「心霊現象の科学」をめぐって-その56 S. Ralph Harlow 「A Life after Death」(1961年)を読むーその3 Margery Crandon その2
MargeryのMediumshipは亡くなった兄Walterがコントロールとなって演出された。
Dr. HarlowがSittingに参加しはじめたころは、まだMargeryのMediumshipも初期の段階で、Walterの声もかすかであったり、その演出も限定されたものであったようだが、そのうちにWalterの声が、Margeryの声帯を使って発せられ、さらにそれがすすんで、部屋のどこからでも発せられたように聞こえるほどになった。MargeryというMediumの身体に依存しなくなったわけである。これは、サイキック現象で Independent Voice といわれている。“独立した声”なわけだ。
そこで、私たちのひとりが、Walterに彼の声について、質問した。
“How can I talk to you?” he laughed. “Simple, I take ectoplasm from
Margery while she is in trance. I make a voice box out of it and use it to
create sound vibrations. Your own voice box does the same thing; so does a
radio speaker. But while you use your own bodies to create your voices, or
metal and paper and electricity in a radio, I use Margery’s ectoplasm and my
own vibrations.”
どうして、話せるんだって?彼は笑って答えた。簡単さ、私はMargeryから彼女がTrance状態に入ったときEctoplasmをとる。それでVoice Boxをつくるわけさ。それで音の振動をこしらえるてわけさ。あなたがたの発声も同じようなものさ。ラジオのスピーカーも。違うところは、あなた方は自分の肉体で発声するのにたいし、私はMargeryのEctoplasmとわたしのVibrationを利用するということだよ。
Ectoplasm, we all knew, is filmy, plastic material which emerges at times
from the mouth, nose, ears, or other orifices of a medium in trance and is able
to take form and to exert physical pressure. I have seen it many times,
sometimes as a solid substance and at other times as a vapor. Before the medium
comes out of a trance, the ectoplasm returns to the medium’s body.
Ectoplasmがフィルム状でプラスチックのような物質であることは我々みんな知っていた。それは、Trance状態に入ったMediumの口、鼻、耳その他の穴から出てくるもので、形を成したり、物理的な圧力を生み出したりできるものである。私は自分で何度も見たし、時にそれは固形をなし、時に蒸気のようなものであった。MediumがTrance状態から目覚めるまえに、EctoplasmはMediumの身体にもどる。
Walter frequently utilized the ectoplasm from Margery’s body, and some of
his demonstrations were astonishing. One night two professors from the faculty
of the Massachusetts Institute of Technology arrived with their arms full of
equipment. One carried a delicate chemist’s scales in a glass enclosed cabinet
which was capable of being locked. The other one carried two cameras, one with
a conventional glass lens, the other with a quartz lens.
WalterはしばしばMargeryの身体から出てきたEctoplasmを利用して、いくつかのデモンストレーションで私たちをびっくりさせた。ある夜、MITの二人の教授が両手に器具を抱えて、家にやってきた。ひとりは化学でつかう精密な秤をもち、それはガラスのケージに入っていて、ロックできるものであった。ひとりはカメラを二台用意してきた、ひとつは普通のレンズ、ひとつは水晶を使ったレンズのカメラであった。
“Well,” he said, ”you want a new trick performed tonight.” One of the MIT
scientists said, ”What do you think you can do?” And in the dim light of the
small red bulb Walter said, “I’ll make an ectoplasmic hand and I’ll move your
scalepans up and down while the cabinet is still locked. And you can take
pictures with those two cameras you brought if you like.”
「さて、あなた方は今夜は新しいTrickをみせてほしいわけだ。」MITの科学者は「どんなことができる?」とたずねた。Walterは小さな赤いライトがついた薄暗がりのなかで、「よし、Ectoplasmで手を作り、Cabinetがロックされたままで、なかの天秤の皿を上下に動かして見せよう。そして、希望するなら、持ってきた二つのカメラで写真をとればよい」と応えた。
Usually when Walter formed an ectoplasmic hand we would see a thin vapor
emerge from Margery’s nose and mouth. It would soon penetrate the glass wall of
cabinet and come to rest on the table top. Gradually it would become less
ethereal, more solid, and then at its end would be formed a tiny, perfect human
hand, even to fingernails. It was the size of a baby’s hand. But tonight we saw
nothing.
