「心霊現象の科学」をめぐってーその51 Reincarnation 転生の研究 「Lifetimes」 by Frederick Lenz Ph.D. を読む
私が Reincarnation 転生 に関する本をたくさん読んだのは、もう、今から35年ほど前の数年である。
今はどうだか知らないが、当時、1976年ごろから特に1980年ごろにかけて、盛んに Reincarnation に関する本がでまわったように思う。
ほとんどが Hypnosis による Past Life のメモリーということで、Past Life Therapy とかに関する本がたくさん出た。
この Hypnosis による Reincarnation の研究の嚆矢は有名な Morey Bernstein の「The Search for Bridey Murphy」であったにちがいない。1956年に出版されたこの本は、コロラドの家庭の主婦が催眠術で過去のLifeにもどり、18世紀のアイルランドでのLifeを語って、一躍世界的に有名になり、その信憑性をめぐって、それぞれ専門の学者たちまで論じ合ったものであった。
1976年以降にこの Reincarnation の研究がたくさん出回るようになったのは、きっと、Elizabeth Kubra Ross と Raymond Moody の「臨死体験」の研究が引き金になったのではないだろうか。臨死体験 Near death experience と転生 Reincarnation とは直接には関係がないが、この“Life after Life” があることになれば、“Life before Life” の可能性もあり、それは Reincarnation にも関係するからである。
1978年には Helen Wambach Ph.D. の 「Reliving Past Lives」、Dr. Edith Fiore の 「You have been here before」、Morris Netherton Ph.D.とNancy Shiffrinの 「Past Lives Therapy」 が出版された。ドクターではないがこの Parapsychology の Field で一般向けの啓蒙書をたくさん書いていた Brad Steiger も 「You will live again」 という本を同じ年に出版した。
この Reincarnation ブームが起きるずっと前から、この Brad Steiger は 「The enigma of Reincarnation」を1967年に出版し、Ghost Hunterで有名な Hans Holzer は 「Born Again」を1970年に出版していた。どれも Hypnosis をつかっての話である。
ほかに Journalist の Jess Stearn が「The search for the girl with the blue eyes」という本を1968年に、Jeffrey Iverson が「More lives than one?」を1976年に、Reverend Carroll E. Jay が「Gretchen, I am」を1977年に、それぞれ Hypnosis による過去のLives の記憶とその検証のこころみの本を出版している。
1979年には Dr. H.N. Banerjee が 「The once and future life」を発表した。
Morey Bernstein の前に、Gina Cerminara Ph.D. (1914-1984)はVirginia Beach のサイキック Edgar Cayce のData Filesの研究から 「Many Mansions」(1950年), 「The World Within」(1957年)、「Many lives, many loves」 (1963年)など Reincarnation をめぐる研究を発表した。
したがって、Reincarnation の研究はもうすでに50年以上にわたる歴史があるわけである。しかし、これはアメリカ、ヨーロッパなど西欧世界での研究の話である。仏教やヒンヅー教、チベットその他、アジア世界では Reincarnation はめずらしいことではなく、チベットのダライ・ラマなどは伝統的にその転生の証明としているようなもので、私の持っている、ある Reincarnation の本には、ダライ・ラマが序文を寄せているほどである。
Frederick Lenz Ph.D. (1950-1998) の「Lifetimes」(1979年)も Reincarnation の研究書であるが、先にあげた Hypnosis を中心にした Reincarnation の研究とは少し異なる。
Reincarnationの研究は大きく分けて三種類あり、ひとつは Dr. Ian Stevenson (1918-2007) の研究で有名な、過去の記憶をもつという小さな子供を直接調べるケースで、これはインドその他のアジアの子供を中心とした研究である。代表作は「20cases suggestive of reincarnation」(1966年) by Dr. Ian Stevenson。Stevenson は、あくまでも Suggestive であって、確実に Reincarnation が立証できたとは言っていない。
二つ目は非常にポピュラーになった上記Hypnosisによるもの。三つ目は、夢とか、ある場所、ある人など、特別な環境(Altered states of consciousness)での Spontaneous 突発的に思い出して、過去の Lives がよみがえってくるというケース。
