「心霊現象の科学」をめぐってーその73 Carol Bowman「Children’s Past Lives」を読む
Ph.D.をもっているわけではないようだが、研究者としては立派なもので、見事な成長振りを示した人である。探究心の旺盛、分析の徹底振り、総合化の見事さ。感心するばかりであった。
Reincarnationといえば当然のことながら、その研究の大家であるDr. Ian Stevensonがでてくるわけであるが、直接、Dr. Stevensonにコンタクトしたり、Reincarnationに関する学会に直接参加して、自分の関心の領域にくわしいという、異国の女性の研究者とも直接会って話し合い、Reincarnationに関する研究書はほとんど読了するという徹底振りである。すでに、このブログの“その71”で取り上げたJenny Cockellの本も、まずこのCarolBowmanの本で取り上げられているのを見て、私も興味を持ったのであった。
この本はしたがって、代表的なReincarnation研究者の本がたくさん紹介されることになり、Dr. Stevensonの有名な「Twenty Cases suggestive of Reincarnation」、「Children Who Remember Previous Lives」の内容がたくさん紹介されているが、ほかにPast life Regression Therapyで有名になったDr. Edith Fiore「You have been here before」やDr. Helen Wambach「Reliving Past Lives」など、そしてJungian PsychologistでPast life の研究に入っていって、代表的な本「Other Lives, Other Selves」{“Jungian Psychotherapist Discovers
Past Lives”}をあらわしたRoger J. Woolger, Ph.D.の本を読んだだけでなく、Philadelphiaから、FloridaにいるDr. WoolgerのWorkshopに参加までする。このWoolgerとの出会いも、Synchronicitiyといえるもので、友人の女性の家を訪問していて、Reincarnationの話に熱が入って大きな声で話し合っているのに興味を持った友人の夫が話しに加わったところ、彼の友人がこのPast Lives研究に詳しいJung派の精神分析学者Dr.Woolgerで本を出しているということから、その付き合いは始まるわけであった。What a Coincidence! と、その友人は言った。もちろん、Coincidence偶然の一致などというものは無いのであって、すべては予定通りCarol Bowmanが知識と経験を蓄え、この本「Children’s Past Lives」を世の中に出版する方向に向かって動いていたのであった。
Carol BowmanはたくさんのPast Livesに関する本が紹介されているのを知ったが、自分に関心のアル、このPast Lives を再生することで生まれる治療的効果―Healing Powerに関して、特に子供の前世の記憶再生による病状治癒に関するデーターをまとめた本が無いことに気がつき、自分がそれをやろうと決心したのであった。つまり、世の中の母親は、子供の成長の中であらわれる異常な反応をまじめにとりあげないで、大事な機会をなくしていくケースがほとんどで、惜しいことである、世の母親すべてに、まだ幼い子供の成長期に現れる特異な反応に気がつき、それに対して適切に反応できるようにしたいということであった。
彼女もこれでReincarnationが学問的に証明されたとは思っていない。「Proof is not the point.
