあるところをみつけられなかった。わたしは応えた。われわれはSoulsをもっているわけではない、われわれがSousなのだ、しばらくの間、物理的な肉体に住んでいるだけなのだ。それで、彼も私に同意した。
Dr. CrandonがまだAtheistであったとき、英国の偉大な物理学者であるSir Oliver Lodgeがアメリカを訪問して、”Life after Death” について講演した。Dr. Crandonはその講演を聞きに行った。LodgeがMan is immortal 人間は不滅だ というのを聞いて、Crandonは、はてなと疑問に思った。Lodgeは科学者として立派な人である、彼の電気の分野での発見は文明を何十年と進歩させたので、Lodgeが科学的研究でナイーヴとは思えない、しかも、そういう偉大な科学的業績を上げた人が、まだあいまいとも、信じられないともいえるSpiritの世界について自信をもって語っている、これは信じられないことである。ということで、講演のあと、個人的に会って話したいとCrandonはLodgeに伝えた。それ以来、二人はなんども会って話し合い、友達になった。Sir Oliverは、いくつかの本をよむことを提案し、Crandonは馬鹿げていると思ったが、興味もわいて読み始めた。そして、Sir Oliverが薦めた本の多くが、有名な科学者によって書かれたものであることを知った。そして、読めば読むほど、Immortalityを否定する気持ちがなくなり、無神論者であることをやめ、魂Soulの不滅を信じるようになった。そして、興味の焦点を今までのLincoln研究から、Psychic Researchに替えたのであった。(それまでは、Dr. CrandonはAbraham LincolnのFanで膨大な図書を所有して、Lincoln研究の学者としても有名であった。)
最初、MargeryはHusbandのHobby(サイキック現象への関心)を面白がっていた。彼女自身はそのようなことに全然興味がなかった。彼女自身サイキックな体験をしたことなどなかった。彼女も、富裕な彼女の家庭も、超自然現象など意に介さなかった。
一方、Dr. Crandonはサイキックのほうに深入りするばかりで、彼女や彼女の友人にそんな話ばかりするので、彼女はいらだって、よし、それでは、それがいかに馬鹿げたものであるかを見せてあげようと決心し、ボストンにある教会のMinisterとアポをとり、Minister自身がMediumということで、Sittingを約束した。それがどんなに馬鹿げたことかわかりきっていたので、自分は朝の乗馬の服装から着替えもしないで、そのまま友人とアポに出かけた。それが、Margeryの人生の一大転換点となった。
MinisterはTrance状態にはいり、二人のStrange voicesが話しかけてきた。それぞれ名前はWalterだと名乗った。ひとりはDead Uncle死んだおじ だといい、ひとりは彼女の亡くなった兄 Walter Stinson と名乗った。そこで、彼女はこれは面白い、このMediumがどうして二人のWalterの名前を知ったのか。そこで、彼女は、ひとりが自分の兄のWalterだというが、それではその証拠を示してくれと言った。そして、彼女は床の上の乗馬靴をもちあげた。
Walterが言った。私たち二人がカナダで乗馬した時、あなたがつかっていた乗馬靴がトラブルをおこさないよう希望する、と。そして、彼は、そのときに乗っていたPoniesの名前を正しく伝えた。その答えを聞いて、Margeryはびっくりした。それらは、このMinisterが絶対に知っているはずがないことだったからである。
そのあと、Walterは、自分はこの地上の人間たちにSurvivalの証拠を示すことに興味を持っている別な世界のSpiritたちのグループに属している。しかし、われわれは、科学的な線でやりたいのであって、亡くなった人のメッセージをもってくるというようなことはやりたくない。われわれはその能力を物理的な物体で示すことに熱心である。つまり、この地上に生きている人間には実行できなくて、説明もできないが、われわれには簡単にできることでこのSurvivalを証明したいといった。(Walterは生前はCivil Engineerであった。技術者であった。彼は列車の事故で、この1年前に亡くなった。)
そこで、彼は妹に友達仲間をあつめること、その友達はみな忍耐強いこと、実験の目的に対して同情的であること、そして丸いテーブルにすわって、部屋を小暗くし、手はテーブルの上において、指が軽く隣と接する形でClosed Circle 閉じた円 をつくることを求めた。
Margery はどうしてよいかわからないような状態で家に帰ったが、Husbandの Dr. CrandonはWalterの提案通りにやるようにすすめて、彼女も同意した。一週間ほど、Crandon夫婦と何人かの友人たちは暗い部屋でサークルになって、指をふれあわせて何かが起きるのを待っていたが、何も起きなかった。いつも失敗であった。一週間たった時、テーブルにTapする音がしはじめた。それからは、毎回、音は強くなり、あてにすることができるほどになった。そして、その状態が一か月ほどつづいてから、いきなりMargeryがTrance催眠状態に入り、彼女とは全く違う声が語り始めた。それは彼女の死んだ兄Walterだといった。
その夜から、Margeryと彼女のコントロールWalterのMediumshipは急速に上達し、世界中に知れ渡るようになった。何百人もの有名な心理学者や科学者、ほかの学者たちがDr. Crandonの家(ボストンにある三階建の煉瓦造りの大きな家)を訪れ、何十ケ国もの心霊現象研究学会が彼女のMediumshipを研究することになった。
