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11/28/2014

Nicholas Sparks 「The Longest Ride」を読む


Nicholas Sparks 「The Longest Ride」を読む

 最近、アマゾンから取り寄せた本の何冊かは、未読のNicholas Sparks関係などで、「At First Sight」や「A Bend  in the Road」については、既に紹介した。

 「The Notebook」に似ているとかという評判の「The Longest Ride」を、読むまえから期待していたが、とても好かった。似ているというのは回想が入るからということで、内容的にはぜんぜん似ていない。

 “The longest ride”とは、アラスカまでのバス旅行の話ではない。人生Lifeのことを指す。

 この本はもちろんLove Storyであるが、ふたつのLove Storyが並行して展開する。

 Longestというから91歳の男Ira Levinsonの回想が主題といえるが、同時に若者のLove Storyがまじめに展開する。美学専攻の大学卒業間際の女性SophiaProfessional Bull Riderという職業をえらんでいるカウボーイの若者Lukeとの関係である。

 91歳のIraにはSoul Mateといえる妻Ruthがいたが、9年ほど前に先に亡くなった。そして、あるときドライブをしていて雪になり、山道でガードレールを踏み越えてクルマが下に落ち、がけに引っかかった状態でとまった。どうやら、あちこち怪我をして、身動きができず、どうにもならない。雪は積もるばかりで、とうとう、これでは、ヘルプも不可能で、もうこれで自分も亡き妻と一緒になれると考えるようになる。

 そのうち、車の中に妻が現れ、かれと会話をするようになる。そして、彼は妻の亡霊と自分たちの一生の主な出来事を回想することになる。それは彼が結婚する以前からの回想で、まさにLongest rideということになる。

 男Iraは第二次大戦に駆り出され、生きながらえたが病気になった。Mumpsであったと知らされる。Mumpsは男の生殖能力を破壊する病気で、こどもを産めない身体になったということを知るわけで、それは婚約者Ruthにとってもショックであった。彼の求婚に対する即答はできなかったが、よく考えて、合意する。したがって、この二人には、親がなくなれば、自分たちのほかに家族はいないのであった。

 Nicholas Sparksの最近の作品にはParanormal超自然な出来事が自然なタッチで描かれている。たとえば「Safe Haven」では、女主人公が移り住んできたLodgeのすぐ近くに、彼女にいろいろアドバイスする女性が住んでいたが、どうやらそれは主人公の女性が好きになる男性と彼の幼い息子のことを心配した亡き妻があらわれていたようで、すべてがうまく片付いたと思われる時点で、その女性が居たはずの家は廃墟としてあらわれ、女性自身は消えてしまう。

 Kristin Hannahの作品「Comfort & Joy」もParanormalな関係を扱った、それなりに興味深い作品であることは、既に私はこのブログで紹介した。「Fly Away」では、Comaの状態の主人公が、なくなったベスト・フレンドと普通に会話する場面が沢山出てくる。今では、私はありうる話だと受けとめている。

 この作品、「The Longest Ride」では、車の中で、ひとりで、傷ついた91歳の老人Iraが、死が迫っているのを自覚しながら、亡き妻との会話に勇気を見出し、水さえ手に入らない中で、Soul Mateであった妻との生涯の回想の中で、がんばって生きつづける。水はうしろにあるが手が届かない。妻が水は身近にあるとアドバイスする。そうだ、彼は雪国の話で、クルマに埋もれて2ヶ月以上何もなしに生き続けた男の話を読んだことがあるが、窓を開けさえすれば雪が手に入るのだとわかり、苦労して雪をつかみ水のかわりにのどを潤し、一息つく。

 

 「心霊現象の科学」をかなり勉強した私は、今では、死が近づいているときに霊界から愛する人たちがコンタクトするという話は、例外的ではなく、日常的に起きているということを知っている。したがって、この話の展開についても、昔と違って、あまり奇異な感じはしない。

 こうして、亡き妻と会話をしながらLongest Rideの生涯を回想するIraとその妻Ruthの話の展開と並行して、若者Sophia DankoLuke Collinsのほとんど牧歌的とも言える、魅力的な恋愛が語られる。

