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4/17/2013

Philip Pullman フィリップ・プルマン “The Golden Compass 黄金のコンパス– Trilogy三部作” を読む


Philip Pullmanフィリップ・プルマン “The Golden Compass 黄金のコンパス – Trilogy三部作” を読む

1.The Golden Compass, 2. Subtle Knife,  3.The Amber Spyglass.

 1は400ページ以上、2は300ページ弱、3は500ページ以上 ということで、三部作全体で1200ページ以上の大作である。図書館ではYoung Adultのセクションに置かれていた。

 それぞれが、イギリスで児童文学賞にあたいするものを受賞し、1のThe Golden Compass はDaniel Craig (007Casino Royal)、Nicole Kidman、Dakota・・・、Eva Green(007Casino Royal) などが出演する映画となっていた。

 この本はクマがしゃべり、WitchやAngelが活躍するので、もちろんFairy Taleであり、Fantasy Book, Science Fictionであるが、内容はなかなか複雑である。

 19世紀Dickensの世界的な展開をしながら、ニュートリノという言葉が出てきて、まだ発見されていなかったDustまたはShadowとよばれる意識を持ったParticleがみつかり、その探求をめぐって、Evilの世界、つまり、カトリック的な権威と教条で世界を支配しようとしてきたものたちと、この今までの世界を破壊しようとするものたちとの争いとなる。

 たたかいは熾烈で、Lord AsrielがつくったIntention CraftというまさにSF世界的な新兵器、つまりヘルメットかぶると、大脳の意識を読み取って、手で作動しないで思うように働かせる装置まででてくる。

 一方、北極のシロクマがBear Kingdom王国を作っていて、主人公たちを大いにヘルプする重要な役割を演じている。Armored Bearといわれて、自分で鎧を作り、それをかぶって無敵の活躍をする。そして、ちゃんと英語で人間たちと話し合う。

 そして主人公の少女Lyraライラが別の世界でであった少年Willウイルとともに大活躍をする。この少女はEveの再来とか教会内部でささやかれて、原罪との関係で、教会側は彼女を抹殺しようとする。

 少女の父親にあたるLord Asrielは北極で別の世界、別の次元、パラレル Universeに至る道を発見しようとし、成功する。

 映画はこの第1部だけを扱って、しかも、ただAdventure Storyだけを扱っているので、ある意味ではつまらない冒険映画であるが、わたしは、本を読みかけて、同時にこの映画をみたため、本を読むうえで非常に参考になり、イメージを描くのに役立った。

 なぜかというと、この本の中で最も重要な役割をするDaemonデーモンがでてくるわけで、このDaemonとは、ソクラテスの場合には“NO”の時にだけ、反応したとプラトンは“ソクラテスの弁明”で書いているが、この小説の世界では、人間がうまれもった分身のペットで、思春期に達するまでは自在に姿を変形でき、あるときは犬猫、あるときは蝶や鳥と自在に変形する。しかも、ちゃんと言葉をしゃべり、女のばあいはオスの動物、男の場合は雌の動物と、いわばカール・ユングのAnimaが目に見える形であらわれているような存在であり、大人になるとひとつの決まった生物になってしまう。

 このDaemonは人間にとって別れられない存在で、このDaemonを切り離してしまうと、Zombieのようになって、生きてはいるが自覚のない無意識な生物となり、いわば奴隷のように動くだけの物体となる。したがって、このDaemonを切り離そうとする連中から、如何にのがれ、すでにつかまって北極におくられた子供たちをいかに救うかというのが第一部Golden Compassの主題である。

 Golden CompassとはGoldでできたコンパスのような器具であるが、別名―真理発見器とよばれ、ギリシャ語の“真理”を意味するアレーテイアからつくられ Alethiometerとかといわれたりする。この器具を扱うのに、一冊の本を熟読して何年もかかって、マスターするということになっているが、このFairytaleの主人公LyraはTrial & Errorで何度か扱っているうちに、またたくまにベテランになり、これを少女Lyraから盗もうとする連中ともたたかうことになる。少女Lyraはこの装置を使って、いろいろ陰謀渦巻く世の中を無事生き抜いていくわけで、それを助けるGhostのような存在もいれば、逆の場合もある。

