James Patterson “Suzanne’s Diary for
Nicholas” (2001年) を読む
この本を私の倉庫から探し出すのはあきらめて、図書館を訪問した。この種の本は読みやすいので、すぐに読み終わった。
確か、Suzanneとその幼い息子が、ドライブ中にHeart attack心臓発作が起きて、事故に遭い、死んでしまう悲劇だったなあと思い出していたが、それに間違いはなかった。
ただ、題名はSuzanneで、内容も、ほとんどSuzanneがテーマであったが、もう一人、大事な主人公ともいえる人物がいて、それが最後にはHappy Endingに終わっていたのを忘れていた。
この本を2001年に読みだしたとき、ひとつ気にいった譬えに出遭った。
Five Balls Jugglingの話である。
Suzanneはドクター医者で、まじめにドクター稼業をこなしていたので、ある日、まだ30代の若さでHeart attackに出遭った。そういえば、彼女の家系は心臓が弱いらしく、祖母からして、若くして亡くなっていたので、彼女も自分で要注意すべきであった。
働きすぎたボストンでの病院勤めをやめて、有名なMartha’s Vineyard (Island)に移った。そこで、無理をしない程度の病院勤めをしながら、静養もしていて、SuzanneはMattというおとこに出遭った。ここにMattが二人出てくる。
話は、Katie Wilkinsonという女性がMattという愛する男性に突然理由もなく去られてひとりぼっちになり、Packageを受け取るというところから展開する。
その小包にはMattの手書きの自分あて宛名が書かれていたが、中から出てきたのはSuzanneという女性のDiaryであった。
そこから判明したのは、このMattが、NicholasのDaddyであり、SuzanneのHusbandであり、そして自分Katieの、見捨てられたように感じている今では Former Loverであったということであった。
それでは、MattはSuzanneという妻とNicholasという子供が居ながら、自分Katieと関係を持つようになったのか、過去を一度も知らせてくれなかった男の正体はなになのか。
そして、ゆっくり、このSuzanne’s Diary を読み進むにつれ、状況が解明されていく。
SuzanneはNicholasがうまれて2週間目から、Diaryを、将来、息子が読めるように、息子宛に書くようになる。それは、息子の父親Mattとの出会いなども含めての記録で、息子が成長した時の大事な記録となるであろうということであった。
BostonからMartha’s Islandに移って、すぐに知り合いになったのがMatt Wolfという高校のデート友達であった。20年前、まだ16歳のSuzanneがデートをしたのが18歳のMatt Wolfであった。Suzanneはドクターになり、Matt WolfはLawyerになり、それぞれ別の人生を送っていき、Martha’s Islandで再会したわけであった。
このMattがNicholasの父親になるMattではなくて、二人は間もなく、別れていき、そのSuzanneの家の修理・ペイントにきていた男Matthew Harrisonという男が、実は詩人でもあり、有能な男であることがわかり、Suzanneの愛人そして夫となるMattであった。
Suzanne’s Diaryのなかで徐々に彼女のその後の人生が展開されてゆく。
自分が妊娠していることを発見したKatieが愛人のMattに告白しようとしていて、突然、Mattがいなくなり、SuzanneのDiaryが送られてきたKatieは、SuzanneのDiaryを読み進めるうちに、自分の愛人Mattは、Suzanneという女性を愛し、結婚し、子供まで生まれていたことを知る。
それでは、その後、MattのFamily Lifeはどうなったのか。読み進めていくうちに、彼女の人生がわかってくる。Suzanneはもう一度妊娠したが、心臓がわるいために、死にそうな状態に陥って、流産してしまう。その後も、慎重に暮らしていたが、ある日、記念写真を写真屋からPick upするつもりで、子供を連れてドライブしていて、心臓発作で事故を起こし、子供ともども死んでしまう。
最後に、夫のメモが残されていた。つまり、Mattはそんなに愛し合った妻と子供を同時に失った暗い過去を持つ男性であるということを知ってもらったうえで、新しい出発をする決心をしたということであった。
KatieはMattを探しに出かけ、Mattの友人から、彼もKatieを本気で愛しているということを知るわけである。つまり、悲劇的な内容を持ったHappy EndingのLove Story, Second Chanceの話であった。
この中で、わたしに一番印象的であったのは、ボストンの病院で働いていたSuzanneが過労で、心臓発作で倒れたときに、介護のドクターの一人が話したという、5個のボールを空中に浮かべて遊んでいるJuggler道化師の話である。
5個のボールは名前が、Work, Family, Health, Friends, Integrity という。この5個のボールを空中でお手玉しながら遊んでいるのが人生であるというわけである。
この中で、ひとつ、Workだけは実はRubberゴムでできていて、落としても、壊れなくて、はねかえってくるが、ほかのボールはガラスでできていて、ひどく傷むか、ほとんど壊れてしまうというわけである。したがって、仕事以外のものは心して扱わなければ、二度と取り返しがつかないかもしれないということである。この5個のボールのバランスをうまくとりながら、調和のとれた人生を送ることが、この世を豊かに生きるということである。
Workは大切だが、それがすべてではない、体を壊してまでやる意味はないということであった。SuzanneはボストンからMartha’s Islandにうつって、病院勤めとは言いながら、ボストンと違って、Relaxした状態で勤務し、活性化し、愛情豊かな人生を再出発していたわけであったが、ついに健康には勝てなかったわけであった。
仕事(職)、家族、健康、友人、Integrity。この中で、Integrityが日本語に一言でうまく言い表せなくて、大江健三郎を英訳している友人のデボラー・ボエームさんにたずねてみた。彼女はいろいろ調べてくれたが、やはり、日本語でひとことで言い表すのはむつかしいようであった。Moralを含んだ信頼できる人間性という意味をもっていて、篤実とか、公明正大とか、ともかく、そのひとの信用度を示す意味のようであった。Man of Integrity といえば、英語圏では、立派な信頼できる有能な人間ということのようである。そういうものを含んだPositiveな意味での人間性といえるであろうか。道徳といってしまえば、何か物足りない気がする。
ともかく、この5個のボールの逸話を生かしながら、Love Storyを展開してあるのであった。話は単純で、少しミステリー的内容をもたせ、Simpleで印象的な物語となっている。
この、James Pattersonという怖い犯罪の物語ばかり書いている作家が、一方ではSimpleなLove Storyを書いているというのは、興味のある現象である。
この物語もSecond Chanceを扱ったものであった。同じ著者のSam’s LettersもSecond Chanceを扱っていた。私の好きな作家Kristin HannahもSecond Chanceとか、Power of LoveとかForgiveness許し,Redemption償い といった内容を展開していて、とても心が温まる。