Healing and Growth and Understanding are the point」. (P.199)そういうこで、彼女にとっては、本当にReincarnationがあるのかどうかは問題ではない。大事なのは、過去のさまざまな人生らしきものを再生することによって、現在の肉体的精神的問題が治療されるケースが多いということである。 それはDr. Brian Weissが「Many Lives, Many Masters」執筆に至る一女性との出会い、そのHypnosisの中で気がつき、このReincarnationの研究に踏み込んでいくことになった理由でもあった。過去のさまざまな人生をもう一度体験することによって、その女性は現在かかえていた、そして治療不可能と思われていた問題・悩みが解決したのであった。
Carol Bowmanは、自分の子供が異常な反応をしたのに気がついて、それを調べ始めたのが、このPast Livesの研究に入った一番の動機であり、それを徹底して、まず自分もPast-life regressionのHypnosisを受け、過去の人生を生きることによって、今、自分が抱えている健康上の問題がほとんど治癒されてしまったことを確認し、また自分の幼い息子と娘もHypnosisを受けることによって、持病といえた症状が消えてなくなったことから、過去のLifeを再生することによって、いろいろな問題が解決されるということを確認し、さらに研究対象をふやすために、自分でHypnosisを学んで、親の了解の元に、近所の友人・知人その他数多くの子供たちを相手にPast life Regressionを施し、ほとんどの子供がみなPast-life Regressionをすると過去の人生を思い出すのがわかり、子供を主題にした本にまとめようと考える。そして、ほかの有名なReincarnationの研究家たちとも会って、まだ子供たちをHypnosisで過去にさかのぼることによって、その子供の抱えている病気が癒えるということを本に表した人はいないということを確認して、では自分がその本を書こうということになったわけである。
博士号は持たなくても、まさに科学的な心を持った人が自覚的にたどる理想的な道を貫徹したような女性で、まったく立派なものである。科学的な探究心を持った人間が、自分の身近な現象のなかから、関心を起こされた領域に関して、興味をもって徹底的に探究を進めたというひとつの偉大な例といえるだろう。今では、彼女の名前と本とはReincarnation研究書のなかでも、一つの重要な位置を占めているといえる。
2歳や3歳のまだ幼児といえる段階で、すこし言葉がしゃべれそうになるやいなや、母親に向かって「自分が、あなたのお母さんだったとき、そんなことはしなかった」とか、「自分が大きかったとき」あるいは「まだお母さんの胎内に入る前に」とか、「ここで事故にあって死んだのよ」とか、「もう二度と戦争にゆかない」と言い出したら、誰でもギョッとするにちがいない。多くの母親は妄想、空想ですませてしまうために、せっかくのチャンスを逸してしまうことになるようである。
Carol Bowmanもある時期になって(5歳のころ)、男の子がIndependence Dayのときの打ち上げ花火の音に対して、異常な反応を示したことから、まじめな関心がうまれ、それが、自分の息子の過去のLifeで、黒人で南北戦争に従軍するなかで戦死したということがわかり、それにともなって、子供が持っていた特有の肉体的病状が回復したそうである。
娘のほうも同様で、前世では家の火事で焼け死んで、親が助けに来なかったという思いが強く残って、今の母親にもどことなく信頼しない態度がつづいていたが、このPast lifeの記憶のおかげで、なぜ今まで火がこわかったのかという謎も解明され、母親との関係もよくなったと書いている。
そして、彼女は子供のPast life memoryが空想でないということを判断できる基準として、4つのサインをとりだした。
1 まるで当然のことのような表現
2 一度だけというのでなくて、何度も同じ話をくりかえす
3 2歳や5歳の子供が知っているはずが無い知識が展開される
4 また、その話に対応する行動が展開される
当然のことながら、すべてのPast life memoryがこの4つのサインを含んでいるとは限らない。これらの4つのサインがReincarnationを科学的に証明するという話ではない。個人的に納得するという話である。そして、それが持病のような疾病や癖、特殊反応などを自然と治癒することになるということのようである。
このReincarnationかどうかという問題に関しては、彼女がつきあうことになったJung派分析学者Dr. Woolgerの「Other lives, Other Selves」でまともに、簡潔にではあるが取り上げられている。いずれ、このブログでも紹介するつもりである。Dr. Woolgerはユングをよく学んだひとらしく、ユングの有名なCollective Unconsciousness, Archetypeなどをまじえながら、この過去のLifeのMemoryがReincarnationではなくて、集合無意識その他、Akashic Recordにぞくするものであると考えているようだ。しかし、彼もまじめにこのPast Life Regressionと取り組んでいるため、Orthhdocsのユング派学者たちからは、つまはじきされているらしい。その点、そういうことを恐れないで、立派なPast Life Therapyに関する本を書いた彼は賞賛に値する。