この Hypnosis による Reincarnation の研究も、実際自分がやってみて、実感として納得しないと、まるでFictionを読んでいるようなものである。うそだとは言わないが、そんなに、簡単に、自分の何代も前の様々な Life が鮮やかによみがえってくるものだろうかという疑問はある。これも、Medium 体験と同じで、自分が Hypnosis を、すぐれた専門家にやってもらって、テープをして自分で確認する以外に納得する道はないようである。
Frederick Lenz Ph.D.は、専門は哲学で、アメリカの大学の哲学の教授である。東洋の哲学に興味を持ち研究したことが Reincarnation の研究に導いたのか、彼がとった方法は子供の記憶を探る方法でもなく、Hypnosisでもなく、アンケートを出して、一般からある種のデーターを集めることであった。ある種のデーターとは、Reincarnation の記憶の体験を、それ以外の、夢で、或いは、ある人と会って、ある場所に行って、といったSpontaneous 突発的、デジャー・ビュー的な体験で Reincarnation を体験したと信じる人のデーターをあつめて、たくさんの中から、127人のデーターが真面目なものであると判断し、彼の信じる方法で分類し、整理し、哲学的に考察したものである。それには、彼が勉強したはずの「Tibetan book of the dead」(チベットの死者の書)が大いに役に立ったようである。つまり、Reincarnation の途中で、死んでから生まれ変わるまでに、この「チベットの死者の書」で記述されたとほとんど同じコース(Vital World, Mental World, Psychic World, Soul’s World)をSoul が体験するということがわかったという。そして、この127人は一度も「チベットの死者の書」を読んだことはなく、Reincarnation を体験してから、この本を勉強した人が三人ほどいるだけということで、いっそう、その死後の遍歴の信憑性が高まるというわけである。
「Lifetimes」は“The accounts of Reincarnation” というサブ・タイトルがついている。この研究はともかく、Hypnosis とちがい、もしかして、一般の人がデジャー・ビュー経験などから、Reincarnation を思い出すのではないかということで、Hypnosis のドクターを訪れなくても Reincarnation らしきものを体験している人がいる可能性はあるというわけである。
また、すでにブログ“Medium の誕生”で述べた Sandra Gibson Ph.D. (Beyond the Body) も Reincarnation をたくさん体験しているというわけであるが、彼女もまず最初は、Vividな夢で過去のLivesを何度も体験し、ヨーロッパ旅行でその前世の体験を事実と確認するというような形で Reincarnation 探求が進化し、Hypnosis による Past Therapy へとはいって行ったわけである。彼女なら、この夢の段階で Dr. Lenz の要求に応じことはできたわけである。
このLenzの本を読んで感心するのは、みな、まるで創作したようなVividなイメージの前世の体験を記述していることである。普通の夢とは違う、あざやかな体験であったから、いつまでも記憶に残ったということはいえるであろう。
このLenzの本によると、このReincarnationの記憶が現れる前にいくつかの顕著な現象があらわれる。The Sound, Feeling of Weightlessness, Seeing Colors, Vibrations, Feeling of Well-being, Knowing without thinking, The Movie, Full Participation などは、ほとんどすべての Reincarnation 記憶体験者が体験したという。大きな音、重さを感じなくなる、鮮やかな色が目につく、すべてが振動する、Happyな感覚を覚える、考えなくてもわかってしまう、ムービーを見ているように過去が再現する、ただの観客でなく同時に体験している当人でもある などなど。
この本は、とても面白く、ある意味では、チベットの「死者の書」を自分で読むかわりに、そのエッセンスを要領よく書いたものとして、読んでおくと、もしかして、死後“無”でなくて、“Life after Death” があれば、Soul が迷わなくて済むようなものである。
サイキック研究家であった D. Scott Rogo は「The Search for Yesterday」( Critical Examination of the Evidence for Reincarnation)という本(1985年出版)の最後の参考文献のところで、Dr. Lenzのこの本について、こう書いている。
“This book takes a refreshing look at cases of spontaneous past-life
recall. The author feels that the case follow a predictable pattern, although research
conducted by the present author did not bear it. The case material is
provocative, nonetheless.”