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Memo on “Integrity”:
非常に重要な言葉で、その複雑な内容を踏まえた意味はわかるのだが、5個のボールの“仕事”、“家族”、“健康”、“友人”というように日本語の単純な言葉におきかえようとすると、どれが適当なのか、よくわからない。わたしは篤実とかかなと思ったが、デボラーさんの意見では、違うようだ。
以下、参考までに、わたしのデボラーさんとのやりとりの、彼女の結論を引用させてもらう。日本語のほうは私の、意訳つき意見である。
First, about
integrity: I never realized how difficult this word would be to translate,
since I usually only do Wa-Ei translation. 大江健三郎を英語に翻訳(取り替え子 Changeling)できるほど日本語をよく理解しているデボラーさんだが、あらためて訊かれるとむつかしいとわかったという。
Truly, this is a
subtle word. この言葉は実に意味深長な言葉である。
It isn't a synonym for
morality or sincerity, but it usually involves morality and sincerity. 道徳だけでなく、誠実さももちろん含まれているようだ。
It's like a Medusa
riddle!
I found something
online when I looked for some sample sentences with 篤実 just now. I
don't know if it will be helpful.
(By the way, my J-E
dictionaries define 篤実 as "sincerity or faithfulness," so
that isn't quite right.) 篤実は適切ではないと思う。
誠実(せいじつ)
篤実(とくじつ)
真摯(しんし)
忠実(ちゅうじつ)
⇒ 類語辞書で詳しい使い方を調べる
Honestly, I think the
best approach is to use the English word, and explain the meaning in
parentheses. You are welcome to use my explanations without credit, but they
might be too informal. It would be better to use a dictionary definition. したがって、英語をそのまま使うのがベストだという意見である。デボラーさんのこの説明を使ってよいという許可をいただいたので、ここに引用している次第である。結局、英語の辞書の定義をそのまま使うのがよいだろうという。
I have my father's
classic old Webster's Dictionary, and it defines "integrity"
as: "Moral soundness; uprightness." EnglishのProfessorであったお父さんのWebsterの辞書には、Moral soundness, uprightnessと書かれているようだ。道徳的、正直さ。
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The modern edition of
Merriam-Webster defines it as
1 : firm adherence to a code of especially
moral or artistic values : incorruptibility Merriam-Websterでは道徳的のほかにArtisticValues美的なもの、Incorruptible つまり、腐敗しない、買収されない、清廉潔白なひとであること。どうやら、このIncorruptibleがIntegrityを英語で置き換えたときに最適な言葉ように私(ムラタ)には思える。
2: an unimpaired condition
: soundness 損なわれない、健全さ。
3: the quality or state of being complete or undivided : completeness 分割されない、完全さ。
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The "five
balls" theory is referring to definition #1, but it probably means both
moral and artistic integrity (if someone is in the arts). デボラーさんは、この5個のボールでほのめかされているIntegrityの意味は、#1にあたるのではという。
I forgot that
integrity can also refer to artistic values, because I usually think of it in
relation to morality or ethics, and behavior.美的なValueを含むということを忘れていた。
I somehow feel there
is an element of 正しさ。
Anyway,
"incorruptible" is probably a good synonym. 結局、デボラーさんも、#1にあげられている、”Integrity”に匹敵する言葉として、“Incorruptible”だというご意見である。IntegrityからIncorruptibleにおきかえられると、これは比較的日本語にうつすのも簡単になるーつまり“清廉潔白”とかという意味がアメリカで日常的に使われる場合の意味といえる。家族も大事、健康第一、友人も大切、仕事も必要、そしてIntegrity人間としての威厳を失わないこと、この5個のボールをいつもバランスをとりながら生きていくのが大切であり、仕事以外はFragileなガラスでできているから、特に大切に扱わねばならないということ、それがSuzanneがHeart attackの苦悩から学んだことであった。
For example, if a
police officer or a politician is crooked and/or is taking bribes, they are
often described as corrupt or lacking integrity. 警官や政治家が腐敗しているときにIntegrityに欠けると使われるようである。
ということで、Integrityを健康とか家族といった2字または4字の簡潔な日本語で示すことはむつかしいようである。清廉潔白もどうも道徳的すぎるようであるが、近似値としては、これかなというのが今の段階の私のチョイスである。あるいは”人間性”、”人間的”という非常に抽象的で意味多様なことばも、あてはまるかもしれない。
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