 第一部はLod Asrielが切り開いた別次元空間をつかって、別の世界に少女が入っていくところで終わっている。

 第二部は少年Willが登場し、この少年とSubtle Knife 不可思議なナイフと呼ばれる、最も恐るべきナイフ、きれないものはないというナイフが活躍する。特別に操作すれば異次元空間が切り開かれ、少年はそれをつかって、活躍する。猫が異次元に抜けるのを見た少年が、今自分のいる世界から別の世界に入ったときに、同じように別の世界からやってきた少女Lyraと出会うわけである。

 このWillが飛び込んだ世界には大人がほとんどいなくて子供ばかりなので、どうなっているのだろう思っていると、おとなが子供には見えない何かにおそわれるのを見る。そして、そのおそわれた大人は、もうZombieのようになってしまっている。この怪物は子供をおそわないが、大人をおそって、そのSoul魂を食って生きているという恐ろしい生物で、今、現在、この二人の子供は、彼らとは関係ないが、第3部の終わりのほうで、すでに思春期に達した二人は、おそわれて、もうすこしでダメになるという怖い体験をする。このSpecterという怪物の創造はなかなか奇抜でGoodだと思う。

 第3部になると、あちこちでこの少年少女を救おうとするLord Asriel側と教会側の熾烈な戦いが行われ、Intension Craft志向装置まで登場する。

 この3部で特に興味深いのは、異次元空間に降り立った Dr. Mary Maloneという女性科学者が、教会側の追跡を逃れて、人間とは違う、穏やかな、平和を愛する生物の中にまぎれこみ、なんとか会話ができるようになって、彼らの中に入って生活する。そして、彼らから信頼され、最大の悩みをきかされる。彼らにとって大事な樹木が枯れて減っていくという話で、Creativeで知性豊かなMaryになんとか、してもらえないかと相談する。彼女は木の受精に必要なDustがどうしたことか、流れ去って、花が受精できないのが原因だとわかるが、なぜそうなるのかがわからない。

 そのうち、MaryはSubtle Knifeをもつ少年と少女に合流し、各地に開いたままになっている異次元空間への窓が原因で、そこにDustが流れ込むためだとわかって、異次元空間への窓を閉めようとする。これをヘルプするのが、Angelたちである。

 一方、第1部で自分がヘルプするつもりでいた少年が父親の異次元空間発見の道具として、殺されたのを自分の責任と感じている少女Lyraは、夢に見たりした死者の国を訪れなければならないと感じ、少年そして、Lordがおくった援護者と死者の国を訪問することになる。これは、まさにダンテの神曲地獄篇への入り口みたいなもので、なかなか面白い。三途の川をわたるのに、Daemonをつれていけないということで、どうしようかと少女は悩む。しかし、結局、亡くなった友達への責任感から、Lyraと離れるのをいやがるDaemonを置いて死者の国へ向かうことになる。そして、いわば救いのない死者の国から、死者たちを成仏できる世界に助け出そうとする。暗闇から、あたらしく切り開いた異次元空間に出てくると、死者たちは自然に溶け込み、元素となって満足して消えていく。

 一方、Lord Asrielは古い権威の世界と命を懸けた闘争を続ける。そして、究極の敵に対して元の愛人と一緒に戦いながら、地底の世界に呑み込まれていく。

 この元愛人がこの少女Lyraの母親で、あるときはお互い敵対し、Lyraはこの女性 Mrs.Coulterを信用していないが、最初はそれとしらずに、一緒に旅をしたりする。映画ではこの絶世の美女の役をつとめるのが Nicole Kidman である。Wickedな悪役ともいえるが、この美女で有能な女性が、教会側のヘルプをする形で、非常なパワーをもって、Lord Asrielと闘うわけだが、一方では娘Lyraを愛するようにもなっており、なかなか複雑な展開をする。