ふつう、WalterがEctoplasmで手をつくるとき、我々はMargeryの鼻や口からうすい蒸気がでてくるのを見るのがつねであった。それは、すぐにキャビネのガラスの壁を通過して、テーブルの上でとまる。そして徐々にベール状から固形になり、最終的には小さいが完全な人間の手ができあがり、爪までついている。サイズはベイビーの手のようである。しかし、今夜は、何も見えなかった。
We waited and finally I asked, “Walter, can you tip one scalepan down
until it touches the bottom of the cabinet?” “Certainly,” Walter’s voice
replied.
Now in the dim red light we could see
the left scalepan begin to dip and its companion rise from the point of
equilibrium. We could see nothing else, no weights, no ectoplasm, no possible
source of physical energy. Two flash cameras exploded in the darkness as the
visiting professors took their pictures.
我々はしばらく待っていて、それから最後に私が問いかけた。「Walter, あなたは一つの天秤の皿を下げてキャビネの底につけることができるかい?」。Walterの声が、「もちろん」と応えた。いまや、薄暗い赤い光の中で、皿の一つが下がり始め、もう一方が平衡状態からあがるのが見えた。われわれにはおもりも、Ectoplasmも、物理的なエネルギーのなんらかの形も、何も見えなかった。二台のカメラのフラッシュが閃光した。ふたりの教授が写真におさめたのだ。
そのあとも、Walterは私の求めに応じて、秤を動かした。皿にキー・リングやペンナイフをのせてロックし、一方が下がって底についている状態で、Walterに平衡にするように要求して、彼はそれを果たした。MITのProfessorたちは研究室に帰り、写真を現像した。普通のカメラでうつしたものは、秤の一方がさがっているだけで、なにも特にうつっていなかったが、水晶レンズのカメラはEctoplasmのHandがもう一方の皿をおさえて、平衡状態にしているのがうつっていた。このたびのEctoplasmic Handは目でも見えなかったし、普通のレンズではうつらなかったわけだが、ちゃんと、Handは作られていたわけだ。
Walterは生きているときも技術者の実務的な精神を持ち、小憎らしいユーモアのセンスをもっていたが、このMargeryが呼び出したWalterも全く同じであった。Dr. Harlowの友人であるドクターはイライラして、落ち着きのないタイプであったので、WalterはそのドクターをFlea蚤と呼んだほどである。自分、Dr. Harlowは彼が呼ぶときはParsonであった。He was a most human and most humorous spirit. 彼はもっとも人間らしく、もっともユーモアのわかるSpirit霊であった。このことは、ある種の心理学者がいうような、脳が機能しなくなったら(死んだら)no survival of personality 死んだら個性も何もなくなる というのが、まちがっていることを証明している。
Walter seemed proud that he could produce phenomena that could not be
explained by any known natural causes. He seemed delighted that his
accomplishment confounded some of the world’s most alert scientists; … Often he
emphasized that his one main interest, similar to that of those “working with
me on this side,” was to give irrefutable evidence of survival in scientifically
controlled experiments.
Walterは自然の理由では今まで説明できなかったような現象を生み出すのを得意としていた。彼は自分のやったことが、世界でももっとも警戒している科学者たちを納得させたことを喜びとしていたようだ。・・・ 彼はしばしば強調していったことだが、彼の主な関心は、こちら側で自分と同じようなことをしている人たちと似たようなものだが、科学的にコントロールされた状態で、Survivalの証拠を疑う余地なく示すことだと。
…
Walter scorned what he apparently considered amateur, unsophisticated,
and unscientific evidence of survival- the delivering of messages from departed
friends.