Dr. Harlowは Dr. Crandonよりは14年ほどHarvardの後輩であった。ある日、Dr. Harlowは自己紹介して Dr. Crandonに接近した。彼は自分がこのサイキック・サイエンスに興味を持つようになったのは、HarvardでProfessor William James に接したからだと言った。それが、効果があったのかどうだか、ともかく、HarlowはCrandon家に招待されるようになった。これが、その後、12年にわたるMargeryとの関係の始まりであった。 Thus began twelve years of association with the famous and controversial
mediumship of Margery---one of the most intriguing, fascinating, and mysterious
events of my life. こうして、12年にわたる、有名で、とかく問題のあるMediumship を示す Margery との、私の人生で、もっとも複雑怪奇で魅力的で神秘的な事件のひとつといえた関係がはじまった。
Mediumが科学的探究の対象になるというのは大変なものだと思う。家族や友人たちと、自分で納得しながら、いろいろな超常現象があらわれるのを体験するのはいいが、科学的にということで、参加したすべての研究者を納得させるために、Mediumやその関係者がインチキをしないように、まず、女性のMediumの場合、女ドクターがMediumの身体の隅々まで身体検査をし、口には水またはMarbleをくわえさせられ、ゆかたのようなものをはおっただけで、個室に入れられ、その出口には本をたくさん積み上げて・・・という具合で、いわば、こういう事前の準備を何百回となくやらされるのは、たまらないことであったろうと思う。科学者は科学という名のもとに何でもやれると思ういやらしさがある。
こういうひどい人権無視のような状態で科学的観察を行わねばならないというのであれば、私なら、自分にMediumの才能があらわれても、大騒ぎしないで、家族・友人との間で、超常現象があらわれるのを楽しむだけにとどめるだろう。ひどいものである。それでいて、納得せず、解明もできず、不思議は不思議でとどまっているのだから、科学者というのも、特権を利用するだけの、あつかましい、ただの人間であるといえる。本物の場合はホンモノだとわかっただけで、超常現象がどうしておこるかは解明されなかったのだから。ただ、インチキかホンモノかだけの確認に終わったわけだ。Mediumとその周辺の人は、科学者から本物ですと太鼓判を押されなくても、ホンモノであることはわかりきったことであったろう。口に水またはMarbleをくわえさせられて、30分や1-2時間も、その状態でいなければならなかったら、まさに拷問である。唾を嚥下することすらできないのだから。
そして、Margeryの場合、このインチキ騒動も大がかりなものになったわけで、どこか研究のポイントがずれていると私は思う。たとえば、あとで紹介する予定の、Walterの指の指紋に関して、最初は本人と合致したといっておきながら、あとで間違っていた、別な人間の指紋であったとなって、Walterはうそをついた、インチキであったと大騒ぎをした。Walter本人の指紋かどうかはともかく、MargeryのMediumshipによって、霊界の兄Walterにコンタクトでき、そのうえでいろいろな超常現象をみせてもらっているわけで、まず、Life after Death が Walterのいうように、証明されているはずなのに、それは忘れて、指紋問題から、Walterはインチキ、Margeryはインチキという発想の展開を、科学者と名乗る人間たちが行ったというのが理解できないほどで、これは、赤ん坊を洗った産湯をすてるときに、同時に赤ん坊も捨てたということであると思う。まったく、有名な学者というのは、あてにならないということを自ら証明しているような態度であった。指紋に問題があれば、どういうふうにしてとったのかと訊ねてゆかねばならないのに、そういう探求をなおざりにして、インチキで済ませる科学者というのは、おめでたいできだと私は思う。
そして、Margeryの場合、このインチキ騒動も大がかりなものになったわけで、どこか研究のポイントがずれていると私は思う。たとえば、あとで紹介する予定の、Walterの指の指紋に関して、最初は本人と合致したといっておきながら、あとで間違っていた、別な人間の指紋であったとなって、Walterはうそをついた、インチキであったと大騒ぎをした。Walter本人の指紋かどうかはともかく、MargeryのMediumshipによって、霊界の兄Walterにコンタクトでき、そのうえでいろいろな超常現象をみせてもらっているわけで、まず、Life after Death が Walterのいうように、証明されているはずなのに、それは忘れて、指紋問題から、Walterはインチキ、Margeryはインチキという発想の展開を、科学者と名乗る人間たちが行ったというのが理解できないほどで、これは、赤ん坊を洗った産湯をすてるときに、同時に赤ん坊も捨てたということであると思う。まったく、有名な学者というのは、あてにならないということを自ら証明しているような態度であった。指紋に問題があれば、どういうふうにしてとったのかと訊ねてゆかねばならないのに、そういう探求をなおざりにして、インチキで済ませる科学者というのは、おめでたいできだと私は思う。
