「心霊現象の科学」をめぐってーその68 Claire Sylvia「A Change of Heart」(A Memoir)を読む
これは非常に有名な本である。本は1997年に出版されたが、彼女の話はそれ以前から有名であったにちがいない。
彼女はNew Englandではじめて“心臓と肺の移植手術”を受け(1988年)、手術後にはTV NewsでInterview が行われたので、ある意味ではセレブのひとりとなったといえるような存在であった。
手術は大成功で、もし移植手術がなければ、まもなく死んでいたであろうといわれた彼女が生きながらえて、この本を出版するに至ったのである。
これまで現代科学は、心臓は血液を送り出すポンプであり、意識や情緒反応、性向などは大脳での機能の結果であるとみなしてきた。
したがって、そういう見方からすれば、心臓を移植すれば、血液を送り出す機能が回復しただけで、別にほかの機能に差異が現れるはずはないということであった。
しかし、実際はどうであったか。
手術に至るまでの経過については省略して、成功した手術後の彼女の反応について述べよう。ふつうは検査してRegisterしてから臓器供給の相手がみつかるまで、長く待たねばならず、待っている間に死んでしまう不幸なケースも多いのだが、彼女の場合、そういう縁があったというのか、Registerしてすぐその日に今日・明日に手術可能だという連絡があって、病院に運ばれた。運があったということか、これも最近のSoul’s Planによれば、そうなることが決まっていたということだったのかもしれない。まさにCase・Studyといえそうなかたちをとり、このすばらしい本があらわれることになったのだから。
彼女が知らされたのは18歳でMotorcycle事故で死亡したMainメイン州の青年の心臓と肺を貰い受けたということであった。
Mediaの手術後のInterviewで、今あなたは何が一番ほしいですかときかれて、彼女は反射的に、実際、今、一番ほしいのはビールを飲みたいということですと応えて自分でその応えにおどろいた。なぜなら、彼女は、ビールはすきでもなかったのだ。
そのあと、性格の変化が自分でも自覚できた。男のような性格になり、より積極的で自己を主張するかたちになった。そして、歩き方まで男のようだと自分でも感じ、娘からも指摘されることになった。
そして、しばらくして、彼女は夢を見た。非常に現実的な夢で、若い男が出てきてTimだと名乗った(仮名)。
そして、このGhostのような夢を何度か見て、彼女はこの青年がこれからは、いつも自分と一緒にいるだろうと感じた。Timの心臓と肺が自分の魂と肉体に合流してひとつになったーーいまやTimは私の一部となり、私は彼の一部となったと感じた。
ビール嗜好だけでなく、チキンNuggetも好きになり、それはこの青年の好物であったこともあとで確認された。
こうして、青年の心臓と肺を移植されてからは、今までの病弱な体から、みちがえるほど健康な体に変化した。頭痛もなくなり、アレルギーもなくなった。
そうして、彼女はこの心臓は血液の運搬のポンプの役目をするだけという一般の説に対して、自分のきわめてあざやかな変貌を真剣に受け止め、いったい何がどうなっているのか自分で解明しようと決心した。Heartをもらうということは、彼女にとって肉体の一部をもらいうけただけでなく、Spiritual, Psychological, Emotionalな部分までを貰い受けることであった。
普通、ドナーのIDは明かされないが、手術をした日に亡くなった人、しかもMain州での事故でなくなった青年をしらべれば、誰であったかわかると教えられて、自分で、図書館で調べて、本当に誰の心臓と肺をもらったかがまず判明した。
そのあと、決心をして、その青年の親に会いたいという手紙を送ったが、反応はなかった。しかし、そのうち、母親と直接にではなくて、青年の姉妹に当たる女性から連絡があり、最終的に青年の親とあうことになった。この青年の使える臓器はすべてほかの患者にわけあたえられたが、臓器をもらったほうから提供者の遺族に会いたいという連絡をもらったのは彼女が始めてだとのことであった。親のほうには誰に心臓と肺が与えられたかはわかっていたらしい。(たぶん、TVなどでニュースになったほどだから)。だが、州の法律で、授与されたものには情報を開示することは厳禁ということであった。そのため、彼女の気分が会いたいという結論に達し、亡くなった青年の親を探し始めてからその青年の親族一同との邂逅までに時間がかかった。