Walterは、アマチュアで、幼稚で、非科学的なSurvivalの証明とみなしていたものについては軽蔑しているようであった、―つまり別れた友達からのメッセージを伝達する役目というのを。
Walterはメッセンジャー・ボーイの仕事は軽蔑していたようであるが、頼めば、引き受けてくれたこともある。そして、Dr. Harlowは死んだ妹Annaをつれてきてもらって、彼は話すことができたのであった。
I was fortunate to be present one night
when Walter demonstrated one of his most unusual experiments. This was the
production of his own thumbprint in dental wax, and over a period of years
Walter produced more than a hundred prints. It started one night when one of the most
persistent investigators of the Margery mediumship asked Walter if he could
leave behind him some physical evidence of his identity. “Can you make fingerprints?”
he asked. “I don’t know,” Walter said, with some doubt in his voice. “But let’s
try.”
私は幸運にもWalterがある夜、とても珍しい実験を演ずる場面を目撃することができた。これは自分の親指の指紋を歯科用のWaxをつかってつくりだすというもので、何年かにわたって、Walterは百を数える指紋をうみだしたのであった。それは、ある夜、MargeryのMediumshipについて執拗な探求者がWalterに彼の存在証明を物理的な形で残すことができるかを訊ねたわけで、「指紋をつくれますか?」という質問に対して、「わからない、やってみよう」と自信がないようすで応えたわけであった。
Subsequently, using only dental wax, a cloth, and two pans of water-one
boiling and one cold-fingerprints were produced with startling regularity, …
They were pressed into the hot-water-softened slabs of wax, and were both
positive and negative; sometimes they were mirror prints. … He had complained
that the hot water was harming the ectoplasmic hand, and had suggested some
other method of removing the wax slab from the pan.
つづいて、歯科のWaxだけをつかい、布と、熱い湯と冷たい湯を用意し、ということで、恒常的に指紋は生み出されるようになった。・・・後ほど、彼は熱い湯はEctoplasmを痛めると訴え、彼の提案でPanからのWaxを取り除くのに別の方法を用いるようになった。
I heard movement on the table, as he made his thumbprint in the soft wax,
and then a splashing sound as he slid the slab into the cold water to set the
imprint. He said, “All right, turn on the lights. I think we have a good print
tonight.” And we did – a perfect imprint of a human thumb.
私はテーブル上での動きを感じた。彼が親指の指紋をソフト・ワックスにつくり、冷たい水につけて刻印をセットするために塊を滑らせる音を聞いた。「OK, 電気をつけていいよ、今夜はとても立派なものができたよ」と彼は言い、実際、人間の親指の完璧な刻印・指紋がができていた。
そして、アメリカ心霊学会のOfficerが調べた結果、Walter Stinsonの生前の指紋とまったく同じであった。
この、Dr. Harlowが目撃した場合は、Walterはまじめに、本格的に自分の指紋をつくったようだ。この作業が100回近くつづくと、どうでもよくなったのではないだろうか。あるとき、自分の指紋だとつくった指紋は別の人間のものであったということで、Walterの信用性がいっぺんに崩れてしまった。インチキをしても、では、どうやって、ほかの人の指紋を作ったのかを調べれば、まさに科学的にいろいろなことがわかったにちがいないが、どうしたことか、インチキということにこだわって、自称科学者たちは産湯と一緒に赤ん坊も捨て去ったもようである。もう少し、まともな、建設的な、本当の科学者の精神を持った人間がSurvival after Death を研究していれば、 また違った結果が出たであろう。科学の進歩がおくれたのも、理由のあることであった。
まあ、このMediumが、科学実験材料になるというのも大変なことだと思う。
ここで現れた、Mediumの亡くなった兄Walterというのが、非常な個性を発揮していろいろすばらしい実験を示してくれる、それだけでも、充分に Survival after Deathを示しているように思われるが、どうであろうか。
Medium-Margery つづく。
村田茂太郎 2013年1月17日、22日
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