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12/27/2014

Kristin Hannah 「Once in Every Life」を読む


Kristin Hannah Once in Every Life」を読む

 この本は1992年に出版され、彼女の第三作目のHistorical Romanceである。私が購入したのは2001年で、多分、Historical Romanceという理由で読まないでいて、そのうちStorage の箱の中に隠れてしまって、2014年、ようやく見つけ出した次第であった。

 機が熟すという言葉があるが、何事にもそれは当てはまるようである。今、かなり膨大なSuper Natural, Parapsychology, Super Nature, Paranormal、心霊現象の科学に関する本を読んだ段階で、この本を読んでみて、なるほどと納得がいくのである。

 これは小説としてはほとんど完璧な作品で、見事であり、感心するばかりであった。

 Kristin Hannahは1996年のHome Againで現代ものを書き始める前はHistoricalな小説6編を出版したようである。私は第八作目のMystic Lakeを読んで以来、Kristin Hannahの本のフアンになって、現代ものは、最近作以外は全部購入して全部読み終わり、ある本は2回または3回以上読んで、そのたびに楽しいときをすごすことができた。

 Historicは今のところ6冊全部買ってあるが、(つまり最近作以外は全部―21冊購入してあるが)、Historicalで読み終わったのは3冊である。第一冊目の A Handful of Heaven は19世紀末アラスカにGold Rushが起こったころを舞台にしたLove Storyであるが、彼女の作品は第一作目からすばらしい。

 さて、この第三作目の作品「Once in Every Life」であるが、Prologueは1873年と記されている。San Juan Island, Washington. Chapter1Seattle, Washingtonで1993年である。

 Prologueでは、子供を持った、家庭にトラブルのある、まだ若い男が、なぜかある行動の記憶をなくして家の納屋で気がつき、ガンで自殺しようとして、子供によびかけられ、思いとどまるという場面が描かれている。

 第1章は1993年の出来事で、Tess Gregoryという若いMicrobiologist Ph.D. の女性が雨の降る歩道に出て、ぬかるみに足を奪われ、バランスが崩れたところへ自転車がぶつかって、道の真ん中へ押し出されたところへ、まん悪く、バスが来て彼女にぶつかってしまった。

 意識不明の状態で病院に運ばれたが、生死は不明である。気がついたように思うと、別世界Middle Spaceにいて、どうやらGuideらしい女性Carolが話しかけている。あなたにはSecond Chanceが与えられるから、どれかをえらびなさいというわけである。そして、彼女の目の前にいくつかの男性のイメージがあらわれる。時代はなにも現代とは限らない。中世風のよろいをかぶったKnightのような男性もあれば、現代のビジネス・ワールドで生きている男性のイメージもある。彼女がえらんだのは、苦悩を持った男が子供たちに慕われながら自分から逃げるようにしている若い男の世界であった。

 Tessは、なんと、男の妻が出産したばかりという女性のからだに入り込んで生き返ったのであった。1993年ではTessSingleで一度も男から本当に愛されたこともなく、恵まれた家庭に住んだこともない、不幸な女性であった。どうやら、彼女は7歳のころ病気Meningitisで聴覚を駄目にして、耳が聞こえないというHandicapもあるため、Foster Careの家庭を転々として、苦労して、ドクターまで取得したが、結局、家庭生活に恵まれない不幸な人生であった。

 20世紀終わりの現代社会に生きるドクターとして、現代の文明の利器をすべて知っている人間のまま、19世紀後半にタイム・トラベルしたような形で生き返ったわけである。

 結局、この出産したばかりの女性の肉体は、アメリカ南部の美貌をそなえた女であるとわかってくる。しかし、男Husbandも二人の子供たちも自分を恐れている風である。彼女が状況を把握するまでには大分時間が必要であった。

 どうやら元の女性はアマリリスAmarylisとよばれる貴族的な女性で、夫も子供も嫌い憎んでいたらしく、いまや出産をおえて、妻がまるで生まれ変わったように性格もちがっていることを確認するのにさまざまな体験が必要であった。子供たちも母親が今までと違っているのに割りと早く気がついたが、彼のほうはもっと時間がかかった。子供たち(女の子)は新しい母親が今までと違ってやさしく愛情に満ちているのを発見して、うれしくなり、だんだん彼女・母親になついてくる。

 どうやら夫は南北戦争の後遺症をもっているため、花火の音や騒がしい音をきくと、自分を見失って虚脱したまま放浪する形となるのがふつうらしく、20世紀後半にはじめて解明されたといえるPost Traumatic Stress DisorderPTSD)の被害者で、過去を隠さないで直面する必要があるのにたいし、南北戦争の医者は誰にも言うなといっていたため、いつまでもその症状から回復しないのであった。

 Tessはそれがわかっているので、夫に安心して告白すればよいというのだが、それに時間がかかった。今までの妻と根本的に違った新しい妻だとなっとくするまでに、妻への恐怖を克服する必要があった。以前の妻は夫を安心させておいて、手の込んだ復讐をするという女性で、その恐怖症から抜け出すのが一苦労であった。

