Kristin Hannah の本を読む
このブログで、すでにKristin Hannahの“Comfort & Joy”という本の紹介を行ったが、私は彼女の本が大好きである。
On Mystic Lake が、読みはじめであるが、最近、図書館を利用し始め、図書館にあって私が読んでいない本を全部読むつもりになり、順番に借り出して、楽しんでいる。今のところ、8冊読み終わった。図書館にある残り3冊を読みだす前に、私はその3冊をアマゾン・コムにオーダーした。図書館の本を読んだ後で購入するよりも、彼女の作品のレベルはわかっているのだから(つまり感動的で、感激の涙を流さないではいられないという)、買って読むことにしたわけである。すでに読んだ8冊も、おりおり読み返すために、購入するつもりでいる。
彼女は弁護士をしていて、プロの作家に転向した人(お母さんが彼女の素質を見抜いて作家への道を歩みだした由)で、ワシントン州とハワイ州を基盤に、主に
Washington State を舞台にした小説を書いている。8歳まで、生まれ育ったところは南カリフォルニアの浜辺の近くだったようで、その作品にも
Californiaが関係してくることが多い。最初は歴史的なかたちで Love Story(Historic Romance)を展開していたようだが、Home
Againから現代のワシントンの海岸べりまたは湖沿いの家に住む主人公を中心とした心温まる小説を書いている。
私が好きなのは、彼女の本を読むと、人間の魅力を新しく感じることができ、元気が出るからである。彼女の小説のテーマは、主に Second Chance“第二の人生”であるが、ほかに Redemption 償い、Tolerance寛容、Friendship友情、Family
Tie 家族の絆、Forgiveness許し、そしてもちろん
Power of Love愛情が主な内容である。そして、美しいワシントン州を舞台に、情熱にとんだ、素晴らしい小説を書き続けている。
私は1972年7月、一度だけ、女房とクルマで Seattle,
Washingtonまで訪れたことがあり、そのとき待望の Mount Rainier National Park、そして
Olympic National Parkを訪れ、感激した。そのころのSeattleは特に印象的ではなかったが、Microsoftの Bill Gatesがワシントンを拠点にしてビジネス活動を行うようになってから、Seattleだけでなく、その周辺等、ずいぶん変貌したようである。True
Colorsには壮大な邸宅のあるリゾートの描写がでてくる。
弁護士をしていたせいもあってか、いくつかの小説の中にはその経験を生かした内容がつよく描かれている。
Night Road では、高校卒業間近の少女(18歳になったばかり)が、車の持ち主である若者とその妹が泥酔して、仕方なく、比較的酒量のすくない彼女が運転し、雨の真夜中の森の道で木にぶつかって事故を起こし、友達である女性を死なせてしまう。そのあとの、処理で、責任をとって監獄に入り(つまり、弁護士がすすめる
Not Guiltyを主張しないで)、7年ほどの監獄生活を体験し(情状酌量もなにもないというアメリカの刑法システムの一環がうかがわれる)、非常な苦労をする。この少女の正直な生き方とその苦労、気遣いには泣いてしまうほどであった。その車のもちぬしの恋人との関係で、監獄にいるときに妊娠していることを知り、監獄で出産し、その若者の家に子供を引き取ってもらうか、どこかにAdopt養子 してもらいたいと訴え、Babyは直接、19歳の若者に手渡される。彼女は、そのあと、子供のことは忘れてしまうつもりであったが、きびしい監獄生活をおえて(その間、社会学でB.A.