 最終的には、このふたりは悪のために戦いながら死んでいくことになる。

 Fairy Tale, Fantasy Tale,Science Fiction,といった要素をもった大作である。

 私が気に入ったのは、このひとつの空間ではDaemonという自分の分身的なペットをもっていて、別の空間にいたWillは最初、Daemonがいなかったが、それは表面にあらわれていなかっただけということがわかる。このDaemonペットというアイデアはとてもかわいく、私は自分なら何がいいかなと考えて、Peregrine FalconだとかRed Foxのメスがいいなあと思ったりする。そういうFantasyを生み出してくれるStoryである。

 もう一つ気に入ったのは、Dr. Mary Maloneという女性が、異次元空間に入って、人間ではないが、社会生活を営み、特有の言語で平和な村を維持しているという動物世界に紛れ込んで、その友達となり、彼女の知恵と知識で彼らの悩みを解決してやろうとする。平和な、悩みを持った、異次元世界が描かれている。

 そして、もちろん、この少女Lylaの人間的魅力がこの大作をひきつける大きな役目をしている。自分の友達を助けるために北極へ向かう決意をし、そのために、鎧をかぶったクマの助けが必要だとわかると、ひとりでまず追放されたクマに、自分のために戦う意欲を生み出させ、Armored Bearの王国に行って、King Bearをうまく単独で追放されたクマとたたかわせるようにする。Kingは人間がDaemonをもっているのをうらやましがっているという情報を知って、自分があの熊のDaemonだと告げ、King Bearが1対1で戦って、勝てば、自分はKing BearのDaemonになるとそそのかし、結局、追放されていたクマが勝ち抜いて、新しいKingとなり、Armored Bearの王国をかちとることになる。さらに、友達がLord Asreilのせいで、異次元空間を切り開くのに必要なエネルギを生み出す犠牲にされて、死んでしまったために、死者の国をおとずれ、会い、贖罪をしようとし、それを見事に実行する。

 あとで、この子の父親Lord Asrielは、ひとりでArmored Bearに立ち向かい、死者の国を訪問し、Golden Compassを自由に扱える超能力を持った少女を絶対権威の世界が抹殺しようとするのはわかりきったことなので、はじめは余計なもののように扱っていたが、そのうち、生命をかけてこの少女を(自分の娘)を守り、旧悪と対抗して、その世界を破壊しようと努力する。

 1200ページの大作で、いろいろ複雑な内容を含んでいて、簡単に説明紹介するのはむつかしい。第一部は、映画を見ながら、読み進めると、わりとわかりやすくなるというのが私の印象である。ただ、映画はEntertainmentが主で、第一部の内容も充分に展開されていないといえるが、まあ、仕方ないであろう。

 図書館に、読後すぐに返却して、本が手元にないので、ラフな紹介でおわって残念である。わたしにもよくわからないほど深刻なテーマが展開されていたように思う。このDaemonが思春期をすぎると固定してしまうとか、DustとかShadowとか呼ばれる意識を持った素粒子はおとなに密着しており、子供はあまり影響されていないとかで、これを宗教界では原罪としてとらえたり、いろいろな考察を展開する。このSpecterというSoulを食べる怪物も、大人にだけ見え、またSpecterも大人だけ餌食とする。そして、このDustの影響が現れだしたのは3万年ほど前からだといい、異次元の奇妙な生物も3万年ほど前から影響が現れだしたという。人間の意識の展開に影響を与えだした素粒子なのか、何なのか。ともかく、Adventureだけで終わるにはもったないFantasy, SFといえる。

第二部も第三部も映画化されれば見たいと思うが、多分、映画化は無理だろう。

村田茂太郎 2013年4月17日

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