彼女の心理的トラブルを手助けしたユング派の分析医と一緒に訪問し、彼女はまるで自分の家に戻ったかのような印象を持った。
その後、娘たちは交際を遠慮し始めたが、母親たちはいつでもWelcome、まるで息子が帰ってきたようという歓待振りであった。
そこで、この経過から、彼女は心臓と肺をもらうことが、単なるポンプの代用をもらったというだけでなしに、青年の記憶、好み、個性までもらいうけ、肉体的にもより健康になったことから、いったい何がどうなっているのか、専門家の意見を問い合わせようと決心した。
そして、この彼女の探索は徹底していた。わたしはその最後の章にあたる“Searching for Answer”を読んで、まったくその徹底ぶりに感心した。
彼女が問い合わせたのは、それぞれの領域を代表する専門家の一人で
Deepak Chopra, M.D. -Cellular Memory説
Candace Pert、Ph.D. ―Biochemist
Bruce Lipton、Ph.D. -Cellular, Developmental Biology
Cleve Backster-Lie Detector development, Plant communications
Julie Metz -Energy Healer “Cell had memory”
Paul Pearsall、Ph.D. -Neuro-psychologist
Rollin McCraty、M.D. -HeartMath Institute “Heart is little brain.”
Gary Schwartz Ph.D.-Psychology, neurology, psychiatry アリゾナ大学
James Van Praagh -Spiritual Medium Los Angeles
Rupert Sheldrake、Ph.D. - Morphic Resonance Theory, British Biologist
Brian Weiss, M.D. – Reincarnation,
Past-life regression
Larry Dossey、M.D. -Physician
(Lyall Watson、Ph.D. -Biologist) これは引用だけ。
ということで、20ページがこの彼女の質問に対する応答・回答で満たされている。
詳細は省略するが、わたし自身は、彼女がTimという青年が出てくる夢を見たという話から、考えられるのは、まず亡くなった青年のSpiritが彼女にのりうつった、同居したということであった。しかし、彼女はちゃんとその可能性も考慮して、Spiritual Mediumとして有名な、本物のMedium ロサンジェルスのJames Van Praaghに手紙を送り、回答をもらっているのである。
Praaghの意見も、TimのSpiritがPossessというよりもInfluenceしている状態で、TimがAfter-lifeのありかたに落ち着けば、いずれその影響はなくなるであろう、したがって、今の特性はTimのSpiritによる影響の直接的なあらわれのせいという解釈。
Dr. Brian Weiss、Reincarnationに関する本で一躍世界的に有名になったドクターであるが、彼女に対しては、まさかReincarnationでは説明は無理なので、Psychometry説をといたようである。Memoryが物質に蓄えられ、この場合は心臓にメモリーが保存されていて、それを引き継ぎ、感じ取ったというような説明。
そして、彼女はイギリスの大胆なMorphic Resonance説で有名な生物学者 Rupert Sheldrakeにまで連絡し、手紙で回答をもらっているのである。
Sheldrakeは記憶は脳の中に蓄えられるのではなく、ちょうどTVにTune-inするように働くのであって、ビデオ Recorderのようではないというような説 Morphic Resonance Field 説の展開者。FormやBehaviorがRepeatされることによって、それがFieldにたくわえられ、Tune-inによって再生されるという斬新な説。Cellular Memory説はとらない。彼女のMemoryに関してはReincarnationやPast-lifeが考えられるが、SheldrakeはHeart, LungがMorphic-fieldに属して、それにタッチして情報を得たという説。