Degreeを取得)、子供のちかくに行き、隠れて観察すると、子供は誰ともなじまず、ひとりぼっちで、侘しい感じである。彼女の当初の期待、恋人であった若者の愛情豊かな家で、若者の親に見守られて楽しく暮らしているはずという期待が裏切られ、もう、母親としての特権を放棄したつもりであったが、これでは、話が違うと、弁護士に相談して、離婚夫婦がよくやるCustodianの係争に持ち込むことになる。なぜ、娘が不幸な状態にあるのかというと、若者の母親はもうひとりの娘が自動車事故で死んでしまったことに対する苦悩から逃れられず、娘を思い出させる孫への扱いが、どうしても疎遠になる。ということで、いろいろやりとりがあり、前科者で未経験者をやとってくれる場所がどこにもなく、フロリダにいるやさしい叔母のところで働いて、養えるだけのものを身に着けて出直そうと決心をする。そして、最後に若者の両親の家を訪問し、愛を誓った青春の記念の品をおいて去る。親の家にやってきた若者は、それを見て、愛する女がCustodianをあきらめて、フロリダに去っていく決心をしたのだと知り、あとを追いかける。そして唯一可能性のある場所で彼女を見つける。という話である。この中で、アル中とドラッグの母親のせいで、数回
Foster Childになって育った彼女を、最後にやさしくひきとる叔母の存在と、彼女の弁護士として、最後まで相談に乗ってやる男の誠実なひとがらは、この、すこし暗い感じの小説を救う大きな要素となっている。なぜ暗いのかというと、娘を事故で亡くした母親は寛大な夫の意見とは別に
Justice正義を主張して、主人公である18歳の少女を告訴し、監獄に入れてしまうからで、そこからすべてが暗くなる。しかし、今も、思い出しながら、こうして書いていて、その女性の自分の子供に対する思いと、家もなく職もなく、ただ会いたいというだけではだめだとあきらめて、フロリダの叔母のところに移る決心をする場面をうかべると、涙が出てくる。この苦労ばかりしてきた少女の誠実で美しいひとがらは、本当に心をうつ。やはり自分の蔵書としてKeepして時々見直したいということになる。
True Colors では三姉妹の関係がテーマであるが、ここでも、夫が殺人容疑で実刑になり、終身刑ということで、面会に行ったり、再審要求で何度も苦労して、その苦労がもろに生活に現れてくるさまを詳しく、上手に描いている。12年ほどたって、冤罪をはらすのが、一番上の姉で、自分の過ちを認め、やり直すという姿勢が描かれている。しかし、この本のメイン・テーマはこの冤罪ではない。三人姉妹の上と下との愛と確執が主題といえる。長女は少し太り気味で一番頭が良いということで弁護士になり、繁盛しているが、ひとりぼっちで不幸である。高校生の頃慕っていた男が獣医としてかえってきて彼女に会いに来るがそれは彼女が目的でなく、弁護士にあいにきたわけであった。彼女は自分の思いを告げる勇気がなく、男は三女で一番美しい女性にあこがれている。そのため、長女はすなおに三女を受け入れられない。突然にバーに現れた男の魅力に取りつかれて、電撃的にその不思議な男と公然と関係に深入りし、最終的には三女はその身元不明の男と結婚する。しかし、そのまえに獣医と婚約までしていたので、長女の思いは複雑である。したがって、不審な男が妹と結婚し、そのあと殺人犯あつかいされたときも、本格的に妹の夫を助けようとしないで、自分が予告した通りー悪い男であって、もうあきらめろという姿勢を崩さなかった。妹は夫の無罪を信じて何度も上告しようとするが取り上げてもらえない。監獄にも定期的に会いに行っていたが、男のほうから、もう会わないといい、反応もしなくなる。そして、生まれた男の子が成長して、殺人犯の息子としていじめられ、息子は父親に会いたいと思い始める。ここから、冤罪への話が展開し始める。そうして、長女は最初の自分の印象、判断の過ちをみとめ、男の救済をはかり、結果的に成功する。それは、三姉妹の関係が回復するということであった。真ん中の娘は二人の間の調停役をしていたが、実は彼女も家庭に問題があり、夫のドクターがほかの女と関係したりして、離婚に至っていたのである。この三人の父親は世間体や見得ばかり気にする男で、上の二人はそれを見抜いていたが、美しく、かわいがられて育った父親っ子の三女にはそれがわからない。夫が監獄に入れられるようになって、やっと本当の父親の正体 True Colors がわかるという次第である。Kristin Hannahの本はまだ一度も映画化されていないが、この小説は舞台がきれいな自然の中で、ロデオ・ショーや Rough な Love life,殺人、法廷、監獄、・・・と映画化可能なテーマがそろっている。ほかの読者は Firefly Lane の映画化を望んでいるそうである。わたしはまだ読んでいないので、わからないが、映画化するにはストーリーはシンプルなほうがよい。込み入ったテーマは筋を追うだけでおわってしまうので、Nicholas Sparks の ”Nights at Rodanthe”のようにシンプルなストーリーは映画化もスムースにゆくと思う。
わたしが好きな本はいっぱいあるが、Summer Island はなかなか面白い。これは、娘の母親への反抗がテーマで、夫を捨て、娘二人をおいて家を出て行った母親を非難することに生きがいを見出している次女と母親との関係が中心テーマで、母親は今ではラジオ・トークショーで有名になっており、身の上相談もやっていて、人気がある彼女の批判をすることを生きがいにしていたような女性が、ある事件をきっかけに、母親と同じ家に住むことになり、はじめて母親を理解し始めるという話で、非常に面白い。
