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9/02/2012

ブログ表紙写真 29回目 梓川ー上高地 中部山岳国立公園 Japan

ブログ表紙写真 29回目 梓川ー上高地 中部山岳国立公園 Japan


 このブログ表紙写真は基本的にアメリカの風景を採用していますが、前回、California Kings Canyon National Park の清流を紹介したため、日本の清流も紹介しておきたくなりました。

 日本では水のきれいな清流は珍しくもありませんが、アメリカでは特に雨のあまり降らない地域では濁流がおもで、透きとおるような水をみると感激します。

 わたしは10年以上エルパソーテキサスに住んでいたため、水に特に敏感になりました。

 昔々、小学校6年生の卒業のとき、思い出サイン帳にクラスの女生徒のリーダー格であった金井光子という女の子にサインをもらったとき、どうしたことか彼女は”水”と大きく書いてくれました。当時、どういう意味だろうと思ったことがあります。命の水、ぐらいはわかっていますが、わたしが水が好きになるだろうとか、なるようにという意味であれば、先見の明があったということになりそうですが、彼女はほかのすべての人にも同じことを書いていたのを見ましたから、それはただそのときの思いつきだったのかもしれません。ほかのひとに、風とか火とか大地とか山、川、谷、草原とかと書いていれば、わたしは水のおかげで水がすきになったといえるかもしれませんが。

 わたしの清流好きはコンラート・ローレンツの刷り込み理論Imprintingによると、子供のころから大阪の箕面市にある箕面(みのお)渓谷に親しんだせいと思われます。もみじの紅葉の名所は秋だけでなく、夏も緑深い渓谷に清流が流れ、もみじその他の樹木が道をおおうようにして繁っているなかを歩くのはすばらしいものでした。そして昆虫博物館があって、昆虫が沢山いたのです。

 それ以来、澄み切った渓流はわたしの大好きな景観のひとつとなりました。エルパソ周辺に移り住んで、アメリカ南西部の自然に接し、有名なRio Grandeを見てから、わたしは水に特に敏感になり、いつもリオ・グランデの水量を気にするようになりました。

 日本のように雨が豊富に、あるいは豊富すぎるほど降るところでは、森林が美しく、渓流も透き通った清流がどこにでも流れて、すばらしいものですが、アメリカ南西部ではそうはいきません。

 Perennial River(つまり、いつも水が流れている)と書かれている Arizona の東南部にある有名なCave Creek Canyonに、ある夏訪れたら、ドライであったのでびっくりしたほどで、これでは沢山の野生動物が水を求めるのに苦労するだろうと思ったほどです。

 New Mexico の Rio GrandeやElephant Butte Lakeの水の量もおおいに変化するので、水に敏感にならざるを得ず、旅のすばらしい伴侶・友人松井氏と一緒にドライブしているときは、リオ・グランデを渡るたびに、松井さんに写真を撮ってと頼んだりしたので、”アンタ、水を見ると異常反応をおこすなあ”とからかわれたりしました。

 Life Zoneと水、高度、緯度の関係をまじめに観察する事になったのもエルパソ、Southwestの水に関しての問題を直接みるようになったからです。

 そうして、日本を振り返ると、本当に雨の多い日本は森林と峡谷が発達し、見事な森、山、渓谷が豊富で、本当に地球上でももっともうつくしい地域だと思います。

 既にほかのところで書きましたが、「ロシヤにおける広瀬武夫」という素晴らしい本を読んでいて、最後の近くで(P404) 武夫の恋人のロシア女性アリアズナAriadnaが、武夫がプーシキンの詩を漢詩に訳して紙に書き、同時に自分のつくった即興の詩を日本語で書いてみせたところ、こういいました。--「意味はわからないけれど、風情があるのね。ロシア人には、こんな美しい文字は書けません。ヤポーニャは小さくても、昔から立派な文化を持っているのですね。うれしいわ。いつだか極東へ行った兄の友達がかえってきて、ヤポーニャは極楽だって驚嘆していましたわ。ほんとうの極楽浄土があるとすれば、あの国ことだろう、と話していましたわ。わたしはヤポーニャがとても立派な国だということを疑ったことは一度だってありません。」

 このなかに、日本の文化と自然の美しさが要約されているように思います。日本語の美しさと自然の美しさ、文化の美しさ、人間の美しさ。それは、かってクローデルがヴァレリーにいったという”人口が多くて貧乏だ、しかし高貴だ”という日本評価のことばにも当てはまります。今は貧乏でなく、高貴でもなく、傲慢で、なんとかアニマルといわれるようになったということを知ったら、彼らはまさに極楽から失楽園に来たとがっかりしたでしょう。

 上高地の梓川(あずさがわ)はうつくしい清流で、心があらわれるようでした。5月下旬、雪解け水をあつめて、清く冷たく、まわりの景観をより美しく盛り立てて、上高地の中心をつくっていました。本当にすばらしいところで、上高地がすばらしいのも梓川のおかげだと思いました。

村田茂太郎 2012年9月9日


上高地、梓川あずさがわ


上高地、河童橋からのView


梓川


梓川と河童橋、上高地、中部山岳国立公園

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