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2/07/2014

「心霊現象の科学」をめぐってーその77 「Hello From Heaven」(霊界からのメッセージ)(邦訳名 生きがいのメッセージ)By Bill Guggenheim & Judy Guggenheim


心霊現象の科学」をめぐってーその77 「Hello From Heaven」(霊界からのメッセージ)(邦訳名 生きがいのメッセージ)By Bill Guggenheim & Judy Guggenheim

 19世紀の末、1880年ごろ、イギリスに始めて心霊現象をまじめに研究しようとするサークル(Society for Psychical Research)が公的につくられたとき、そのひとりのメンバーとして参加したのが、Edmund Gurneyであった。主に古典学者・哲学者がメンバーであったが、意図は、Life after Death, Soulの存在を確かめようとするもので、DarwinMarxの出現、そして19世紀科学の飛躍的発展、隆盛以降、物質的な世界観が主流となって、人間の死後の世界についても、霊魂の存在を否定する風潮がたかまりつつあった。この探求グループは、客観的に、より科学的に、誰もが納得のいく形で、この誰もが気にしているが、まともにとりあげる勇気の無かった仕事に着手しようとしたのであった。

 そのなかで、彼らはテレパシーの存在を確信し、人間は超能力をもっていて、必要になればその能力を発揮することができると感じていた。 つまり死に直面したとき、家族や友人になんらかのメッセージをおくるという現象が、頻繁に起こることが経験的にも知られており、それを統計的に確かめて、まず、人間の持つそういう能力の存在を知らしめようと主だったメンバーが考えたが、その証拠資料の収集とその確認にはFrederick MyersFrank Podmore, Edmund Gurneyの3人が携わった。最終的には、製本の作業はこの計画の中心メンバーであったEdmund Gurneyが行うことになった。かれらは、超常現象を体験したという人々から資料を集め、その信憑性について追跡調査を行い、これは確かというデーターを700件ほどしぼりだして、本体はGurneyが執筆し、序文、注釈その他はMyersたちが手がけて、本を完成した。

 メンバーの3人の合作といえるが著者名はEdmund Gurneyとなっている。本の内表紙には三人の名前が記されている。「Phantasms of the Living」という題名で1886年に出版され、集められたケースは膨大で、調査結果、最終的に選んだのが700件を超えるデーターであった。したがって、本は上下二巻で1400ページを超える、まさに膨大な本となり、それはこの心霊現象の科学探求のうえでのLandmarkひとつの指標・路程表となった。そして、内容的には主にTelepathyApparition(幽霊現象)を扱っている。(Amazon.comで上巻は15ドルほど、下巻は45ドルほど。わたしは、Paperbackは上巻だけ、下巻はKindlePCで手に入れた。Facsimilesベースで、ベストConditionとはいえないが、無事読みこなすことは可能な状態である。)ともかく、まじめに心霊現象の科学を探求しようと思うものにとっては、必須の基本文献であるといえるだろう。このあと、Frederick Myersが1901年になくなるまでに書き集めていたものが、まとめて「Human Personality and Its Survival of Bodily Death」という表題で、これも二巻本になる、膨大な研究書が1905年に出版された。二巻で1300ページを超える記念碑的な探求書で、Phantasmsとならんで、心霊現象探求の古典的名著といえる。このほうは、私は35年以上前にUsed bookで手に入れていた。

 ApparitionGhost幽霊現象ともいえるが、必ずしも死んだひとだけではなく、いわばOut-of-Body Experience離魂体験をできる人―生きた人が現れる場合もある。このブログの最初に展開したベルグソンの話にでてくる話、ある女性が第一次大戦で夫が死ぬ現場を夢で目撃・体験したという話は、まさにこの死ぬ間際に出現するApparitionに該当するといえる。テレパシーまたはOut-pf-Bodyで、妻に自分の死を連絡してきたという話で、こういう現象がしばしば起きるのに対し、あるひと(主に自称科学者)は無関心であったが、まじめに探求しようとするひともいて、それがこのサークルを生み出し、これらの歴史的名著を産むに至った。

 「Hello From Heaven」の紹介のつもりが、変な横道に入っているように見えるが、この1995年に出版された本は、丁度、100年ほど前に出版された「Phantasms of the Living」の展開と同じような形で、資料が収集され、選抜され、わかりやすく現代風に展開された本といえる。つまり、Mediumとかサイキックとかという特殊技能を持った人からのデーター収集ではなく、一般人が異常事態で体験する心霊現象を収集・整理したものである。

 100年以上前と違って、データーの収集も比較的容易で、コンピューター時代の長所を生かして収集された本といえる。

 二人の著者はADC (After Death Communication)<死後に何らかのメッセージを受け取ったと思われる場合>(ADEAfter Death Experience でElizabeth Kubla-RossRaymond Moodyが有名にした略語であるが)という用語を使い、一般市民で、何らかの形で、死者からメッセージを受け取ったと思われるケースをあつめたわけで、このADCという略語は、この二人の著書によって、ひとつの基本用語となるに至った。