 Sophiaは失恋を体験し、そのあともストーカーのように男につけねらわれていたが、あるとき、ルーム・メイトのアイデアにしたがって遠くのBull Riding Eventを見学にゆき、たまたまLukeと出遭うようになる。ストーカーの男Brianから逃げようとして、助けてくれたのがLukeであった。そして、二人の仲は急速に進展する。

 牧畜を営む農場で、乗馬をまなんで一緒に近くの森の中へでかけ、いろいろ自然に近い、魅力的な生活を味わうことになる。

 男Lukeの父親は既に亡くなっており、彼は母親と二人暮らしである。父親もProfessional Bull Riderであり、彼Lukeもその道のWorld Championを目指して頑張っているようである。しかし、これは命がけの行為であり、Luke自身、過去に失敗してほとんど死にそうな怪我をしたらしい。それにもかかわらず、このBull Rideをやめないのは、いわば懸賞稼ぎが目的らしい。その怪我で奇跡的に命は助かったが、そのための病院代、医者代が膨大なもので、かれらの牧場はすべて銀行の抵当にはいってしまっている。そして、Loanの支払いが大変で、自分は責任があるという意識があるから、危険を承知していて、やらざるをえないというわけであった。

 この車の事故に遭った91歳の男Iraの車の中での亡妻との回想の展開と、平行して進行するSophia/Lukeの恋愛関係がどのようにつながっていくのか興味があるところである。

 若者二人が乗ったクルマが、山道でガードが壊れているのに気がつき、おかしいと思い、下りて調べてみると車が下に落ちている。車に達すると、老人はかすかながらまだ息をしているようである。自分の車に戻ってEmergency callをやり、救援隊がやってくるのを待つ。一度、Sophiaも様子を見に降りたとき、老人が手紙をさがしてくれというのを理解して車の後部をしらべると確かに手紙が見つかった。一応預かった状態で、ふたりは自分の車に戻る。

 そのあと、手紙を読んでみて、老人自身が書いた手紙であることを知り、また彼の亡妻Ruthに対する細やかな愛情が伝わるのを感じ、この手紙を病院に届けようと思う。

 老人はまだ生きながらえていたが、Sophiaは親族でもないので会えなかった。しかし、ドクターが、老人が彼女Sophiaに会いたいといっていると告げ、不思議に思う。彼女は老人の書いた手紙を読み上げる。老人は満足した様子であった。

 そして、結局、そのあと、すぐに老人は亡くなった。

 そのうち、二人は、沢山の有名な絵画のコレクターが亡くなって、競売がはじまるから、美学の教授からSophiaも参加するようにと誘われる。そして若者二人は、自分たちが助け出した老人Iraが実は、その有名なコレクターであったことを知る。

 Iraの絵画コレクションが世界的に有名な二十世紀の画家の作品だということで、競売会場に集まったのは世界中の美術館から参加したコレクターでいっぱいであった。

 ふたりは金もなく、買うつもりもないので、後ろの席に見えないように座っていた。

 担当弁護士が説明をし、まず、一枚の素人が描いたと思われる絵を見せて、競売をはじめた。それは女性のポートレートで、まさに素人らしさがのこる絵であった。

 1000ドルからスタートして、下げていったが、プロのコレクターはみんな無視して買う意思を示さない。400ドルまで下がったとき、若者Lukeが“買った”と叫んだ。若者はBull Rideで勝った賞金の一部をもっていて、恋人Sophiaが老人Iraの妻Ruthに対する執着に感動しているようであったので、その妻のポートレートは自分の愛するSophiaにふさわしく、これだけは買える値段まで下がったので、買ったと叫んだのであった。そのあとも誰も買う意思を示さず、結局、最初の絵はLuke/Sophiaのものになった。

 つぎにどの絵が売り出されるのかと期待していた参加者は、びっくりするような弁護士の説明を耳にする。これで競売はおわりだ、最初の肖像画を買った人が、このコレクションのすべてをもらいうけるというのである。会場は騒然とし、Luke/Sophiaも信じられないほどである。二人は別室に導かれ、弁護士や競売のDirectorから説明をされて、はじめて本当に何百万ドルもする絵画のコレクションが自分たちのものになったと理解する。