Lyall Watson は、著書の中で、例を挙げながら、Physical item物質はThoughtやFeelingを蓄えることがあるという説を展開している。
ともかく、Clair Sylviaは自分の人間としての変化(肉体的、感情的、体質的、記憶、嗜好、その他)の謎・不明な部分を解明しようとして、さまざまな学者に直接あたったわけであるが、どれも納得のいく説明ではなかったようだ。ただ、わかったのは、心臓を貰い受けるということは、ただのポンプの代用とは違って、その心臓の持ち主の個性・記憶・体質・感性その他を付随したかたちで貰い受けたということであった。
最近のCellular細胞学は細胞とくに心臓の細胞はただ筋肉作業するだけでなく、まるで大脳の細胞のように情緒や感性、記憶その他も保存しているということで、心臓はポンプであるだけでなく、記憶もあり、感情もあり、まさにハートで考えるといえるほど人間的な要素を保持した機構であるということであった。
ともかく、Heart & Lung Transplant“心臓と肺の移植”に興味を持つ人は読んでおく必要がある大事な文献といえそうだ。
この本は1997年に出版されたが、Kristin Hannahの小説“Home Again”(1996年出版)は、この心臓のTransplantをあつかっており、主人公のひとりが心臓をだめにしてHeart Transplant手術を受けるわけであるが、手術後、どうやら今までの自分とはちがった好み、考えをもつようになっているのを発見し、最後にはそれが、自分とはまったく違った性格の兄が事故死に会い、その心臓をたまたまもらいうけたということを知る。ここでも、本人は好みが変わってきていることを知るということになっている。この小説は1996年に発表されているから、Sylviaの本は見ていないはずであるが、たぶん、Sylviaの話はすでに有名になって、Kristin Hannahも知る機会があり、あるいはほかの人の体験からも情報を得て、受諾者はドナーの資質を受け継ぐという説を引き継いで小説に仕上げたのであろう。この小説の展開は、少しSoap Operaticなところもあるが、私は好きで、今年すでに2回読み終わった。
ただ、心臓をもらうということはあきらかに腎臓移植やほかの部分の移植とは違う反応があらわれるということは予測していいようだ。
Nicholas Sparksの小説“The Best of Me”(2012年)も、最後に主人公の息子が彼女が昔本当に愛した男、そして久々に再会して別れたばかりの男の心臓を移植してもらったと知るところで終わっている。もらったひとは、誰がくれたのか、自分が生きているのはこの人が亡くなったからだから、その遺族を探して感謝の手紙を送りたいと思うのは当然で、この場合、母親である人が、息子にこんなに立派な、自分にとっても大事な人の心臓を貰い受けたのだと説明できそうといったような話であった。
2000年の映画“Return to me” はDavid DuchovnyとMinnie Driverの恋愛譚であるが、映画では、Zoologist動物学者である妻がなくなり、彼の新しい愛人が彼の妻の心臓をもらったと知って一時異常反応を示すのが主題となっていた。最後に、Zooを一緒に訪れると、亡き妻が親しんだ動物たちがこの新しい女性に対して旧知に接するかのごとくに慕いよるのであった。
ほかにもきっとこのテーマを扱った小説や映画があることであろう。この心臓移植が、ただ物理的な移植に終わらず、人間の大事な機能(記憶、感情、体質、嗜好、記憶 等)をも移植することになるという話は今後さらなる研究が必要な領域であるといえる。心臓にも記憶や知識があり、情緒反応ができるというようなことは、これからの科学的発展でさらに解明されることであろう。今の時点では、移植されたものは、物理的な心臓だけでなく、それに付随した何かをも引き継ぐという可能性が強いことを知っていたほうがよいであろう。
Claire Sylvia 「A Change of Heart」(A Memoir) 約290ページ、1997年
ISBN: 978-0-446-60469-7
ISBN: 0-446-60469-0
Warner Books, Inc.
Forward: Bernie Siegel, M.D.
村田茂太郎 2013年11月15日、16日
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