2023年の感想 12月8日 つづき その3
2023年は私の友達に教えられてYouTubeで日本の昔の歌謡曲を鑑賞できるようになった。
ワイフ生前は歌謡曲を聞くなどは不可能であった。ワイフは日本の演歌など大嫌いであった。
何故か?確かに歌謡曲の歌のセリフは女が苦労したテーマがいっぱいである。
強い女、ワイフは日本の歌謡曲がほとんど女の苦労話で満ちているのが馬鹿らしくなったのであろう。
ところが、私は中学時代、高校時代に聞きなれた流行歌が大好きであった。
もちろん私はクラシック音楽は大好きで高校時代にクラシックになじみ始めてからは、Mozart,
Mahler, Schumann, Bruckner など大好きであった。
しかし流行歌の良さは、まさに流行がある、つまりそのそれぞれの歌が巷に流れていた時代を生きていた自分の姿がよみがえってくるということで、中学時代に好きになった三橋美智也の歌をきくと、そのころの自分が思い出されて懐かしく感じる。
あるとき主婦の雑誌 平凡 の付録に 歌謡曲集 があると新聞に出ていて、「おかあちゃん 平凡 買って?」と頼んで、「お前、アホか、勉強の参考書ならすぐにでも買っていいが、歌謡曲集が付録にある雑誌 平凡 など、とんでもないことだ。」としかられた記憶がある。中学1年のころで、声のきれいな三橋美智也に魅せられていたわけだ。
今もYouTubeで三橋美智也やその他の昔好きだった歌手の歌がレコードのように歌だけでなく、歌っている姿を見ながら聴くことができるのは本当に素晴らしいと思う。
必ずしも歌手の本人が歌っていなくてもよい場合もある。
「港町ブルース」 を、着物を着た5人の歌手が歌っているのは素晴らしいと思い、YouTubeで簡単にアクセスできることを私は喜んでいる。しかし分析的にみると歌詞の最初に出てくる ―あなたにあげた夜を返してーというところなど、ワイフにいわせれば馬鹿らしい、女自身を侮辱しているということになる。どうしたことか流行歌には女が捨てられて男に苦労したテーマがほとんどである。なるほどワイフが嫌うはずだと私は思う。もちろん、ほとんどの歌詞は男が書いたものであり、男の願望が記されているというべきか。
しかし、―背伸びしてみる海峡をー という出だしは私はとてもかわいいと感じ、初めて聞いた時から好きになったので、いつ聞いてもかわいいと思う。
三橋美智也の「おさげと花と地蔵さんと」という歌は絶唱だと思い、三橋美智也の歌の中で一番好きといえるものである。「指を丸めて覗いたら 黙ってみんな泣いていた」 という歌い始めが特に素晴らしい。私は大阪市生まれで、いわゆる田舎の生活というのは知らない。しかし私が育ったところは小川が二つ流れ、小学校も中学校も田園・田んぼの中にポツンと建っていて都会という感じではなかった。いわゆる子供の遊び、小川でふなをとり、トンボ・セミ、蝶を追いという遊びに親しむことが可能であった。ともかく、三橋美智也の声は透き通てきれいなので、いつも感心したものであった。
ということで、流行歌はそれらの歌を聞きなれていたころの自分自身を思い出せるという長所があり、懐かしく思うことになる。
もちろん流行歌でなくて、MahlerのSymphony
#1をテープに吹き込んで繰り返し聴いたこと(高校3年生のころ)もそのころの思い出につながるので、あながち流行歌だけというわけではないが、流行歌は巷に流れていて、より親しみやすいせいかも。
三橋美智也の歌では 哀愁列車、リンゴ村から、古城 などをYouTubeでよく聞く。皆素晴らしい。そして京都大学の学生であったころ、私が心で好きと思っていて言い出せなかったクラスメートの女性が、当時歌われだした「骨まで愛して」が好きだと言ったのを聞いて、私は流行歌を見直し始めた。これは作詞者は女性らしい。女の、愛を求めて生きる苦労をうたった歌で、こんなものを好む女性ということは、彼女も本当の愛を求めているのかという驚きであった。そして、そのすぐあと彼女が自殺してしまい、私は本当に苦しみ、立ち上がるまでに半年ほど悩み続けたのであった。
そこで私は 骨まで愛して のほかに、君こそわが命 誰よりも君を愛す ここに幸あり からたち日記 アカシヤの雨が止むとき 初恋の人 希望 などが好きになり、今、YouTubeで大津美子やペギー葉山、三浦滉一、春日八郎 その他の懐かしい歌を簡単に聞けるのはありがたい。ワイフは ペギー葉山の歌った 南国土佐を後にして が大好きであった。日本を離れて異国に生きる自分を励ましていたのか?
ともかく、日本の流行歌はすばらしいと私は思う。
「日本の詩情 流行歌2200曲集」 という本がある。1984年に古本で買ったと記録してある。あさひ学園で時々、父兄が古本を処分した時があり、それを安く買ったにちがいない。これが懐かしい流行歌のほとんどすべてが記載されていて、今や私の大事な参考書のようなものである。歌の記載だけでなく作詞者や作曲家そしてはじめて歌った歌手の名前が載っているから、私の記憶を確認できるわけである。
日本に居た時は年末の「NHK紅白歌合戦」を楽しんでいたが、アメリカに住むようになってからは、NHK紅白歌合戦 を楽しむということはなくなった。アメリカに居ても、見ようと思えば見れるはずだが、なにしろワイフが興味を示さないということで、日本の流行歌とも疎遠になった。だから日本の人気歌手が亡くなったときいても、何の反応も示さないことになる。流行歌というのは、ただそれが流行っていた時というだけでなく、それを聞いて楽しんでいたという自分があって、はじめて流行歌の価値が出るということもわかった。
昔はやった流行歌をこうしてYouTubeで楽しめるというのはありがたい。ワイフもいなくなり、誰にも遠慮しないで、これから三橋美智也の歌や美空ひばり、その他、昔私が楽しんだ歌を歌手本人が歌っているを見ながら聴けるのは素晴らしい。Digital
ageに生きている良さを実感できるときまで生き延びたということも素晴らしい。私のたくさんの友達やクラスメートが早くなくなって、話し合える機会がなくなったのは残念だが、生きている間に流行歌で昔を思い出しながら余生を楽しもうと思う。
村田茂太郎
2023年12月9日
No comments:
Post a Comment