「心霊現象の科学」をめぐって-その57 S. Ralph Harlow 「A Life after Death」(1961年)を読むーその3 Margery Crandon その3
Margery CrandonのMediumshipの続きである。前回はMargeryのSpirit Controlにあたる亡き兄のWalterが指紋をとったり、Independent Voice を演じたり、生前と同じ個性を発揮するところを紹介した。
以下は同じ本からWalterがCross Correspondenceを演じたところを簡単に紹介し、Barbanellの本の中にあるWalterの演出を紹介することにする。
Perhaps even more remarkable than Walter's ability to produce
fingerprints was his facility at what is called cross correspondence by
researchers in psychic phenomena. In this spectacular phenomenon, an experience
repeated in many parts of the world through many different psychic mediums, a
so-called “spirit” communicates simultaneously with several mediums separated
by long distances, sometimes hundreds miles. He chops his message into as many
parts as there are receivers or mediums, and sends one part to each of them.
When the portions are joined they make the complete message. In essence this is
thought transference, but instead of being between humans it is between a
spirit and several humans.
Walterが指紋を生み出したという能力よりも、より際立ったと思われるものは、いわゆるサイキック・サイエンスの研究者たちがクロス・交信 Cross Correspondenceと呼ぶものである。あるSpirit(この場合、Walter)が、世界中に散らばったMediumに、個別にメッセージの断片を送り、それを合成すると意味のある文面になるというもので、基本的にはThought Transference(思考の伝達)と同じようなものだが、この場合は、生きている人間同士ではなくて、Spiritと人間たちとの交信という違いがある。
――― ――― ―――
BostonとNiagaraとNew York CityでこのCross Correspondenceが実行され、
1 WalterはBoston(Margery)には ”11X2” と “kick a dead”、
2 New York Cityではサイキック George Valentineが “equals 2” と “No one ever stops to”
3 Niagara Falls では Medium Dr. Henry Hardwicke が、“2”と “horse”
を受け取った。合成すると、“11X2equals 22” と “No one ever stops to kick a dead horse.”という文言で、これはWalterが生前、しょっちゅう口にしていた言葉であった。
――― ――― ―――
ここでは、詳細は省略する。Walterはもちろん、上記のように成功した。これは、WalterというSpiritがMargeryというMediumとはIndependent独立に存在するという証明になるはずで(つまりWalterはMargeryのSubconscious潜在意識が生み出したものではないということ、WalterがほかのMediumたちにもコンタクトできたということ)、Hereward Carringtonなら、これで、Survival after Deathは証明されたといえたはずであり(彼はMedium Eileen Garrettに接して、彼女のコントロールふたりがIndependentに存在するのを確認できて、Life after Deathを確信したという)、前回の、Mediumの声ではなく、WalterというSpiritの声をきいただけで、Nandor FodorならLife After Deathは証明されたと、自分で納得いったであろう(Fodorの場合は父親の声を、あるMediumのTrumpet Séanceで聞いて、確信を持ったという)。いわゆる科学者が納得したかどうかは別問題で、これは科学者が死んで初めて自分で納得するものであると思う。
さて、このDr. Harlowの本ではないが、すでに何度も紹介してきたMaurice Barbanellの「This is Spiritualism」から、Margery Crandonに関する面白い実験を引用しておきたい。これは、本当なら、まさに別の次元でしか起きない現象と思われる。Apportもそうであるが。
Barbanellの本の第14章 Defying the Law of
Gravity (重力に挑む)と題されたところである。最初のところでLevitation(テーブルなどが持ち上がる現象)を扱っている。(省略)。
この中で、特に、BarbanellはPhysical物理的なサイキック現象が起きるには、特に、Mediumのガイド、Spirit Control と好意的な関係を持っていることが大事だといっている。今では、これはあたりまえになっているはずであるが、そういう量子力学でハイゼンベルクのいう“不確定性原理”(Uncertainty Principle)が意味するような、“参加者の姿勢が実験結果に影響をあたえる”ということが、19世紀から20世紀のサイキック・サイエンスの中のMediumを使った実験ではよくわかっていなかったため、思ったような成果がでないこともあり、インチキめいたこともあらわれたわけであった。BarbanellはたくさんのSéanceにたちあったので、その辺のことはよくわかっていたようである。
The secret of success at séance for physical phenomena is to win the co-operation
of the guides who are able to produce them. When this is secured, and they know
that you can be trusted, then stage is set for success. That is one reason why
sympathetic investigations fare better than cold-blooded researchers, who
either inhibit the phenomena by their frozen attitude, or render the result
nugatory by making it obvious that they regard the medium as a trickster whom
they are going to expose. This failure to approach the medium as a human being
is the reason why much of what is called psychical research becomes a blind
alley. Mediumship is sensitiveness. The possessor of psychic powers feels more
intently what others might easily shrug off. Thus the “convince-me-if-you-can”
attitude, even when it is honest, is not calculated to produce phenomena that
the inquirer wants to see. It is a human problem which must be faced.