Magic Hour は、精神分析医の女性が扱った少女が、あるとき学校で銃で何人かを死なせ、自分も死んでしまい、その事後処理を巡って、彼女が批判の対象になり、Mediaから徹底的にやられる。一方、ワシントン州の森の奥からみつかった少女をどう扱うかで、警察のチーフである姉から、その指導を頼まれ、全存在をかけて、その少女の養育にはげむことになり、ようやく少女と信頼関係がうまれたと思っていたら、少女の父親がみつかり、その後のやりとりが問題になる。
アメリカでは学校での銃撃事件は頻繁に起こる事実であり、精神分析医もこうなると大変だなということがわかるが、それよりも、言葉を知らない5歳ほどの少女の信頼を勝ちとる苦労譚がすばらしい。わたしは読んでいて、拙著でも紹介した
Torey Haydenの“One Child”という本を思い出したほどである。
Kristin Hannahの本はアマゾン・コムの読者評では5段階評価のおもに4か4.5となっている。Comfort
& Joyだけが、3.5となっているが、私には理由はわかる。これはすでに紹介したように、サイキックな小説で、主人公の女性が Coma意識不明のあいだに、いわば Astral
Body生き霊のようなものが、実在的に生活をするという話なので、心霊現象の科学にうとい、あるいは批判的な読者は、少し問題があると思ったのであろう。私は気に入ったのだが。
Between Sistersも、Home Againも Distant Shoresも、みなそういった彼女の主要関心がテーマで、どれもすばらしい。
Second Chance第二の人生 が特に中心テーマといえる。
私は全作品を読み終わったわけでないが、図書館で借りて読んだ8冊の本も、自分でもって、いつでも眺められるようにしておきたいので、アマゾン・コムでみな買い求めるつもりである。
探偵小説の領域ではハードボイルド派のRoss Macdonaldが私は大好きで、全作品を英語で読んだだけでなく、何度も読み返している。ある作品など5回か6回読んでいる。みな、最低2回は読んできた。探偵小説で何度も繰り返して読むなどというのはめずらしいことで、私にとってはこのロス・マクドナルドはそれだけの内容を含み、人生に楽しみを与えてくれる作品をたくさん書いていた作家なのであるが、この
Kristin Hannahの本もいわゆるLove Storyの領域で、素晴らしい作品を続々と生み出し、そのいくつかは何度も読み返したいという作家なのである。
ベストセラー作家として登場することになった On Mystic Lake、そのあとの、Angel Falls, The
Things You Do for Love などみな何度も読み返したい作品であり、現に私は2回は読み返している。
従って、図書館で借りて読んだ本も、自分で新しく買い求めて、折に触れて読み返すつもりである。
彼女の小説は、自然と涙が出てくるような内容であるが、ある作家と違って、Happy Endingになるのが普通で、安心して読めるという楽しみがある。もちろん、欠点がないわけではない。たとえば
True Colors は冤罪の話であるが、その男がどれほど過去にうたがわしい生活と犯罪歴を持っていても、はじめから誰も自分の無実は信用してくれないとあきらめて、殺人容疑のまま終身刑になるというのも、わたしには納得がゆかない。やはり、自分は関係ないと主張だけでもすべきであるし、目撃者の刺青の場所が右腕か左腕かで、弁護士はその信憑性を問題にすべきであったはずだが、それを素通りして、最後で別の形で無実を証明するというのは、読者として、少し、納得できないが、まあ、そういうこともあるだろうという感想をもった。
ともかく、楽に読めて(約400ページ前後を1日で読了)、比較的後味が良いので、これからも私は彼女の作品を楽しんでいくつもりであり、機会を作って、彼女の作品をもう少し詳しく紹介したいとも思う。
下記、リストしたのは Historic Romanceではなく、現代の社会を扱った小説で、今のところ、最後の3冊だけは、わたしはまだ読み終わっていないが、もうすぐアマゾンから届くはずなので、すぐ読み終わると思う。そのあと、新作が出版されているが、Paperback の出現を待って、購入するつもりである。Historicのほうも私は3冊ほどもっていて、1冊は読了し、まあ、よかったのだが、今、それらは私のSelf-storageの奥に入っていて、探しても見つからなかった。そのうちに見つけだすつもりである。順番は執筆順かどうか確かでない。
Home Again
On Mystic Lake
Angel Falls
The Things We Do for Love
Summer Island
Between Sisters
Distant Shores
Comfort & Joy
Magic Hour
Night Road
True Colors
Firefly Lane
Winter Garden
Home Front
村田茂太郎 2013年4月22日、23日
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