ということで、大学教授の妻Margery Crandonは20世紀前半を代表するMediumのひとりとして、特にコントロールにあたる死んだ兄Walterが技術系出身であったこともあって、単なる、死者から親族へのメッセンジャーではなく、地上の科学では解明できないような物理現象を実演して、“the greatest psychic exhibit in history” 歴史上もっとも偉大なサイキック現象の展開 を演じることによって、Life after Deathを証明しようとしたのであった。
サイキック現象の研究家は、自分が死んだのち、メッセージを送って、死は別の次元への移行に過ぎないということを証明しようとするのだが、地上の科学者はSuper-ESPで、すべてを片付けて、科学的に証明されたとはみなさないため、コナン・ドイルにしてもイギリスの心霊学会設立者 Myers たちにしても、はじめは、ともかく、Mediumを探して、あの世からコンタクトしようとするのだが、すぐにあきらめて、もう地上の連中にかかわるのは馬鹿らしいという結論に達したに違いない。
どこかに何かを隠して、自殺して、あの世からコンタクトして、あの世の存在を証明しようとしたひとがいるが、全く無駄な試みであった。見つかっても、Super-ESPで、見つかったということで、死後の世界の証明とみなされないのだから、本当に無駄な死に方ということになる。熱心な探求者には、その辺のことをよく知っておいてもらわねばならない。教師の仕事も大変である。自分の教科以外は無関心でいたため、死なせてしまったということが過去に起きたわけだから。
ここで、Dr. Harlowが12年にわたるMargeryとのつきあいに関して、Controversialとか most intriguing とか述べていたことについて、追加説明しておこう。
資料は「Encyclopedia of Occultism & Parapsychology」 からである。まず、Mina Stinson Crandonが正式の名前で (1888-1941)となっている。1923年にMediumship が現れてから1924,1925年が大活躍した年で、有名な学者たちによって調べられた。その結果もさまざまで、自分の意見はNo-Commentとした有名学者もたくさんいて、よくわからなかったようである。自分の名前を大事にして、慎重を期したというところらしい。1925年にたくさんのSittingをもったDr. Dingwallは
“phenomena occurred hitherto unrecorded in mediumistic history…the mediumship remains one of the most remarkable in the history of psychical research”。
Dr. DingwallはこのMargeryが起こしたサイキック現象はこれまで記録されたことがないようなものであり、心霊現象の科学の探求史上もっとも注目に値するものであり続けるだろう、という。
“phenomena occurred hitherto unrecorded in mediumistic history…the mediumship remains one of the most remarkable in the history of psychical research”。
Dr. DingwallはこのMargeryが起こしたサイキック現象はこれまで記録されたことがないようなものであり、心霊現象の科学の探求史上もっとも注目に値するものであり続けるだろう、という。
ただし、そのあとで、次のようにも言う。
He concluded that the
mediumship “may be classed with those of Home, Moses and Paladino as showing
the extreme difficulty of reaching finality in conclusions notwithstanding the
time and attention directed to the investigation of them.”
彼女のMediumshipは19世紀に高名であった、Douglas Dunglas Home や Stainton Moses、Eusapia Palladinoと同様、結論を導くのは極端なまでに困難なケースの一つといえるであろう。その研究のために費やした時間と集中的研究が膨大なものであったにもかかわらず。
彼女のMediumshipは19世紀に高名であった、Douglas Dunglas Home や Stainton Moses、Eusapia Palladinoと同様、結論を導くのは極端なまでに困難なケースの一つといえるであろう。その研究のために費やした時間と集中的研究が膨大なものであったにもかかわらず。
ということで、結局は、何もわからなかったという。Controversialなわけである。慎重を期した実験であったはずであるにもかかわらず、そういうことになって、インチキだとまで非難されれば、夫 Dr. Crandonが反論を発表したのもわかる気がする。
科学者とは、科学という迷信にとらわれて、判断力をなくした人を指すのかもしれないと思えてくるほどである。
Margery Crandon その2 につづく。
村田茂太郎 2013年1月16日、21日
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