「心霊現象の科学」をめぐってーその100 Dannion Brinkley“Saved by the Light”を読む
臨死体験Near Death Experienceに関する本は今では沢山出回っていて、みなそれぞれ何か得るものがあるが、この本の著者が体験したころは、まだ有名なRaymond Moody, Ph.D。, M.D。のベスト・セラー「Life after Life」が出版される以前であり、落雷に打たれて瞬間的に死亡したのは1975年のことであった。
North Carolinaの家の中で電話で話しているときにカミナリが電話回線を通して落雷したわけである。
アメリカでは、Lightningという本によると、年間(?)400人ほどの人が雷にうたれて死んでいるそうである。みな、臨死体験をして死んでいったはずである。生き返ったのがよかったのかどうかは見方によるわけで、Don Piperの「90Minutes in Heaven」(心霊現象の科学 その92)を読んだ限りでは、死んだほうがラクで、死なしてほしかったのは間違いないようだが、では、なぜ生き返って苦痛を味わいながら生きねばならなかったのか。それは、Missionがあったからということになるようだ。PetsがMissionをもって人間社会に関係してくるように、臨死体験をして生き返った人も、なんらかのMissionがあったわけで、それが家族たちのための場合もあれば、同じような苦痛で苦しむ人に心から同情できる、慰めの相手としてであったり、世の中に臨死体験を報告してAfterlifeの事実を人々に知ってもらうためとか、様々である。
そういえば、このDannion Brinkleyが落雷に打たれて、ものすごい苦しみの生活をながいあいだ続けねばならなかったから、この本によって、私たちは雷にうたれるとはどういうことかということを身にしみて実感できることになる。もちろん彼の臨死体験談も非常に有益で、それは一冊の本にできる内容であった。今ではアメリカ国内だけでも臨死体験者は何百万人といるというから、現代医学の進展が、死ぬはずの人を生かし続けているというMeritはわかるのであるが、同時に、本来死ぬべき人が死ねずに生き続けるという現象もおこるようになっている。
Dannion Brinkleyは落雷で死にかけただけでなく、その後、病弱になったからだのせいで、さらに2度ほど臨死体験を経験したようだ。三度目の臨死体験は、最初以上に重要で、それも本になっており(“Secrets of the Light”)、いずれそれに触れねばならない。
ともかく事故は1975年、自宅で電話中に起きた。ここでも、よく、雷の時には、電気系統で要注意という話をよく聞くが、まさにそのとおりで、テレビや電話などは雷を自分で導いているようなものだということがわかる。雷が鳴ったら電話もテレビも切ろうというのが基本ということが、この本を読んでよくわかる。
1975年といえば、臨死体験者はそれぞれ孤立していたにちがいないが、まだ世界的にベスト・セラーとなるRaymond Moody, Jr. Ph.D., M.D.の「Life after Life」が出版される前であり、それぞれ臨死体験者たちはどこか秘密の世界を覗いて生き返ったに違いないが、告白すれば、キチガイ扱いされるのではないかという不安のほうが大きく、誰も表面だって臨死体験を報告していなかった。
Dannion Brinkleyも自分の異常な体験を語り合える相手をみつけられなかった。そしてDr. Moodyがあらわれた。DannionはDr. Moodyの講演会(University of South Carolina)に行き、はじめて自分の体験したことは臨死体験Near Death Experienceとよばれるものであることを知った。講演会場でDr. Moodyが、誰か臨死体験をした人はこの会場に居ないかと訊ねたとき、Dannionは手をあげて、落雷に打たれて生き返った人間だと告げたとき、Dr. Moodyもそのニュースは知っていて、その本人から話をきけるということで、二人は急速に親しくなっていった。
そして、Paul Perryという編著者の協力を得て、「Saved by the Light」という本が出来上がった。これは臨死体験の話の中でも特別に有名な本となった。
死んで28分後、モルグで生き返った彼は、その体験によって、今までの生き方とはまったく違った生き方をえらぶことになった。彼は生き返ったことによって、Missionをもちかえったのであった。
あの世で、彼は13人のAngelsに会い、それぞれから未来の予告(1975年以降に起きる世界史的事件、Nuclear Disaster, アラブ・イスラエル紛争、など)を知らされたのであった。そのいくつかは本当に起きたから、これは予知に関する重要な資料のひとつといえる。 (ほかにマイケル・ドロズニンという人の書いた“聖書の暗号”という旧約聖書の予言に関する書物も面白い)。これが普通の臨死体験と違う点で、Dannionの場合、通常とは違った現象に接しているようだ。
この第一回目の臨死体験では、いわば天国にいるような体験をするが、三回目のときは、まるでダンテ神曲煉獄篇にいるような世界を体験する。それはLimbo中ぶらりの世界、丁度、自殺者の魂が灰色の世界をうろついているというのと似たような世界、そこでは何百万ものSoulが光の世界に移れないで漂っているという、地獄ではないが、おそろしい、救いの無い世界であったようだ。
Dr. MoodyがLife after Lifeを著述していたとき、臨死体験者が体験するさまざまな現象のすべてを体験した人に会ったことはなかった。Dr. MoodyがDannion Brinleyにあったとき、はじめて彼は、いわゆる臨死体験者が体験するすべての現象を体験した生の人間に出会ったのだった。
Life after Lifeにあげられた臨死体験者が体験する15ほどのElementsは、結局9つに纏め上げられ、それがこの本で示されている。
A sense of being dead 死んだということを知っている
Feelings of Peace and Painlessness 痛いはずの人が痛みを感じなくなっている、平和なムードを感じる。
An out-of-body experience スピリットまたはEssenceが体を抜け出し、まわりでおきていることを見て理解する
A Tunnel Experience 死んだ人は、ものすごいスピードでトンネルをくぐる体験をする
Seeing people of light 死んだひとのエネルギーがみちているのを感じる
Being greeted by a particular being
of light スピリット・ガイドのようなものがあらわれて彼を導く
Having a life review 自分の全人生をムービーをみているかのように眺めることになる、そのとき、自分の反応だけでなく、相手の反応までよくわかるようになる。
Feeling a reluctance to return もう生き返りたくない、死んでこの状態なら、このまま死んでいたいと感じる。しかし、必ず、生き返る人は、Missionがある、仕事が残っていると追い返される。
Having a personality transformation 当然のことながら、Deathのあと、Afterlifeがあるとわかり、残された仕事が地上で待っていることもわかり、今までと違って、人生に目的を見出して生きるようになる。個性が変わったようになる。(あるいは人間が変わったようになる。その結果、若い夫婦は離婚に至るケースが多いようだ。)
というようなことが述べられている。
それから、臨死体験者の多くはサイキックになって生き返るようで、Dannionも例外ではなかった。
有名になりすぎた本で、Negativeに評価する人もおり、読むのをためらっていたが、2015年1月に読み終わって、とても面白かった。
やはり、臨死体験者の報告の中では出色のものであろう。
村田茂太郎 2015年10月21日
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