 結局、祭りのあと、祭りの騒音の中で異常反応を起こした夫はどこかへいってしまい行方が知れない。そして、われに返ったあと、家に帰りついたが、そのとき、村人がどこかの夫婦が惨殺されたという知らせを持ってくる。血のついた上着などから、自分が犯人だと思った夫は自首して出て、牢に入る。AmarylisをやめてLissaと名乗っていた彼女は、夫が犯人だとは信じないで、村人に訴える。

 結局、夫を信じる妻の愛が夫の信頼をかちとり、自分は犯人ではないかもしれないと思い始める。そうしているうちに、ほかの証拠から犯人らしき男たちが捕まる、自供もあって、夫は犯罪とは無関係とわかり、釈放される。後遺症のために、かわいい子供たちを知らないうちに傷つけるのではないかとおそれて、子供たちに打ち解けることができなかった夫は、いまや愛する妻とかわいい子供たちに恵まれた幸運な夫だと自覚する。家庭に平和がもどり、愛情と信頼に満ちた生活が始まるのであった。

 この間、彼女のほうは子供たちの信頼をかちえて、自分の生まれたばかりの子供をしっかり育て、文明の利器のない社会で、その村の生活にふさわしい生き方を身につけてゆくのであった。

 夫だけでなく、いままで、家族の愛も男の愛も知らないですごしてきたDr. Tess Gregoryにも、はじめて家庭の愛情に恵まれた美しい世界が開かれたのであった。

 再びGuideCarolがクリスマスに出現して、このSecond Chanceがどうであったか、20世紀の現代社会にもどるかどうかを訊ねるのであった。もし、この男と家族の生活を選ぶなら、今度は20世紀の自分が生きていた世界は完全に忘れ去ることになり、子供たち、夫との生活を続けることになるというわけである。現代人として、愛情にも家庭にも恵まれない生活を続けてきた彼女には、今初めて味わった家庭の愛に満ちた生活はなによりも尊いものであった。彼女は今彼女が見出した世界を選ぶとガイドに伝えるのであった。

 この話は事故に遭って生死をさまよっている人間が、別の世界のガイドの導きでタイム・トラベルをして、出産をして死んだばかりの女性の体に入り込み、生き返って、1873年、南北戦争のトラウマを持つ夫とその子供たちとの生活を始め、20世紀に学んだPost Traumatic Stress Disorderに対する療法を適応して、うまく生きがいのある生活を築いてゆくという話で、単純なタイム・トラベルの話ではない。

 魂がいれかわるという話は最近紹介したWalk-inの話に通じるものがあり、また死に掛けたときがそういうことが起きるときであるといわれている。

 この小説は現代から自然な形でタイム・スリップして百年以上前の世界に入り、夫の戦争後遺症で元の妻が拒否反応を起こし、そのため、男の家庭全体が悲惨な状態になっていたとき、丁度、死に際から生き返ったために人間が変わったようになった妻として、まったく新しい生活を始め、愛情のある世界を築いていくというLove Storyとなっている。

 いまでは、出生前、誕生前にSoulが相談しあって、どこに生まれるか、Planをして生まれてくるということが、Past Life Regressionでわかるようになっている状況である。したがって、生死不明の状態で、同じ現代社会で、どこかに生まれ変わるとか、死にそうな人間の魂のいれかわりとして第二の人生を生きるということも起こりうるような話である。これがたまたま過去に生きるというところが面白いところであるが、Afterlifeでは時間がなく、過去も現在も未来も同一であるということであれば、この話のように過去を生きることも可能に見えてくる。つまり小説とはいえ、一応の信憑性をそなえた話として構成されているといえる。

 Kristin Hannahは現代小説Home Againでは心臓移植の影響を考慮した、まさにClaire Sylvia(心霊現象の科学-その68)が心肺移植で感じたような症候をちゃんと小説に生かして展開しており、Comfort & Joyでは、よりSupernaturalな現象を扱うという具合に、かなりサイキックな世界に通暁した人である。Nicholas SparksSafe Havenでは死んだ女の亡霊が実在の人間のように現れて女主人公を見守り、一件落着を見てから消えていくという話を展開しており、サイキックな内容であり、The Best of Meでは、亡霊のような存在がつきまとったりということで、現代のParanormal, Supernaturalな要素を小説の展開の重要な要素としている。

 ともかくこの小説「Once in Every Life」はLove Storyをタイム・トラベルの形で展開し、しかも戦争後遺症に対する現代的な療法を適応させて、Historical Romanceを超えた世界を展開しており、その自然な導入と展開はみごとなものであり、子供たちとの関係もうつくしく、とても魅力に富んだ物語であった。

 この本の読者の感想文Book Reviewに、何度も(7-8回)読み返していると書いている人、5段階評価の5を与えている人が沢山居ることなどから、私同様、この小説のすばらしさを直に感じ取っている人が沢山居たということがわかり、わたしも同感で、うれしく思った。

 ともかく、見事な、すばらしい作品であった。

 

村田茂太郎 2014年12月27日

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