 「Hello From Heaven」副題 “A new field of research ~After-Death Communication~ confirms that life and love are eternal” となっている。

 19世紀に「Phantasms of the Living」が現れたころは、いわゆる科学者の全体がこういう心霊現象にNegativeな態度をもつ状態で、最初の探求者たちの苦労は大変なものであった。その一端は、近頃、このブログで紹介した「Ghost Hunters」というすばらしい本にも記されている。テレパシーの存在さえ疑い、そういうものを探求しようとする人間を馬鹿にするような風潮の中で、その資料収集、分析、データー検閲などが行われたのであった。ある大学教授は大学を追い出される(これは日本でも心理学のFukurai博士―東京帝大教授にも起きた)始末で、したがって、まじめに研究することが困難な状況にあった。

 今は、ずいぶん、違っている。まだテレパシー能力の存在を疑う人も居るが、1930年代にJ.B. Rhineが統計的にESPExtra Sensory Perception)の能力の存在を証明して以来、この方面の研究は比較的一般化して研究されることになり、今では、ほとんど誰もESPの能力の存在を疑わなくなった。1970年代以降はDr.Elizabeth KublaRossDr.Raymond Moodyの本がベストセラーになって、Life After DeathNear Death Experienceがあたりまえの話題になり、いつのまにかReincarnationなどをめぐるPast-life Regressionが、それこそ、日常化されるに至った。いまや、誰も、ESPNDEを否定的に取り上げない世の中になった。そして、コンピューター、InternetE-mailの発展で、情報伝達、資料収集も容易になり、100年前の苦労が忘れ去られようとしている。

 そういうときに、同じような資料収集で一般から、After Death Communicationに関する情報を集めて、分類整理し、わかり安く読みやすく面白い本としてこの本「Hello from Heaven」があらわれたわけである。

 わたしも、一読して、すばらしいと思い、誰かに送れるようにと、もう一冊アマゾンから手に入れたほどである。翻訳がなされていなければ、翻訳の価値があると判断したが、あとで「生きがいのメッセージ」という題で、抄訳がなされていたことを知った。また、あるひとがReviewで、大事な部分が翻訳されていないから、原文で読むようにと提案している文章を読む機会もあった。わたしも、この本は面白く有益なので、全訳をすべきだと思う。細かい英文で400ページほどの本だから、日本語訳をまじめにやれば、二冊になるであろう。

 著者は3300件ほどのデーターを収集し、その中から353件のADCをとりだし、それを現象的に分類整理した。

 故人の出現を体感した場合、声を耳にした場合、触られた感じがした場合、それと感じる匂いをかいだ場合、部分的にGhostイメージが出現するのを目にした場合、完全な形でGhost的なイメージが出現するのを目撃した場合、電話での場合、蝶や虹が現れた場合(つまり象徴的なイメージの出現)、などという形で、わかりやすく展開されている。

 ほんの少しだが、Suicide自殺の問題にも触れている。(P.235-238)。というのは、この本を読んだ読者が、あの世があり、魂不滅ですばらしい世界が次の次元で展開されると知って、この地上での命を順調に終えないで、先急ぎをするひと、自殺をする人が出てきては困るからで、実際、自殺の問題はわたしも真剣に取り扱おうとしてきた領域でもある。京都大学でクラスメートの自殺に出遭って以来、自殺の問題はわたしにとって最大の問題のひとつであった。

 ある男が衝動的に自殺をした。それから一ヶ月ほどして恋人であった女性のところに男は夢であらわれた。それは落胆した、あきらめた表情であった。彼は自殺して、平和を見出したのではなかった。彼女は彼のためにお祈りをするとつぶやいた。

 目が覚めて、彼女は、自殺をしても、何にもいいことがない、なぜなら、まだ同じ状態で生きているようなものだからである。逃避することはできない。死んでから、状況がもっとよくなるわけではない。ひとは、責任を持ってこの人生を終えなければならない。ひとは常に自分の行動に責任がある。自殺によってこの世のLessonsをのがれたつもりでも、そんな具合には行かないのだ。

 ある男はビジネスで失敗して、まだ30歳の若さで自殺してしまった。自分は一番年配であったため、すべてを手配しなければならなかった。両親はショックでそれどころではなかったのだ。6ヶ月ほどして、夢の中にあらわれた。夢の中で、彼女は、自殺した弟と顔をつき合わせる形で話し合った。弟は自分の自殺が家族のものに、ものすごい悲しみを産んでしまったことにおどろき悲しんだようすであった。彼は自分がしてしまったことを後悔し、とんでもないことをしてしまったと自分で信じられないような様子であった。目が覚めてから、自分は一層の悲しみを弟に対して感じた。これは弟が期待していたこととは違った結果だと私は感じた。

 自殺をしてしまった人間が、自殺した人間を悲しんでいる人間に、I am sorry といってあやまってすませるものではない、もっと深刻な悲しみをみんなにばら撒いたのだということである。

 この、“残されたものの痛み”、については、私はわたしの大学時代の苦い体験を私の本のなかの、「自殺論―残されたものの痛み」で展開した。したがって、この家族たちのこころの痛みは私にはよくわかる。 Why?