 弁護士は遺産相続をすると膨大な税金がかかるから、いずれそのコレクションのある部分は競売に出さねばならないだろうと説明する。

 Iraは、妻が亡くなったあと、親類も何も居ない自分たちがいかにして膨大な金額になるはずの絵画コレクションを処分するかで悩んだ末、考え付いたのがこの方法であった。一枚の一見貧弱な、しかし彼Iraにとっては何よりもかけがえのない妻の肖像を購入して大事にしてくれる人こそコレクションを託するにふさわしい。絵を愛するのでなくて、ただ金儲けのためにあつまるコレクターに売るつもりはない。彼Iraは妻Ruthのように絵に執着するタイプではなく、彼は妻が、絵が好きで、絵をコレクトして楽しんでいる姿を見るのが好きであった。したがって、彼は自分の妻の肖像画を認めてくれる人がコレクションを託するにふさわしいと弁護士に伝え、そのように遺言書を作成したのであった。

 この絵は教師を務めていた妻Ruthが家においてやろうとまで思っていた腕白坊主の子供が、あるとき突然居なくなって、妻を絶望のふちに落としこんだ、その子供がやさしくかわいがってくれた教師Ruthを思い出しながら、写真を見て描いたものらしく、実は、この子供が成長して結婚した女性が彼Iraを訪問して届けてくれたものであった。教師である妻Ruthがこの子供に未来の可能性について無限大だとおしえたことをしっかり覚えて、成長し、立派に社会に貢献していたが、病気に克てず、30代の若さで亡くなったとのことで、自分がこの絵をKeepするよりは、Iraにわたしたほうがよいと判断したのであった。この絵を彼はどこにゆくにも持ち運んでいて、妻であるその女性には理由がよくわからなかったが、あるとき、裏からふるびた写真つきメモが見つかって、理由がわかったというわけである。Iraはその絵が亡き妻の面影を伝えているのを認め、大事にしていたのであった。そして、コレクションの配分に関して、本当に自分たちのコレクションの意味を理解してくれる人に全部贈呈するのが亡き妻にとってもベストであろうという考えに達し、若者二人の手に入ることになったのであった。ある意味でシンデレラまたは“大いなる遺産”Great Expectationの現代版といえるかもしれない。

 遭難車を発見し、その老人の秘密の一部に接し、美術を専攻する恋人との縁で競売場に参加したことが、思いがけない遺産分配にあずかることになったのであった。

 抵当に入っていた牧場も、おかげで、無事に収拾がつき、若者ふたりは正式に結婚し、まさにすべてがうまくかたづくHappy endingとなった。

 あとがきで、Professional Bull Riderに関する著者の関心や調査、絵画の競売に関する関心、North Carolinaを舞台にいかにうまく関連付けるかといった創作上の内輪話も語られている。今はなくなったらしいが、1933年にBlack Mountain Collegeという大学がNorth Carolinaにつくられ、そこが20世紀アメリカ絵画のひとつのメッカになったということで、これを組み込んで小説Love Storyを完成したということである。

 私はエルパソにはじめて住みだしたとき、同僚とロデオ・ショーを見に出かけたことがある。なかなか面白く、なるほどカウボーイ・カウガールたちは牛や馬を追っていないときは、こういう練習をしているのかと感心したことがある。駆け出した小牛を何秒でつかまえるかとかといった競争で、若いカウガールたちの競争も興味津々たるものであった。最初の印象がとてもよかったので、翌年、もう一度、見に出かけたが最初のときほどの面白みはなくて、それっきりになった。あばれる牛を乗り回すロデオももちろんあった。暴れだすのは、牛の後部を縄でゆわえるから、牛は怒り出し、はずそうと暴れるのであった。

 大学でのArt専攻の女性と農牧をいとなむカウボーイの青年とがどのように結びつくのか。興味があったわけだが、相愛の二人に悩みが一挙に解決するような、大いなる遺産がころがりこんで、無事解決ということであった。これは、古典ギリシャでDeus Ex Machina 機械仕掛けの神 といわれるものに近い解決法であったと思う。しかしありうる話らしい。

村田茂太郎 2014年11月26日、27日

The Longest Ride By Nicholas Sparks 2013

ISBN: 978-1-4555-2063-3

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