私がこのブログのどこかで、自称科学者たちの科学者といえないような反応振りを天動説のプトレミー段階にたとえ、ESPや霊魂不滅をみとめれば、地動説のように一挙にすべてがときあかされるという話を書いたように思うが、彼のこの本のなかに、こちこちの狂信的な科学者を、地球を平板だと信じてうたがわなかった昔のえらい人たちと同じようにみなしている文章に出会って、思わず笑い出してしまった。
ともかく、このCarol Bowmanの本はすばらしい本であり、ものすごく面白い。世のすべての父親・母親がこの本と親しみ、自分の子供が特異な反応を示したときに(特に生後から6歳ごろまでに)、子供の無邪気な空想として片付けないで、まじめに取り上げ、自分で冷静に分析する態度を保持することが望ましい。そうすれば、子供の成長にとってかけがえの無い資料が展開されていることを学べるであろう。
この本を読むと、自分の子供を生み育てる楽しみが倍増するような、興味深い話である。
ほとんど終わりに近い箇所で著者の友人Lisaの娘Courtneyに関する話が述べられている。
ある日、息子が年上の姉のAubreyがまだBabyのときの写真を見ていて、自分はこの写真が撮られたとき、どこにいたのかしらとたずねたら、Aubreyは、あなたは天国にいて、Babyで産まれるのを待っていたのよと応えた。それをきいたCourtneyが、そうじゃない、そんなふうにはゆかないといった。そしてもう少し詳しく自分の意見を展開し始めた。天国に行くと、すこし休憩時間がある。それは休暇をもったようなもの。そのあと、あなたは働かねばならない。あなたは次の人生で何を学べるかを考え始めなければならない、そして、あなたが次の人生で学びたいことが学べるような親を選ばなければならない。天国はあなたがいつまでもぶらぶらしていられるような場所ではない。リラックスして、生まれ変わるというようなものではない。そこでは、しなければならないものがあるのよ。このときの、Courtneyの口調はまじめなものであった。これが4歳半の子供がしゃべった内容とは思えないほどであった。
Courtneyが6歳のとき、TVで強姦殺人犯が死刑になるというニュースが放映されていて、その死刑囚の母親が悲しんでいる様子が写っていた。母親はそれまで注意していなかったが、娘が、どうしてこの母親が泣いているのかをたずねたので、あまり強姦という言葉に触れないようにしながら、なぜ死刑囚になったかを説明した。すると、Courtneyは、彼女(死刑囚の母親)はちっともわかっていない、だから悲しんでいるのよといったので、わかっていないってどういうこと、と母親がたずねると、Courtneyは以下のように応えた。この男のように自分の人生をめちゃめちゃにしてしまった男にとって死ぬことは実は罰にはならない。なぜなら、彼が死んだら、また別の人生を出発することになり、彼が過去にした悪いことの記憶も持たないで、新しい家族の中にNew Babyとしてスタートするのだから。そして、それは彼のエネルギーを浪費しないことになるから、彼にとってはとってもよいことなのよ。そして、新しい人生を送るとき、彼が学ぶべきことが、よりたやすく学べるのよ。この母親はぜんぜん、わかっていないのよ。もしわかっていたら、こんなに悲しむことは無いのだから、といって、Courtneyは部屋から出て行った。このとき、彼女は6歳であった。このときのことを話すだけでも、自分は鳥肌が立つ思いがする。彼女が言ったことについて深く考えるのに、自分は3時間ほど費やした。これは6歳の子供がしゃべるような内容ではない。自分たちはPresbyterianだが、こんな話は自分たちにも思いもよらないことであり、こんなことを家の中で話したことも無い。すべてCourtneyが自分の言葉で展開したものである。。。。自分は、自分よりもはるかにSoulのレベルが発達した子供を持っていて、自分のほうが6歳の子供よりもはるかに子供だと感じた。。。 と著者に語った。
Carol Bowmanにとって、すべてが始まったのは、彼女の幼い娘と息子がキチンでしゃべったことを信じたからで、もし信じないで、見過ごしていたら、今の自分はなかったのは確かである。
私は拙著のなかで、エドガー・アラン・ポーの名作「メールストロームの渦に呑まれて」を分析しながら、科学の心について語った。新しい現象に直面したとき、どう反応するかで、その人の人生がかわることがある。このポーの架空の話の中では、話手である男ひとりが、科学の心を持っていたため、生き延びることができた。それは、目の前にある現象を冷静に観察し、分析することから始まった。
Carol Bowmanもキチンでしゃべった子供の奇怪な話をまじめに受け取り、興味を持ち、徹底的に調査し、深く研究し、分析し、資料を集めることから、それまで誰も意識的にやらなかったことをなしとげた。それはこの本と第二作が証明していることである。まさに、科学の心をもった人間のひとつの生き方の証明のようなものといえる。
ともかく、情報がいっぱい詰まった、面白い本であった。世の中のすべての人に推薦したい。
村田茂太郎 2014年1月28日
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