 一方、自殺とはいえ、もう死はせまっており、痛みから解放されるため、実行される自殺がある。若かったとはいえ、画家ゴッホの自殺もこういう場合に該当すると思う。ゴッホは狂気がそこまで来ているのを感じ、それにはいってしまって、自分を失う前に自分でけりをつけたのであった。すでに紹介したArthur Koestrerの場合も、そういった、死期が迫っており、ぼけて何もできなくなる前に77歳で処理したもので、納得できる自殺であった。

 ある男は、自分はTerminal Cancerで、Painが我慢できないからと家族たちに告白して、翌日自殺した。4-5日経って、私の夢に現れた。彼は健康そうで、病気の後などみえなかった。彼はまったく正常にみえた。そして、幸せそうであった。自分はもう死が迫っていた。そして痛みが耐えがたかった。だから、自殺を実行した。あなたたちはみな大丈夫だよ。この人生をつづけなさい。I love you. ということで夢は終わり、私は目覚めた。

 死ぬと決まった人間が痛みから解放されるために実施する自殺と、まだ若いはずの人間が一時の悩みで逃避的に自殺する場合とは明らかに、あの世に移動してからの状態が異なるようである。自殺は解決にならないということを語っているといえる。

 ひとつすばらしい話をこの本の中から紹介しよう。

 Kathrynは60歳で、夫の父親は12年前に癌で亡くなった。この話は自分の娘が癌の手術を受けた1ヶ月あとに起きた。娘は大学を出て、2ヵ月後に子宮癌であることがわかり、しかもほかにも転移していた。4月にそのことがわかり、5月には娘は結婚式を挙げる予定であったのに、結婚はCancelになった。同じ5月に甥の結婚式があり、それに参加して、家に向かう途中のドライブのあいだにこれが起きた。娘の結婚の喜びが一挙に癌で壊されただけでなく、もうこの若さで死にそうな状態である。こんな話はほかの人の身の上で起きることがあっても、自分たちには決して起きないと思っていた。そういう深い悲しみのただなかに居たとき、突然、12年前に亡くなったFather-in-Lawがそこに居るのを厳然と感じた。そして、非常な喜びに襲われた。かれのPresenceは愛に満ちていて、輝くようであった。かれはこのPresenceにすべての彼のベストをつぎ込んだような、そんな感じであった。言葉ではなく、魂で次のような会話がなされるのを感じた。「Kathy, Honey、心配することは無いよ。Krista(娘)は元気になるよ。実際、すでにおわって、無事だよ。 We’ve been able to do a great deal here.ここでは、大変なことをすることが可能だったんだよ。」声はなかったが、頭の中でそれを感じた。そして、娘はその予言どおり、おどろくほど早く回復し、ChemotherapyRadiationを受けても、ほかの人のような苦労はしないですみ、スムースに元気になった。娘はまるで人間が変わったように、再生したようになり、今までとは違った生き方をするようになり、別の男と結婚も実行した。10年目のCheck-upのとき、ドクターは完全に回復した娘を診て、これはMiracle奇跡的だと叫んだ。

 ここには、ADCAfter Death Communication)で、母親Kathrynが一番悲劇的な状態にいるときに、彼女が親しんだ、義理の父親の霊がでてきて、彼女を慰めたわけで、そのとき、おどろくべき事実、霊界で地上では不可能なような手術を実施し、娘はもう回復の途上にあると告げたのであった。この話はこのままでは、信じられないような話であるが、わたしがすでにこのブログで紹介したRalph HarlowMaurice Barbanellの霊界の医者の話を読んだ人には、そういうことも起こりうるのだという程度には信じてもらえるであろう。

 ともかく、この“Hello from Heaven”は、LOVEがこの世とあの世をつなぐもっとも大事な要素であり、Loveこそ、人間にとって、なによりも大切な感情であり、それは死んでも途絶えることなく続くことをさまざまな例を挙げて示しているといえる。

 そういうことで、たしかに、生きがいをあたえてくれるメッセージ集といえる。霊界からのメッセージとは、そういうもの、まだ生きている人に、精神的・心理的支えを与えてくれるような、愛に満ちたメッセージであった。これが特殊能力者の話ではなく、一般の人の体験談であるところが重要である。

 

村田茂太郎 2014年2月7日

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