「この本は過去のLifeを突発的に思い出したというケースを新しい角度から考察している。Lenzが書いているケースは典型的なパターンをたどったと書いているが、わたくし(Rogo)が独自に調査したケースではLenzの指摘するようなパターンをたどらなかった。それにもかかわらず、ここにあげられた資料はなかなか刺激的であるとはいえる。」
このLenzの本でも、過去の記憶を検証できたケースが最後のほうにでてきて、これを読むと、やはり Reincarnation は本当にあるのかもしれないと思うようになる。そして、この哲学者・大学教授も最後のところで、彼の結論として、こう書いている。
”Based on the evidence and in lieu of any other acceptable explanation
for the results of this research, I must conclude that reincarnation does exist.”
「この研究の結果から得られた証拠にもとづき、ほかの納得のいく説明にかわるものとして、わたし(Lenz Ph.D.)は、Reincarnation 転生 は成り立つものという結論をださねばならない。」
さて、Fate誌 1984年1月号にD. Scott Rogo のエッセイ“Tuning in to Past Lives”が載っている。これは同じ著者の「Reincarnation Report」からの転載であるとメモされている。
この短いエッセイで、Rogoは自分で、一般読者から、この Spontaneous な形でのReincarnation の記憶のケースを集めて、分析した話を書いている。Lenz Ph.D.は、Reincarnation を体験する前に、先にあげた、大きな音、とか重量感の喪失とか振動とかを体験者の誰もが経験したように書いているが、Rogoにはそういうケースに該当する例はなかったとかで、結局、これは Lenz Ph.D. が一般読者から資料を集めたときにすでに、Lenz Ph.D. の意向があらわになっていて、それに沿う形で読者が反応したのではないかというようなことが述べられている。
いずれにしても、Rogoが集めた夢のケースやデジャー・ビュー ケース、Meditation のよる Altered States of Consciousness の状態でのケースなど、いずれも信憑性があり、Veritableな証明可能な証拠があるため、Reincarnation が本当にあるのかもしれないということになる。
夢の場合は、Sandra Gibson Ph.D.の場合もそうであったが、Violent な、悲劇的な死を迎えた場合(殺されたケース)が多いようで、そういう場合が、あたらしい Life に特に影響を残すようである。Trauma とかというかたちで。
ここでは、一応、Reincarnation に関する本はたくさん出ていて、その中でも、特別に論理的に展開している哲学者Lenz Ph.D.の本を紹介した。読んでみると、みんな、なるほどそうかと思うようなものばかりであるが、自分で納得するには、やはり、なにかで体験するほかないように思う。
わたしは、もし、Life After Life or Deathがあるものなら、つまり、Soul 魂が Survive するものなら、Possession の可能性は残り、Reincarnation の可能性も残るように思う。私自身は、もう一度生まれ変わりたいとは思わないが、これらの本によると、好き嫌いで生まれ変わるのではなくて、Karma とかいろいろな理由で、生み出されるそうである。死後、無であれば問題はないが、無でなくて Soul が Survive した場合は大変だと思う。静かに天国で暮らせればよいけれど、宗教戦争のまっただなかに生み出されたら本当に大変だと思う。Karma で生まれ変わらなくてもよいように、今の人生をしっかり生きることがとりあえず、やるべきことのように思える。臨死体験者のすべてが、今の人生をしっかり生きることの大切さを学んだとのことであったが、Reincarnation 体験者も今の人生をしっかり生きることの重要性を学んだようである。それだけでも、そういう体験をした価値はあったわけだ。ようするに、清く正しく行い、自我を捨てて、人間社会をよりよくする方向に働くことが大切だという話である。
「Lifetimes」 Frederick Lenz Ph.D. Fawcett Crest Books CBS Publications
ISBN:0-449-24337-0
村田茂太郎 2013年1月6日、7日
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