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12/31/2012

J.A. Jance Mysteryを読む


J.A. Jance Mysteryを読む

わたしがRoss Macdonaldが大好きであることは、拙著の「探偵小説の読み方(1)」ですでに述べたことである。ロス・マクドナルドが亡くなって、もう30年近くたつ。今読み直しても、とても面白く、いろいろな意味で感心する。やはり、主人公 リュー・アーチャーという個性豊かで魅力ある私立探偵を創造したからであろう。Mystery、探偵小説で何度も繰り返して読むなどというのは、私にとっては、ロス・マクドナルドの作品だけである。(時には、エドガー・アラン・ポーの作品も繰り返して読むが、ポーの作品は短編で、すぐに読み終わるので、現代のミステリーと比較するのもあまり意味がないと思う。ポーの作品の魅力と意義については、同じく拙著の中の「探偵小説の読み方 (2)」と「メールストロームの渦をめぐって」というエッセイの中で、展開した。)

ロス・マクドナルドに限っては、私はどれも二度も三度も読んでいる。いくつかの作品は四回もよんでいることを発見し、今度読めば五回目かという感慨におそわれる。リュー・アーチャーという魅力ある探偵の行動ぶり、反応ぶりに接したいという気持ちがわいて、何度も繰り返して読むことになっている。この作者Kenneth MillerRoss Macdonaldはペンネーム)はColeridge研究でPh.D.をもつ学者のはずであるが、私にとってはLew Archerを創造してくれたということのほうが大事である。Coleridgeなど誰でも研究できるはずだが、Lew Archerはロス・マクドナルド(Kenneth Miller)だけが創造できたのである。

 ロス・マクドナルドほどではないが、わたしは現代のMystery作家の作品もたくさん読んできた。すでに、このブログでも紹介したJonathan Kellermanは児童心理学などでPh.D.をもつ精神分析医であるが、もう30年近く、みごとなMysteryを描き続けている。わたしは20冊以上読んできて、どれも満足できるものであったという印象を持つ。

 Kellermanのほかに、最近、続けて読んだのは、わが友 デボラー・ボエームさん推薦のTony Hillermanで、これは私にとっては興味深い ナバホ・インディアン のPolice Detective, Lieutenantを主人公としたMysteryであるが、わたしは幸い、アメリカ南西部が大好きで、本を書こうと思ったくらいにアメリカ南西部のScenic Drivingの旅をしたので、土地の描写も興味深く、まだ著者が在世中に読んで、アルバカーキーに会いに行っておかなかったのが残念に思われたほどである。

 ほかに好きなMystery作家として、Michael Connelly (主に、舞台はロサンジェルス LAPD)、 Michael McGarrity(2005年までは全作品を読了、舞台はNew Mexico)、そのほか、いっぱいいる。

 1994年ごろ、見つけて、それ以来持続的に読んでいるミステリー作家のひとりが J.A. Janceである。彼女はシアトルのDetectiveを主人公とするミステリーを書いていたが、そのうち、そのほかに、アリゾナの南東部、Cochise County のSheriffを主人公としたミステリーも書き出した。わたしは何冊か、ためておいて、一気に何冊も読んだりして、とても気に入った。

 彼女の作品は、今では4人ほど主人公がおり、シアトルで活躍するJ.P. Beaumont MysteryArizona Cochese Countyで活躍する女シェリフJoanna Bradyを主人公とするMysterySedona在住のもとCeleb アンカー・ウーマンAli Reynoldsを主人公とするMystery,そして、もう一人という具合に、上手に4人を使い分け、ときにはBeaumontBradyを合流させたりして、読者を楽しませてくれる。

 シアトルを舞台としたJ.P. Beaumontものもすばらしいが、わたしは特に女シェリフJoanna Bradyを主人公とする作品が気に入っている。私がよく訪れたArizona 南東部が主な舞台であるため、なんとなく、身近に感じるし、風土がよく描かれていると思うからである。また、LAPDNYPDなどのBig CityPoliceものと違って、このBradyものは、アリゾナの小さな町Bisbeeを拠点としたシェリフで、限られた人数で、様々な問題に出逢うため、乏しいBudgetのなかで、やりくりしながら、すべてに小気味よくBradyが反応していくので、気持ちがスーッとする。彼女は人任せにしないで、自分が陣頭指揮を執り、少ないスタッフだけれども、人間関係のいざこざをうまく読み取りながら、こなしていくわけで、私がこのような、小さな町で大きなTerritory(広大な空間)の最高責任者、選挙で選ばれたシェリフであれば、どのように反応するだろうかというマネジメントの興味もわき、J.A. Janceが見事に描き分け、楽しくこなしているのに感心し、娯楽小説としては一級品であると思う。しかも、Bradyは夫を殉職で亡くし、娘を抱えて、再婚し、生まれた小さな子供をかかえて、家族生活をうまく維持しながら、シェリフの役割を果たしていくという、まさに女性が書けるシェリフものとなっている。ここでは、シェリフの領域の中にAnimal Control の仕事も含まれており、そういう犬猫の問題まで含めて、シェリフが見事に対応していくのをみるのは楽しい。ともかく、Mysteryらしい内容を持つが叙述が自然で無理なく読み進めることができる。

わたしはしたがって、この読みやすいJ.A  JanceMysterySam’s ClubEl Pasoに居たとき)やCostcoLos Angeles)でDiscount Priceで売られているのを見つけると、いつも、すぐにとびつくようにして買い求め、一日か二日で読み終わる。そして、ほとんどいつも満足する。自分がアリゾナを旅している気持にもなり、マネジメントがうまい人間の対応ぶりに満足し、アリゾナ的な問題を教えられ、いろいろ学ぶことができる。そして、中心人物に限らず、いつも人間的にやさしく魅力的な人物が何人か登場するので、本当に読んでいて気持ち良い。

先日、「Fire & Ice」 をCostcoで見つけて、すぐに読了し、今日も、Costcoで「Left for Dead」 を見つけて、購入したばかりである。「Fire & Ice」 はシアトルの J.P. Beaumontが中心の話だが、アリゾナのシェリフBradyと連絡をとり、お互い助け合うことになる。Washington州で起きた事件のルートがArizonaに関係あるということになるわけで、ありうる話である。

 「Left for Dead」 は買ってきたばかりで、まだ中身はわからないが、これはSedonaAli Reynoldsを主人公とする犯罪ものである。このAliという女性も魅力ある人物で、わたしは確か全部買って読んできたと思う。ともかく、J.A. Janceを、私は25冊ほど読んできているはずである。ラクに読めて、さっぱりするので、何かに疲れた後の読書として最高である。彼女はすでに50冊近くも出版しているが、どれも気楽に読めて、後味もよい。いい娯楽になる。

いつか、紹介したいと思っていたが、ここに簡単にその魅力を伝えようと思った。

村田茂太郎 2012年12月29日、30日、31日

「Left for Dead」読了。417ページ。読みごたえのある、充実したミステリーであった。二人の Left for Dead をいろいろな角度からアプローチしながら、みごとにまとめあげ、その間、人間的な魅力を持つ人物たちを上手に自然に扱って、納得のいく結末となっている。One of the Best と言えるかもしれない。Ali Reynoldsという主人公の人物が、人間的暖かみとやさしさ、そして素晴らしい行動力をもって描かれているので、読み終わって気持ち良い。副として活躍するカトリックの尼僧も行動に無駄がなく、すばらしい。いろいろな人間の生活の苦労を細かく見落とさずに描いているのは立派なものである。 村田茂太郎 2012年12月31日
ISBN:978-1-4516-2860-9 Simon & Schuster Pocket Books。

 

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