物理的な現象が期待されるSéanceが成功するかどうかは、その現象を生み出す中心的役割を果たすガイドの協力を得ることが大事である。いい関係が保たれると、Sitterたちが好意的であると感じた場面がセットされ、ほぼ成功はまちがいない。これが、同情的な探求者が冷血な探求者よりも、よい結果をうむ理由である。冷血な探求者とは、インチキをあばいてやろうとか、成功などするものか、そんなことはできっこないとおもっているような連中で、かれらを相手にしても成功しない、つまり期待される結果は出ないということである。サイキックな人は、普通の人以上に、そういう態度に敏感なので、“やあ、おれを納得させるような結果を生み出して見せてくれ”というような態度でいると、それが、正直でもNegativeな結果しか現れないということである。向き合わねばならないのは人間の問題である。
Photographic demonstrations of the “impossible” were also obtained at séance
with Margery Crandon of Boston, U.S.A. One of the results was called “the
greatest psychic exhibit in history”. It proved the passage of matter through
matter.
Margery CrandonのSéanceで“不可能”が実現されたという証拠写真もある。これは、サイキックの能力の歴史上もっとも偉大な表示といわれた。物体が物体を通過するということが示されたわけだ。
The experiments began at the suggestion of William H. Button, who was
then president of the American Society for Psychical Research. Button, a keen
researcher, was also a prominent corporation lawyer. His legal mind had
pondered the problem of producing evidence that would be in itself scientific
proof of spirit power. Finally, an ingenious idea occurred to him, one that he
propounded to Walter, Margery’s dead brother, who acted as her guide.
この実験はアメリカ心霊学協会のPresidentであったMr. Buttonの提案ではじまった。彼はなかなか鋭い探求家で同時に会社の弁護士でもあった。かれは弁護士的センスから証拠ということを重んじ、Spirit Powerを科学的に証明するような実験を探していて、あるとき、素晴らしいアイデアがうかび、それをMargeryのガイドにあたるWalterに打診した。
If, Button suggested, two solid wooden rings could be interlocked at a séance,
a feat that is normally impossible, they would be permanent evidence that could
not be explained away, and would also reveal the working of a supernormal
force. Walter promised to co-operate. The solid wooden rings were obtained at
the next séance. In a few minutes they were joined, one inside the other.
Button was delighted that he asked Walter to repeat the experiment, which he
did.
Buttonの提案は、ふたつの固形木製のリングをSéanceで絡み合わせることができるか、ふつうは当然むりなのだが、もしできれば、Supernormal Power 超自然の力が働いていることの恒久的な証明になるだろうというものであった。Walterは協力すると約束した。次回のSéanceで、固形の木製リングが用意された。2-3分したら、ふたつのリングはからみあわされた。Buttonは喜んで、もう一回やってもらえるかとたずね、Walterはまたやってみせた。
木製の二つのリングをからみあわせることに成功したSitterたちは、元気づいて、このことをイギリスのSir Oliver Lodgeに報告した。Sir Oliverは、さらに厳しい条件で実験することを提案し、おなじ木ではなく、違う材質の木をつかってみたらどうかといい、自分でTeakとHard Pineを選んで写真に撮ったうえで、Bostonに送った。
また、Walterにできるかと訊ね、彼は実行した。結果は上述した“the greatest psychic exhibit in history” といわれ、産物はガラスのケースの中にしまわれた。参加者はほかにもいっぱい自分が持参したもので作ってもらった。
これには事後談がある。
Then a series of strange events occurred. Whether these were due to
joking on Walter’s part or not I cannot say, but it seemed as if he were
playing games with the interlocked rings. Sometimes, in the séance room,
sitters would see the rings looking as though parts of them had been eaten
away. At other times Margery Crandon saw sawdust lying on the table and part of
the pairs missing. Then the rings would be found broken or separated. Finally
there remained only the exhibit in the glass case. …
それから、いくつかの不思議なことが引き起った。それはWalterの冗談のせいかどうか、私には何とも言えない。しかし、まるで、Walterがこのからみあったリングとゲームを演じているように思えるものであった。時々、Seanceの部屋で、Sitterたちはリングがまるで、一部分かじりとったようになっているのをみつけた。また別な時には、Margery Crandonはテーブルの上に鋸の屑がちらばっていて、リングが一部なくなっているのを見つけた。それから、ほかのリングもこわれたり、わかれたりして、結局、ガラス・ケースのなかの見せ物だけになった。
ところが、この唯一の証拠品も、ある日、Buttonが人に見せようとしたら、リングの一つがこわれているのを見つけた。そこで、ButtonはLaw of Frustrationというのがあるのではないか、と考え出した。
“Walter has given us proof, time and time again, that this final evidence
could be possible,” he said, “but then something always happens to take it
away. It makes me wonder.” Is there such a law of frustration? I do not know.
Walterは何度も何度も証拠をみせてくれた、この最後の証拠も可能であった、ところが、いつもなにかが起きて、その証拠をとりあげてしまう、わたしは、どうも、フラストレーションの法則といったものがあるのではないかと思うほどだ、とButtonは言った。わたし(Barbanell)は知らない。
――― ――― ―――
わたくし(Murata)が思うところ、どうもInvestigatorたちは性急すぎて、超能力だから無理なことでもできると判断し、無理を要求する。霊界の指導者は、協力的にやるが、無理は無理なので、一時的に無理は可能であったように見えても、すぐに無理のひずみがあらわれてきて、少し時間がたてば、破壊されていくのではないか。どうも、サイキック・サイエンスの探求家たちは、科学者の名のもとに、行うことは幼稚な子供の遊びばかりしていたように思える。こんなばかげた遊びにつき合わされたMediumのガイドもMediumも大変であったろう。
S. Ralph Harlow つづく。
村田茂太郎 2013年1月18日、23日
No comments:
Post a Comment